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ヒトガタ③

 歩いて、歩いて、喉が渇いていることに気がつく。

 荷物とか置きっぱなしで来たので、食料も飲み水もない。


 目の前に見えた魔物に八つ当たりでもしようかと思ったが、短剣を投げただけで倒れた。

 金がないので、魔石だけでも剥いでおこうか。

 それを手にしてから、息を吐き出す。


 色々な奴と旅をしてきた。

 いつもエルエル言ってるアキレアと、アキレアと一緒にいた同じ勇者のエルちゃん。 アキレアの師匠の気のいいダメなおっさんのグラウ。

 救った村から連れ出してきたケトとは、案外長いこと旅をした。 アキレアの弟のレイとは馬鹿な話で盛り上がったりしたな。

 昨日まで少しの間だけ共に旅をした大山とロムからは色々教わった。


 何より、リアナとは、この世界でずっと一緒にいた。 俺がどうしようもないぐらい弱いときも、強い敵と戦うときも。



 自分で離れておいて、何を思っているのか。

 また会いたいなどと、早く会いたいなんて、どれだけ都合のいい話であるか。


 風は吹いて、遠くの街道から騒がしい音が聞こえた。

 馬車が人に襲われている? ぱっと見襲っている方は身形からしてロクでもない輩のように見える。


 こういったとき、アキレアならエルちゃんに言われて助けるだろう。 リアナなら、嬉々として義心から助けるだろう。


 興味ないので横を通り過ぎてしまおうか。 腑抜けことを考えながら歩いていると、馬車の中から人の声が聞こえた。


 少女が怯えている声。 少し歩を早めて馬車に近寄る。 身なりの悪い連中が俺に気が付いたのか、警戒したように俺を見る。


 襲われている馬車の護衛らしきものに声をかける。


「これ、どういう状況だ?」

「襲われてるんだよ! 見れば分かるだろ!」


 そうか。 ゆっくりと虚空に手を伸ばしながら、それを掴む。


「そうか、ならば助太刀してと構わないだろう」


 俺に向かって放たれた矢を短剣の側面で受け流し、放たれた魔法を半身返すことで回避する。


 歩を進め、一人の襲撃者に近寄る。 振られた剣を回避しながら、その剣を握っている手首を切り裂く。


 突如現れた乱入者に呆気に取られているのか、戦闘の音は止み、四人の護衛と十五人ほどの襲撃者は揃ってこちらを見ていた。


「お前たちがどんなクズなのかも知らないが、一つ謝っておく。 悪いが、これはただの八つ当たりだ」


 能力【剣壊の才(ブレイカー)】。 人の強さを見抜き、それを破壊するためのソードブレイカーを生み出す能力。

 見れば、何を警戒すべきかは瞬間で把握出来る。 近寄ってきた奴を切り裂き、護衛を援護するために短剣を投擲する。

 矢を回避、槍を受け流し、後ろからきた剣を受け止める。 両手が塞がったので口を開く、すでに人死にが出ているらしく、瘴気の量は充分だ。


「ーーーー。 (ルフト)語りの霊(シルフ)。 暴れ狂え」


 無差別な暴風が馬車や護衛ごと辺りを蹂躙し、俺も吹き飛ばされるが、吹き飛ばされながらも短剣に風の魔力を纏わせて投擲する。


 風により抵抗も出来ない襲撃者を一方的に攻撃する。 同時に護衛も多少はダメージを受けてそうだが、まぁいいだろう。


 瘴気魔法が消え失せたころには、一人の襲撃者も立っておらず地に倒れ伏していた。


 もう去っても問題ないかと判断して、襲撃者を適当に蹴りながら歩く。 少ししてから、俺を呼び止める少女の声が聞こえた。


「そこの方、その……助けていただきありがとうございます。お礼を言いたいので、少しだけ、少しだけよろしいでしょうか」


 そういえば喉が渇いているのだったか。 水を貰えるかもしれないので、一応話ぐらいは聞くことにするか。


「ああ」


 血塗れの馬車に近づき、血の溜まりがない場所に腰を下ろして脚を休める。

 護衛らしき人に何度か頭を下げられるが、話しかけられることはない。


 怯えられてしまったか。 アキレアじゃあるまいし、少し感じが悪すぎたか。

 どうやって笑っていたのかを思い出しながら護衛に向けるが、よく考えると護衛の仲間も死んだばかりだろう。 楽しくお話、とはいくわけもない。


 待っていると、少女が馬車から出てきた。 馬車も吹き飛ばしたせいでか髪が少し乱れているが、すぐに出来る限り身嗜みを整えたのだろう。


 気にしていなかったけれど、何処かのお偉いさんなのか綺麗な服を着ている。


