表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者な彼女と英雄への道  作者: ウサギ様@書籍化&コミカライズ
第十二章:強くなりたい≒弱くなりたい
294/358

vs猫⑤

 猫が仰向けに倒れているエルの上に乗り、勝ち誇るようににゃーと鳴いた。


「悔しい、悔しいです……」

「にゃー」

「でも、ほっぺに肉球が当たっててちょっと嬉しいです」

「……そうか」


 退けてやろうとしたが、ニマニマと口元を歪めていて楽しそうなのでやめておくことにする。


「ちょっと羨ましい」

「その感覚は分からないな」

「ほら、肉球ってぷにぷにしてて最高じゃん? ピンクで可愛いし」


 月城の言葉に頷く。 確かにピンクで可愛くて柔らかいものは素晴らしいものだ。 倒れているエルの唇を見て強くそう思う。


「とりあえず、また出るのか? それともにゃん太の面倒をみていたいなら、剣を振ってきたいんだが」

「……最近のアキくんって、私とエルたんが二人きりになってても嫌がらないよね」

「そういえば、そうだな」


 決して好意が薄れたわけではないが、エルが浮気をするはずもなく俺から離れることはあり得ない、ましてや嫌われることもないと思えば、数分離れる程度は苦ではなくなってきた。


 まだ離れる様子のないエルを見て剣を取り出す。 他の武器の使用も考えていたが、やはり一番いい手本であったグラウの使っていた剣がいいだろう。 あるいは遠距離でも戦える弓矢も考えられるが、クロの使っていた化け物じみた剛弓でもなければシールドフラグメントを投げた方が威力も飛距離も出るし手軽だ。


 高みへと朽ちゆく刃にしても、威力では同一程度であってもグラウのそれは俺のとは違い反動が少なかった。 グラウが我慢強いのもあったかもしれないが、何かしら技自体の出来が違うのだろう。


「あ、僕も行きますっ」


 エルが猫を抱き抱えながら立ち上がり、俺の後ろに着いてくる。


「私は部屋に戻るね、エルたんのお洋服作るから」

「まともなのを作れよ。 肌はあまり見せないようなものがいい」

「アキくんが興奮して脱がしたくなるようなの作るねっ!」

「それはやめてください」

「どんな服でも一緒だろ、それは」

「えっ」

「……とりあえず、頑張って作るね!」


 仲が悪いのかと思いきや、にゃん太は特に抵抗せずエルに抱かれているので少し安心する。 可愛らしい姿に和まされてから中庭に出て剣を握りしめる。


 まずは一式、二式、三式、四式と基本の型を一通り行い、一式の別角度からの物も繰り返し行う。


「……何してるか分からないですね、にゃん太」

「にゃー」


 今までに身に付けた技を一通りさらってから、ゆっくりと息を吐き出す。 座って見学しているエルを見ると、興味なさそうににゃん太と遊んでいた。


「にゃっにゃっ!」

「ほれほれー、こっちですよー」


 いや、別にかっこいいとか褒められるとは思っていなかったが、わざわざ着いてきたんだしもっと興味あるかと思っても仕方ないのではないだろうか。


「……どうだった?」


 期待に耐えきれずに尋ねると、エルはにゃん太を膝の上に乗せながら首をかしげる。


「時々消えるのでよく分からなかったです」

「……そういえば、見えないか」


 速さを抑えてするのもいいが、それだとあまりすごいと思われなさそうだ。 すごいと思われたいわけではないが少し寂しいものがある。 いや、やっぱりすごいと思われたいし褒められたい。


