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勇者な彼女と英雄への道  作者: ウサギ様@書籍化&コミカライズ
第九章:生きていくのに必要なもの
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あまりに我儘なことを一つ②

「アキー、まだつかねえの?」


「あと少しだったはずだ」


「というかさ、なんで森の中にあるんだ?

アキん家も入り口とはいえ、森の中にあったしよ。 もうちょい良い立地の場所あっただろ」


 まぁ、そうかもしれないが、それはエンブルク家には仕方がないことだった。


「俺の家系は……」


「家の問題なのか?」


「人と関わるのが下手なんだ」


 ロトが納得したように頷く。 そう簡単に納得されるのも微妙な気分だ。


「なんだかんだ言っても、あのレイが一番人と話せるもんな。 日本だったら二人組になってくださいで詰むところだ。

よく血が繋げたな」


 俺も少し不思議に思うが、俺とエルのようなくっつきあいの恋愛結婚はかなり珍しい事例だ。 だいたいは親類同士の縁談で決まるのが通例らしいので、人が苦手同士、何も言うことがなく終わるのだろう。


 一応、父親と母親も叔母と甥の関係らしいしな。 年齢は同年齢らしいが。


「まぁ、基本親類でだから、問題ないんだろ」


「問題しか感じられないんだが。 ……いや、問題を起こすためにしているんだろうけどさ」


 ロトは意味を分からない言葉を吐き出したあと、俺の顔を見詰める。 男に見つめられて喜ぶ趣味はなく、顔を顰める。


「……なあ、アキ、リアナ。 この世界って、アキみたいな髪と眼をした奴って、両親の髪色とかに関係なく産まれたりするのか?」


「珍しいが、あることはあるな。 尤も、それが本当に両親に関係ないかは分からないが」


「お、おう。 さらっと下衆いこと言うな」


 そんな下衆だろうか。 そう言ったことは、時々あるらしい。 世間知らずの俺ではどれほどあることなのかは分からないが。


「やっぱり、遺伝子病的なのかね。 メンデルさんじゃねえからよく分からないけど」


「メンデルさんって誰だ」


「グリーンピースの人だよ。 グリーンピース育ててたら世界中からめっちゃ褒められた人」


 意味が分からない。

 異世界ではグリーンピースを育てたら褒められるのか? エルと異世界に行くことになったら、グリーンピースを育てようか。


「魔物化が劣勢遺伝ってことですか?」


「ああ、中学校で習ったグリーンピースさんの知識ぐらいしかないが、そういうように見える。 勿論、仮説を実証するとか無理だけどな」


「そうですね……。

そうかもしれないですけど」


「それは前提なんだが……」


 俺の眼を見て、ロトは口を開く。


「誰が、そうなるように仕向けたんだ?