「すみません、申し遅れました。

サイガム国、第十三王女……ラーニソラス=ルルリット=サイガムです」


 ああ、知らない国の王女。 納得したところで、周りの惨状を見ながら言う。


「俺は勇者の……」


 本名を言おうとしたが、こちらの方が通りがいいだろう。 王女が知っているとは思えないが、調べたら名前が出る方がいい。


「ロト。 まぁ、たまたま助けただけだから気にしなくていい。

それより、水を恵んでくれないか? 代わりに、何処に向かっているのかは知らないが、安全な場所に着くまでは守ってやる」


 そう言ったところで、王女の後ろから人が出てくる。


「申し出はとてもありがたいのですが、素性の知れぬ者を護衛としてでも共にいくというのは……」

「つっても、この戦力だとあれなんじゃないのか?」

「それは……」


 老人の言葉を遮るように、王女が頷いた。


「お願いします。 このままでは、国に帰ることすら叶いません」


 勇者に追われているがーーいっそのこと、襲ってきてくれたら、一国を敵に回すことになってくれるーーそんな打算に顔を顰めながら、草原に腰を下ろす。


 軽く草を引き抜きながら王女に言う。


「まぁ、何にせよ仏を放置しとくのは気が引ける。

何がやってきても追っ払ってやるから、穴を掘るだけの時間をくれ」


 何か言いたそうな顔をした老人を、王女が手で制する。

 言いたいことはだいたい分かる。 虚空から太く長い剣を取り出し、地面に突き刺す。

 護衛の一人が俺に近寄って尋ねた。


「魔法は使われないのですか?」

「ああ、こういうのは自分で掘るようにしている。 変か?」

「いえ……分かります」


 自分と似た価値観なのだろうか。

 護衛の男は血と土に塗れて、フラフラとしている身体を歩かせて剣の鞘を地面に突き刺した。


 優しいヤツならば、止めるのだろうか。

 仲間の墓ぐらい、掘らせてやりたいと思う俺は、きっと残酷だ。

 残った男達で穴を掘っているのを横目に見ながら、遠くにもう一つの穴を掘る。


 掘っている間、王女は何も言わない。 こちらを伺っているのだろうか。

 穴の中に襲撃者を放り込んで行きながら、違和を覚える。 盗賊だとすると、栄養状態がよすぎないか。


 この国は魔法がなければまともに作物が育たない。 反対にこの国の国民は多くが高い魔法的な素養を身につけている。


 つまり、魔法を扱えるならばこの国では食いっぱぐれないはずなのだが……。 あの盗賊たち、みんな魔法が使えてた。 あれだけの人数がいたら、盗賊なんてやる必要はないだろう。

 外には魔物も出るわけだし。


「つまり、盗賊ではなかったのか」


 俺が気がつくようなことを、襲われていた王女たちが気がつかないはずもない。

 分かっていて言ってない……か。


「一気にきな臭くなってきたな」


 まぁ、強い仲間を見つけたり、襲ってくる勇者を片付けるには第十何とかの王女とでも関わるのは運がいい。

 むしろ、問題ごとを抱えているのならば、平時よりも中に入り込みやすい。


 墓を埋めながら、頷く。 黙っていて、頭は悪いが腕は立つぐらいに思われているのがベストか。

 相手が利用してくるつもりなら、懐に潜り込みやすくなる。

 何より、勇者に襲われるというきな臭さを持っているのは俺も同じだ。

ロト君の魔法とか能力とかまとめ

剣壊の才(ブレイカー)

短剣(レベルアップにより範囲広くなった)を出したり、相手の長所を見る能力。


透明化の能力の勇者を殺したので、その能力がブレイカーに加わっている。

グラウをパーティメンバーのアキレアが殺したので、その一部がブレイカーに加わっている。


魔法

ルフト

空気を操る魔法。 わりと何でも出来る。


ルフト・シルト

空気を盾状に固める魔法。 アキレアのシールドよりも硬い。


瘴気魔法

(ルフト)語りの霊(シルフ)

瘴気に語りかけて風の性質を付与する瘴気魔法。



スキル表っぽく表示してみる

スキル

短剣術level7 投擲術level6 近接戦闘level7

魔法レベル4 瘴気魔法level5 対人戦闘level9


ユニークスキル

剣壊の才(ブレイカー)level59++

※+は能力持ちを倒したことによって強化された値

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