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勇者な彼女と英雄への道  作者: ウサギ様@書籍化&コミカライズ
第十二章:強くなりたい≒弱くなりたい
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先を語らぬ予言書④

300話目だぜ! やったぜ!

 人生には休息が必要だ。 大山が現れたことで星矢救出の目どころが付いたこともあり、ゆっくりとした日を過ごすことが出来る。


 月城も自分の部屋で寝てくれるようになったし、隣の部屋に氷を置いて寒くなったことでエルから触れ合ってくれるようになったので、大満足だ。


 エルが身動ぎすれば俺もそれに反応して動き、俺が動けばエルも動く。 そうしたら眠りが浅くなっていたこともあり、どちらともなく目が覚める。

 理由や理屈は分かっていても、同時に目が覚めてしまうというのは嬉しく思う。


 夜も遅く、ほとんど光もないけれど、それだからこそエルだけが見える。 エルの吐息が頰を撫で、それが安堵と喜びの混じった感情を呼び寄せた。

 幼い身体は抱き締めればすっぽりと包むことが出来て、逃げ出せなくしていることに強い安堵を覚える。


「アキさん、痛いです」

「……悪い、もう少しだけ」


 俺の物だ。 逃げられないし、他の誰にも触れられない。

 例え、エルの母であろうとそれは変わらない。 エルは俺だけのもので、地球やら日本やら、訳の分からない場所に帰してたまるか。

 俺が一緒に行けないなら、絶対に渡さない。 渡してなるものか。


「……アキさん」


 エルが返すように俺を抱きしめて、ポンポンと優しく俺の背中を叩く。


「大丈夫ですよ。 僕は、アキさんの隣にいますから」

「……分かっている」


 理性による理解など、得体のしれない不安感に比べて酷く脆いものであることだって分かっている。 だから、こうして触れ合っているのが安堵に繋がるのだろう。

 小さい顔、それに手を伸ばして、頰を撫でる。 白く柔らかい、少し強く触れば裂けてしまいそうだと、彼女が恥ずかしそうに目を下に逸らすのを見ながら、薄らと思った。


 彼女の頰を撫でながら、手をゆっくりと降ろして細い首筋を触る。 「ん」とこそばゆさを耐えるような息を漏らしながら、顔を隠すように俺の胸元に顔を押し付ける。


 滑らせるように細い首を撫でて、締めないように、痛くないようにエルの首を持つ。


「……俺は、おかしいか? こうして、怖がらせることまでして、逃げられないという安心を欲しがるのは」


 エルは怯える様子もなく、微笑みながら俺の頭を撫でる。


「おかしくないですよ。 当然のことです」

「そうか?」

「そうですよ。 僕だって、もっと力があったら、アキさんを縛って逃げれないようにします」


 安心する。 少なくともエルにとっては、こうやって軽く首を絞めるのも、愛情表現として済ませられる。

 苦しそうなエルの顔を少し見て、力を緩めて手をそのまま下に持っていく。 鎖骨を撫でるとそこから広がるように赤くなって、エルは羞恥に赤らめた頰のまま、唇を微かに動かす。


「アキさんの……えっち」


 言い終わった後に微かに唇が震えるのは、今から何をされるのか理解しているからだろうか。

 抵抗らしい抵抗はなく、布越しに絡んだ脚は離される素振りもない。 ゆっくり、エルの顔に自身の顔を近づける。

 潜めた吐息すら掛かるような距離で、熱っぽい息が互いの唇を撫でていく。 瞳を見れば吸い込まれてしまうようで、魔法にかかったように他の何もが頭から抜けていく。


 逸らされる目、彼女の名前を呼べば、返すように名前が呼ばれる。

 もっとエルの顔を寄せると、エルは真っ赤な顔のまま目を閉じた。


 十分に近づいたところでエルの頭の後ろに手をまわし、逃げられないようにする。 びくりと身体が強張っているのを感じて、安心するように髪を梳くみたいに頭を撫でた。

 緊張は解れていないようだけれど、怖がってはいないのを確認してから、彼女と唇を重ねる。


 唇が掠るように触れ合う。 吐息と同じほどの若干の湿り、自分のものかエルのものかも判別のつかない熱量。 柔らかい唇同士を触れ合わせているのに、俺よりもエルの唇の方が多く歪む。 身体の違いはどんなところにでも存在しているらしい。