自然的に魔物化した人間が発生するのは理解出来る。 だが、グリーンピースとかそんな知識もなくて……こいつを作ろうとした奴がいるってことだろ?」


 何かの木の根に引っ掛かり、ロトは転ける。 何処か固い雰囲気だったものはなくなり、リアナがロトに手を貸し出す。


「だ、大丈夫ですか?」


「おう、ギリセーフ。 受け身取ったから」


 特に心配も必要はないだろ。 エルの魔法があるのだし。

 そういえば、ロトとリアナの二人旅だと、怪我を治すことが出来ないだろうが、どうするのだろうか。まぁ、よほどでもない限りは大丈夫か。 街に着けば怪我ぐらい治せる。


「それでな。エルちゃんはもう言いたいことが分かっているだろうが……」


「続けて大丈夫ですよ。 アキさんはそんなに気にしないでしょうから」


「昔にやってきた勇者が作ったんじゃないだろうか。 エンブルク家を……いや、ルト=エンブルクという人物を。

言っては悪いが、俺にはアキが良く出来た武器のように見える。

強く、頭が悪く、ひたむきで、操りやすい……エルちゃんじゃなければ、大変なことになっていたかもな」


 エル以外にこんな気持ちを抱くとは思えないのだから、その仮定は無意味だろう。

 エルは俺の手を強く握って、ロトに言う。


「本当に、言うことが悪いです」


 俺のために怒っているのだろうが、怒ることに慣れていないからか、あまり怖くなく、むしろ言い返すことへの怯えの方が強く出ている。


「いや、いい。 まぁ確かに、俺は武器のようなものだった」


「……そうだな。 今はなんか、普通に人間っぽいな」


 ロトはそう言って笑う。


「エルちゃん。 実は俺、エルちゃんとアキが出会うよりも前に、アキと出会ってるんだよ」


 エルが俺の手を強く握る。 本気で握っているのか、少し痛い。

 エルは悔しそうにロトを睨み、手を繋いでいる反対の手でエル唯一の荷物である鎖を握り締めた。


「……別に、それがどうしたんです」


「いや、暇だからからかってみただけ」


 とりあえずロトを蹴飛ばして、進む。


「……アキさんは、ロトさんは蹴るのに、僕のことは叩いてくれないんですね」


「まだ諦めていなかったのか」


 エルは被虐趣味があるらしく、度々こう言ったことをねだってくるが……エルを叩くのは無理だ。 絶対に無理。


「だって、仲良しっぽいですし……。 なんかいいですし」


「いや、そうか?」


 エルに叩かれる想像をしてみる。 ちょっといいな。

 そんな妄想をして表情を歪めていると、リアナが口を開いた。


「人の気配がするな」


 リアナの目線は左右に草が分かれた獣道を見ている。 大きさからしても、人の通り道だろう。

 ここまでくると腐臭もなく、俺の鼻が人の生活の匂いを嗅ぎ取る。


「そろそろか」


 エルの身体が寄せられて、知らない人から俺の後ろに隠れる準備をしている。

 リアナは少し警戒しながら、ロトはへらへらと笑いながら歩く。 少し開けた空間が続き、森らしい匂いが少し薄れる。


 俺の住んでいる本家のところよりも、大きな屋敷、その近くに幾つか小さな屋敷が秩序なく並んでいる。 幼少期に見た姿と少し変わって見えるのは、背丈が伸びて視線が変わったからだけではないだろう。


「なんつーか、並びとかが適当なのがアキっぽいな」


「そうか? とりあえず、行くか」


 とりあえず一番デカイ屋敷に向かう。 おそらくこの屋敷に、俺の親戚……の中でも一番歳を食っている先祖がいるだろう。


「アキさん、その、僕……礼儀とか知らないんですけど、大丈夫でしょうか?」


「相手も知らないだろうから問題ない」


「そういう問題でしょうか……?」


 そういう問題だろう。 おそらくかなり頭が悪いので、敬語を言いながらなら無礼を働いても、丁寧に接されていると勘違いするだろう。 俺ならするだろう。


「大丈夫だ。 レイもそうだったが、笑顔でなら悪口言っても気付かれない」


「あの、ロトさんはエンブルク家に当たりが強くないですか」


「ぶっちゃけ、嫁入りしてきたエルちゃんがぶっちぎりで頭がいいと思うぞ」


 それは否定出来ない。 幾ら俺ぐらい頭が悪いとは言えど、近くに使用人が控えているだろうから、悪口を言いまくるのはよくないだろうが。


 扉の前に行くが誰も人がおらず、とりあえず扉を叩いて人を呼ぶ。

 使用人らしき女が出てきて、俺の顔をジロジロと見る。


「ルト様……?」


「ああ……頼みがあって、来させてもらった」


「あ、分かりました。 中に入って少し待っていただけますか?」


 屋敷の中に入れてもらい、バタバタと走っていく使用人を見る。


「……予想以上に緩いな。 メイドまで」


「まぁ、本家であるアキレアの家の使用人も緩かったからな」


「……少し、安心しました」


 内装は流石に綺麗で、しっかりと掃除がされている。 こう綺麗な上に肩を張らずに楽に過ごせるのは居心地もいい。


「それでアキ、どんな人なんだ?」


「ほとんど覚えていないな。 もう十年以上も昔だ。 だが、確かすごい爺さんだったような……」


「十年以上前に爺さんって、今生きているのか?」


 まぁ、代替わりしていたとしても大して問題ではないだろう。

 戻ってきた使用人に連れられて、応接間のような場所の前に立つ。

もしかしたらタイトル変えるかもです(思いついてはいない)

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