愛が重い②
エルが欲しい。
玉のような白い身体に、濡れ烏の黒髪。 美しく、神々しさすら感じられるが、子供らしい小さな肢体のために気後れすることはない。
存外気が弱い俺は、そう思っても戸惑いが共にあった。
可愛らしく幼い顔立ちに見惚れていると、こちらの感情が分かったかのように頰を緩めて、俺に笑いかけるように手を伸ばす。
その手は小さく、触れてしまえば簡単に壊れてしまいそうなほどに柔らかい。
怖い。 と、どうしても感じてしまう。
好いていればいるほどに彼女を抱き締めたいけれど、それで壊してしまうのではないかと思い恐れてしまう。 けれど、強く抱き締めたいという征服欲は俄然に強くなる。
俺を受け入れてくれるように手を伸ばして俺の身体を掴むエルを見て、喜びに身体が震えるようですらある。
このまま永遠と、死ぬまで彼女を抱き締め続けていたい。
嫌がらないだろう。抱き締めても、多少乱暴でも、息苦しくなってしまうほど抱き締めていたとしても、怖がるどころか喜んでくれるという確信すらあった。
喉の奥が鳴る。 ゆっくり、ゆっくりと優しく触らなければならないと、必死に自分を諌めるけれど、頭とは別に心臓が早鐘のように身体を響かせて早く早くと急かす。
エルはそんな俺を見て、安堵したように落ち着いて言う。
「よかった、です。
アキさんは……僕のこと大好きなんですよね。
その……痛いぐらい抱き締めてもいいですから、好きなように使っていただいていいので、その……側に、アキさんの側に、置いてください」
痛いぐらい、そういうけれど痛いのは苦手だろう。 愛い言葉だけど、必死に我慢しているのだから、タガを外しかねない言葉はやめてほしかった。
不意に頭に過ぎる。 我慢することに、何の意味があるのか。 エルは俺に抱かれたがっている。
その上に、愛し合っている夫婦だ。
未熟な身体に手を当てると、羞恥からかその場所が赤くなっていく。
白いエルに、俺の血の色が染み込んだようで、自分に合わせるように染めたようで支配欲が刺激される。
躊躇う理由が分からない。 虚ろで定まらない思考の中で俺は動いた。
ベッドにまで運ぶなんて一秒二秒で済むことすら億劫で、その場所のまま目の前の幼い身体を組み伏せる。
幼い少女は目を閉じて、身動きを止めて俺の行動を待つ。
何をされても耐えようとする健気な姿は、前とも変わりはない。
「いや、髪が……伸びたな」
少しではあるけれど、ほんの少し印象が違う。
女の子らしさが増えた、などというと今までそうではなかったのかと尋ねられてしまいそうだが、元々女の子らしいが、少し女性を感じる。
それでも、 やはりというべきなのか彼女はエルであることに変わりなく、恥ずかしそうに、嬉しそうに浮かべる笑みはいつものままの魅力的な彼女だ。
もう出会ってから長い時間が経っている。 変わるところも当然あり、それでも愛したことはどうしようもなく変わりようもない。
甘えるような気持ちでエルの手を握ると、優しく握り返されて慰めるように握った手をよしよしと撫でられて、優しく微笑まれる。
なんとなく、一応少しだけ年上であることを思い出した。
無理矢理抱き締めようかと思ったが、細くて華奢な彼女の身体を抱き締めるのはどうしても怖い。
「ごめん。 エル」
このままでは我慢出来ずにチカラいっぱいに抱き締めてしまうと、目を逸らして離れる。
泣き出しそうなエルに頭を下げるが、俺もエルも情緒が安定しておらず、不安になったらしいエルの顔が歪んでいく。
「あ、ああ……アキさ……」
絶望の表情とは正にこのことだろう。 エルにこんな顔をさせた罪悪感に胃を締め付けられるような感覚に倒れそうになりながら、大きな声ではっきりとエルに言う。
「好きだ。 俺はエルのことがどうしようもないぐらい。
絶対に離れる気もない。 ずっとエルと一緒にいる」
足を折りたたんで座り込み、勢いよく頭を下げて床に擦り付ける。
「ごめん。 エル。
不安な気持ちにさせて……媚びるような真似をさせて」
エルは布団で身体を隠しながら、顔を涙で潤ませる。
「エルのことが嫌になったとか、そういうのじゃないんだ。 好きだ、好きで好きで堪らないぐらい好きだ」
君のためだったら命だって惜しくない。 その言葉は飲み込んで、エルの顔を伺う。
俺に好まれるために取り繕っていた表情が崩れて、見た目相応の子供ように、顔をぐしゃぐしゃに歪ませて、溢れさせた涙で汚す。
そんなエルの顔は、美しい顔でもなく、可愛らしい顔でもない。 けれどもただひたすらに愛おしくて、布団を押し退けて抱き締めた。
「……怖かった、です」
エルの言葉が俺の身体に響く。
「突然アキさんが離れたのが、どうしようもなく、怖かったです」
「ごめん」
「アキさんに捨てられたら、僕はもう生きていけないんです。
虚弱なんです。 心臓よりアキさんの方が必要なんです」
確かにエルは心臓がなくても治癒魔法や水魔法で血液を動かすことで生きられるが、そういうことではないだろう。
「だから僕は、僕は……ごめんなさい、我慢……出来ないです」
エルは変わらず衣服を纏う前に、せき止めていたタガが外れたように大きな声で泣き始めた。
「ウワァアアアアアアァ!! アキさん! アキさん!! アアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
俺はエルの全身を抱き締めながら。 エルの涙と悲しみを受け止める。
「好きです。 好きです。 好きです! アキさんのことが大好きで、一緒じゃないと、耐えられないんです! 僕は、弱いから、駄目だから、一緒にいてください」
言い終わった後に、咳き込んだエルのすべすべとした背中を撫でて落ち着かせる。 エルに分かるように大きく頷いて、頼みに返答をする。
「分かった。 分かった。 ごめん。 離して」
エルは俺の身体を抱き締めながら、瞳を潤ませて言う。
「ちゅー、してください」
今の体制で抱き締めたままだと、キスをすることは出来ない。 少し離れたらエルの胸が見えてまた押し倒したくらなるが、それよりも、エルの願いの方が良かった。 ゆっくりとエルに顔を近づけてキスをする。
唇同士が触れ合うと、少し涙の塩気がするように感じる。
離そうとすると、エルの口から舌が出てきて、俺の唇をツンと触ってからすぐに戻る。 可愛らしいおねだりに応えるために、エルの肩の後ろに手を回して、逃がさないようにしてから、舌を出してエルの口の中にねじ込むように浸入させた。
「んぅ……」
エルの声が小さく繋がった口から漏れ出る。小さく柔らかい舌を虐めるように舌で弄ると、俺の背にまわされた手がその度に締められる。 感じてくれているのだろうか。
息苦しくなってからも続けようとするが、体力のないエルのことを考えて離す。
「アキさん、アキさん」
エルはいつものように恥ずかしがる素振りもなく、先程まで身体を隠していた布団を足で横にずらしながら俺の胸に擦り寄る。 一緒に衣服が巻き込まれて離れていく。
猫が匂いを付けるように俺の胸に頬を押し付けてスリスリとする。 少し下を見れば、エルの可愛らしい表情がよく見えた。
服越しにではあるがくねりと曲げられた細い背中や、薄く小さいが形の良い尻が見えて、酷く興奮をする。
「えへへ、アキさん。 アキさん」
エルは先ほどの優しく包み込んでくれるような姿とは違い、幼子が甘えるようにして嬉しそうにエルは俺に抱きつき続ける。