 欲のままに舌を口から出して、エルの柔らかい唇を這わすように舐める。

 酷く強張っている身体を撫でながら、強く閉じられた口を舌で押し開けるように突き進ませて、舌の先がエルの口内に入り込む。


 生暖かく、エルの口内は心地よい。 手で俺を押して形だけの抵抗をするが、ほとんど力が入っていない。

 舌先を伸ばしてエルの小さな舌に辿り着き、それを犯すように無理矢理に絡ませる。 俺の舌を押し出そうとする舌を舐めて絡ませると、ぴくり、ぴくりと身体を震わせた。


 粘膜同士の接触と一言で言えることのはずなのに、狂わされているのを自覚していてもやめられないほど甘美で、エルが身動ぎする度に甘い痺れが走る。

 舌を絡ませたまま彼女の身体を下に組み敷いて、しつこく絡ませる。 舌と唾液が動いて鳴る水音が恥ずかしいらしく、音が鳴ると恥ずかしそうな表情になっていく。


 名残惜しいけれど、エルの口からゆっくりと顔を上げる。 どちらの唾液なのかも分からないほど混ざり合った唾液を飲み込みながら、エルの身体を抱き締める。


「……お前は誰にも渡さない。 他の奴にも、お前の母にも……女神にも、渡さない」


 彼女が特別な存在であろうとなかろうと、もしも神付きの勇者とかいう訳の分からない役目を与えられていようとも、俺には何の関わりもない。


「……あの、大丈夫、ですか?

「……なんでもない」

「んぅ……?」


 熱に浮かされた表情のまま、彼女は心配そうに俺を見る。

 頭を撫でてくれる手に甘えてしまいながら、彼女の唇にもう一度キスをする。


「……その、しない……ですか?」


 安心半分の声色だ。 今日の昼間、無理矢理脱がせようとしていたからか、続きをされると思っていたのだろう。 事実、正直なところ、そういったことをしたい。


 以前には歯止めになっていた妊娠の可能性も、二人で日本に行けない可能性を思えば、赤子は彼女をこの国に押し留めさせる理由になり得る。

 少なくとも、自分の子を置いて帰ろうとすることは彼女の責任感の強さを思えばあり得ない。


 小さく弱い身体という危険性はあるが治癒魔法が本人も使える上に、使用人のケトもいるので大概のことはリスクにはならない。

 唯一、気がかりがあるのは……父親のことだ。


 八つ当たり紛いに、エルに跡継ぎを産ませろと言ってきており、もしエルが身篭った場合、子供を寄越せと言い出しかねない。

 嫌がると分かっていたら、なおのことそう言うだろう。

 責任感の強さが仇となって、対抗するにせよエルが気に病む可能性は高い。


 どうせレイも戻ってくるだろうから、家を出たらいいだけの話だが、それはレイに役割を押し付けるだけだ。 この家はなんだかんだと拠点としては優秀だ。

 星矢の件が片付いたら、仲間が増える可能性も高く……町から離れ難い環境になってしまうだろう。


 味方にいても何の役にも立たないくせに、敵に回すと厄介な人間だ。 女々しいクソ親父というものは。


 そんなことを考えていたら、不意に父親の言っていたことを思い出す。


「あっ」

「えっ、どうしたんですか?」

「ああいや……大したことじゃないんだが……」


 何気なく「婚約者が来るかもしれない」と言いそうになって、慌てて口を噤む。 よく考えたら、下手に言ってしまえば浮気と思われて殺される危険がある。

エルは「あなたを殺して僕も死にます」と本気で実行しかねない、かよわい女の子だ。


「……あれだ。 俺は一切認めておらず、これから認める気もない。 すぐに追い返すつもりだが、それを踏まえて冷静に聞いてほしい」

「……追い返すって、誰をですか?」

「……婚約者」


 俺の頭を撫でていた手が動き、俺の首筋まで這うように動く。 手には土属性の魔法で作られたと思われる刃物が握られており、その魔法展開の早さに驚きつつも恐怖で頰が引き攣る。


「いや、エルが怒るようなことは一切ない。 俺の父親が俺に対する嫌がらせで、思いつきで勝手に決めたことで俺自身一切認めるつもりはない」

「……どんな子ですか?」

「知らない。 ……恐らくエンブルクの分家の子供だと思う」

「……子供?」

「何故か父親に小児性愛と思われていたらしい。 嫌がらせの一環かもしれないが」


 エルの手元から刃物が消えて、手も俺の背にまわって下から抱き締められる。


「んぅ……。 僕は子供じゃないです」

「……そうか」

「親戚なら、その子って知ってる子ですか?」

「いや、誰がくるかは分からない。 それに分家の連中とはほとんど顔を合わせることもないから、見たことはあったとしても覚えてはいないと思う」

「んぅ、とりあえず、絶対に会わないでくださいね。 対応は僕がするので。 アキさんはなんだかんだと甘いので」

「分かった」


 若干の恐ろしさを感じるが、甘えるように笑う彼女が可愛いので、怖いとかどうでもいいや。 父親の面倒なことが片付くまでは我慢した方がいいと思い、エルの頰に口づけをする。


「明日は一日、こうしてゆっくりするか」

「……月城さんがくるので、朝になったら離れてくださいよ? ……変なことをしてると思われたくないので」


 変なことではないけど、してることはしているだろう。 まぁ、恥ずかしがりなのはいつものことか。

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