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クリスマス番外編③

「それに……アキさんがパンツを欲しがってるんですけど、どうしたらいいでしょうか?」


 樹たんが戸惑ったようにそう言うが、それを相談された私の方が戸惑ってしまう。


「いや……そういう性的なことは、当人同士の問題と言うか。 二人がどこまでいってるのかも知らないしね?」

「もうちゅーもしましたよ。ゲームの中だと結婚してますけどね」


 後半の説明は必要ないだろう。 そう思うけれど、まぁラブラブ度合いを出来る限り自慢したいのだろう。 いつも惚気てくるし。


「当人で、と言っても……一般的な男女交際が分からないので……」

「私も分からないよ。 樹たんって私のことを勘違いしてるよね。 別に恋愛経験豊富とかじゃないからね」


 やはり勘違いしていたのか、途端に可愛らしい顔を顰めさせて考え込む。

 子供が悩んでいる姿には凄く庇護欲がそそられるというか、グッとくるものがあるが、同級生である。


 こんな小さな女の子のパンツを欲しがるのか。 しかも本人に伝えて。

 アキくん、ど変態である。 友達の三輪くんもロリコン入ってるけれど、流石に本人にパンツが欲しいと言ったことはないはずだ。


「僕はどうしたら……」

「止めといたら? クリスマスって一応真面目な日でもあるんだし、そんな聖夜を性夜にするのはいいことってわけでもないし」


 樹たんは迷いが晴れたように頷く。 まぁ、あげるのは嫌なのは当然だ。


「じゃあ、何をあげたらいいですかね?」

「んー? まぁ考えるからお菓子でも食べて」


 ゆっくりしていて、と言うが、樹たんは紅茶は飲んでもお菓子を食べる気配はない。


「お菓子食べないの? この抹茶コーンクッキー好きだったよね?」


 よく遊びに来る樹たんのために買ってみたのだから、食べてくれないと困る。 私もお母さんも独特の風味が苦手だ。


「いえ……実は、そんなに……」

「え? よく買ってるよね?」

「それは、アキさんが好きなので、買って行って一緒に食べたりはしますけど」


 ああ、好き好んで食べるわけではないのか。 やっぱり、このコーンと抹茶のミスマッチ感は人を選ぶのだろう。

 仕方なく手を伸ばしてクッキーを齧る。 不味いわけではないけれど、好きにはなれない味だ。


「私もこれ苦手……」

「そうですか、なら捨てるのも勿体無いですから」


 樹たんも手を伸ばしてクッキーを齧る。 なんでこの子はクッキーを食べるのも綺麗に食べるのだろうか。


「……実は、あと5袋買ってるんだよね」

「……月城さんのお母さんは?」

「一口齧ってフライアウェイ」

「ふらいあうぇー……」


 まぁ、アキくんが好きならあとでアキくんに渡せばいいだろう。 この一袋はなんとか二人で処理をするとして。

 私もクリスマスプレゼントをそろそろ用意した方がいいか。 手編みのマフラーとかでいいだろうか。 マフラーとかなら、編み物は得意なので直ぐに作れるし、材料もある。

 アキくんに渡したら樹たんの嫉妬が……。 もう抹茶コーンクッキーでいいか。 たくさん余ってるし。


「そうだ、マフラー一緒に作る? アキくんなら手作りとか喜びそうだし」

「マフラー、ですか? でも、僕やったことなくて……」

「教えれるよ? 簡単だしね」


 手編みだと、やっているうちに汗とかが付いてアキくんも満足だろう。

 嫌がる樹たんに毛糸と編み針を押し付けて、自分も同じ道具を持つ。


「でも……昨日……半袖で走り込みしてましたよ?」

「……いや、走るためにであって、歩いたりするときはちゃんと着るでしょ?」

「そのままお散歩しました」

「……寒いところ出身?」

「いえ、よく分からないですけど、割と日本の気候に近いみたいです。 山は少ないそうですが」


 まぁ、他に案もないわけだし、と押し付ける。 決して自分の趣味を友達に押し付けて勧誘しているわけではなく善意である。


 特に自信のある手編みのマフラーを樹たんに見せて、少し胸を張りながら口を開く。


「これ、私が作ったんだよ。 すごいでしょ」

「……確かに、すごいですね」


 樹たんは自分の胸をペタペタ触りながら私を見る。 自慢しているのはそこではない。

 ぺったんこな樹たんに何かフォローをしようと思ったが、本筋からズレそうなのでスルーして簡単なやり方を教えることにする。


「お店で買ったんじゃなかったんですね。

学校でも付けてましたけど、手作りだったとは」

「えへへ、まぁこれぐらいなら誰でも出来るけどね」


 幾つか見本代わりに今までに作った編物を見せてから、樹たんが選んだ模様を作ることにする。


 ああ、落ち着く。

 こう、のんびりと過ごすのはなんとも落ち着くものだ。 三輪くんに連れられて「うぇーい」と楽しむのも嫌いではないけれど、こういう風に過ごすのも楽しい。


「あー、私もクリスマスパーティでのプレゼントとか考えないとな。 みんなにあげる必要はなくても、りーちゃんにはあげたいよね」


 樹たんも慣れてきて話す余裕が出来た頃に話しかける。


 編んでいる手を止めることなく、じーっと毛糸の塊を見ながら樹たんは返答する。


「そうですね。ハロウィンの時から楽しみにしてましたし」

「ここ一カ月の挨拶がメリークリスマスだしね」

「ですねー」


 私もマフラーでも編もうかと思ったけれど、身体が弱いので外に出るのは少ないはずだ。

 それにマフラーが使いたいからと言って外に無理に出たがるかもしれないのでマフラーはパスかな。 とりあえず、樹たんと一緒に作れる物で、衣類ではない物。 熊の編みぐるみでも作ればいいか。


「樹たんは何をあげるの?」

「正直な話、アキさんもですけどお金持ちにあげる物って凄く迷いますよね」


 決めていないらしい。


「まぁ、そうだね。 ……あげれる物って直ぐに買えそうだし」

「何を喜ぶんですかね」

「私は熊の編みぐるみをあげる」

「なるほど……」


 樹たんは少し考える様子を見せながら息を吐き出して編む手を止める。


「この前、皆でしてるネットゲームでりーちゃんのお部屋にお邪魔したんですよ」

「うん」

「もの凄く広かった上に、クリスマス限定のガチャの家具がコンプリートされてました」

「重課金系幼女か……」

「ちなみに、全職業のレベルカンストしてますし、最強の装備も揃えていて、同サーバー内では有名な人ですよ」

「廃人か……」

「二つ名は金持ちニートです」


 りーちゃん……。なんて不名誉なあだ名を……。

 パパッと編みぐるみを編みながら、樹たんの話を聞く。


「多分、皆りーちゃんには用意すると思うので、被らないようにしないと」

「んー、皆に聞いてみる?」


 樹たんが頷いたので、スマホをポッケから取り出して、グループトークで聞いてみる事にした。

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