 魔法のような派手さはないので仕方ないのだろうか。 エルにすごいと言われそうな技……。


「そうだ、エル。ちょっとこちらに来てくれ」

「んぅ、なんですか?」


 近寄ってきたエルの身体を抱き上げる。


「えっ、あっ、その、こんなところでちゅーするのは……。 他の人も見てるかもしれませんし……」

「違う。 しっかり掴まっていろよ」


 地を思い切り蹴って飛び跳ねて、シールドに着地してからまた飛び跳ねる。


「えっ、えええっ!?」


 それを何度か繰り返したあと、最後のシールドに着地して、エルをそこに降ろそうとし、エルが必死に俺に抱き付いて離れようとしない。


「いい景色だろ」

「良い景色ですけどっ! ぜ、絶対に離さないでくださいねっ!」


 街の全域とは言えないが、そこそこの範囲が見渡せ、裏の森の緑もよく見える。


「おおお、地面に降ろしてください。 怖いです、怖い」

「……あれ、高いところは苦手じゃないだろ?」

「苦手じゃないですけど、こういうのは別ですよ! 高いところが好きな人でも怖がりますよっ!」


 喜ばれると思っていたので残念に思いながらシールドの階段を作って地面に降りる。 地面に着くとエルは体をへなへなと倒れ込み、息をゆっくりと吐き出す。


「……悪い。 以前はあれぐらいの高さから自分で飛び降りたりしていたから」

「僕、そんなことしてたんですか……」

「初めて竜と戦ったときに、あれぐらいのところから飛び出して竜に向かっていってたな」

「僕、勇ましすぎませんか?」


 今のエルも誘拐犯に平気で布団を掛けたり優しくしたりと、勇気があることには変わらないだろう。 少し理解し難いぐらいには勇気がある。

 見習えれる気はしないが。


「……まぁ、言っても聞かないだろうけど、あまり無理をしてくれるなよ」

「なんで僕が無理をするみたいに……。 アキさんの方が、めちゃくちゃしそうです」

「俺は臆病者だから、そういう危ないことはしない」

「……怖がりなのは、知ってますけど」


 なんとなく不満そうに俺を見上げる。 そのあとバタバタと動いて、気まずそうに口が動く。


「……あの、腰が抜けてしまって……部屋まで運んでくれませんか?」


 もう少し訓練をするつもりだったが、エルとベタベタ出来るならいいかと思い、にゃん太を連れて、エルを抱き上げる。 いい匂いがする。


「あの、子供みたいに抱っこするんじゃなくて、お姫さま抱っこ……いえ、何でもないです」

「……こちらの方が触れる部分が多いから好きなんだけどな」


 エルの要望通りに横抱きにすると、エルは顔を赤くしながら目を逸らす。


「……あの、その……」

「どうした?」

「……もし、僕の記憶が戻らなかったら、嫌いに、なりますか?」


 不安そうな顔を見て、思わず笑ってしまう。


「そんなわけないだろ」

「……その、僕って、性格悪いし、ちんちくりんで、面倒ですけどーー」

「好きだよ。 それを知っていて言っている」

「……あの、記憶があった時の僕と、今の僕、どっちが好きですか?」


 不安そうに、エルは尋ねる。 その表情を見て、半ば確信めいた推測に行きたく。


「エルさ、お前やっぱり……本当はグラウの能力の移譲が出来ただろ」


 声も出ないような驚き、泣き出しそうな表情をしたエルを見て、少し困りながら話す。


「……別に、怒ってはいないからな」

「そ、その……違うんです。 本当に、本当に……嘘じゃなくて出来ないんです。

……本当です、信じてくれたら、何でもしますから……信じてください」

「……流石に取り乱しすぎだろ」


 狼狽えるを絵に描いたように取り乱し、言い訳じみた言葉を並べていくが、残念なことにあれは頭が悪いのでその言い訳がよく分からず、代わりにエルが必死になって誤魔化そうとしていることだけが伝わる。


 部屋の前に着いたので抱き方を変えて扉を開けて、ベッドにエルを寝かせ置く。


「エル、嫌なら記憶は取り戻さなくていい。 何でもしてくれるなら、笑っていてくれ」

「僕、何でも、しますから……」


 縋るような目。 捨てないでと媚びるような仕草。 何でもするという言葉は、本当にその通りなのだろうか。


 ベッドに寝かせた彼女の上に乗り、息を飲み込みながら彼女の顔を見る。 可愛らしい顔立ちだ。

 小さな顔、大きい目、長い睫毛、赤くなっている頰、綺麗な輪郭に、薄桃色の唇。


 ゆっくりと顔を近づけると、それに合わせるように彼女の目が閉じる。 エルは緊張のせいかほんの少し唇が震えていて、それでも抵抗しようとしていなく、受け入れようとしてくれる彼女が愛おしい。


 口付ける。 ここでも大きさが合わずにいるけれど、それはそれでエルらしくて嫌いじゃない。 唇同士が触れ合った、それだけのことであるのに……狂わせられるような多幸感に襲われる。


 彼女の体温、柔らかくしっとりとした唇の感触。 小動物を思わせる身体を縮こませる姿を見せつけられてしまえば、必死に隠していた獣欲が吹き出るように湧き上がる。


 彼女の肩を掴む。 力強く掴みすぎたのか、エルは辛そうに顔を顰めた。


「あぅ……アキ、さん……」


 その弱々しい姿や小さな苦悶の声を聞いて、自制のタガが外れる。 伸し掛かり、体重を掛けてベッドに押し付ける。 早鐘のように鳴り急かす心臓の音に従い、怖がり泣き出しそうな彼女の唇を再び無理矢理に奪った。


 彼女の唇の形を確かめるように舌で舐り、抵抗するエルの口を無理矢理こじ開けるように舌を入れて、犯すように舌同士を絡ませる。 若干残る口の中の空気のせいか、舌先を通ってエルの口内を嬲る音が聞こえる。 それはエルにとっても同じなのだろう。 ぼろぼろと涙を零しながらも色付いた息に変わっていく。


 エルのことなど考えもしないように、欲を満たすために蹂躙する。 舌で押して抵抗しよくとするが噛もうとはしてこず、弱々しい抵抗は興奮するだけだ。

 舌で舐められるところはすべて舐めていき、興奮したような赤くなっている白い肌を見ながら、疲れてか抵抗もなくなった舌を一方的に絡ませる。 潤滑剤のように使っている唾液は俺から出ているものなのか、エルから出ているのかも分からない。 口腔のなかの唾液が粘りこくなって、ゆっくりと口を離せば互いの唾液が混じった白い糸が名残惜しそうに伸びていた。


「んぅ……アキ、さん」


 顔を真っ赤にして、泣いているエルの顔を見て嗜虐的な興奮を覚えた俺はエルの服に手を掛けてーー。


「月城さん、います」


 エルのあばら骨が見えるところまで捲りあげたところで、振り返る。

 顔を真っ赤に染めている月城と目が合う。


「……お、お盛んなことで」


 ノックぐらいしろよ。 いつものことだけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