第一話 その丘は
東の大陸には不思議な丘があった。
そこは昔、ただの広い草原であった。しかし、長い年月の中でいつの間にか、沢山の黄色い向日葵でいっぱいになっていたという。誰が向日葵を植えたのかもわからない。いつそうなったのかもわからない。
気がつけばそう、青い空に浮かぶ太陽のように、緑色に覆われていた大地にソレイユが咲いていた。
この世界でたった一人、その原因を知るはずの男は、その向日葵を知らない。
太陽に向けて必死に咲く花達を、彼は一切見ずにここを去った。だがそれも当然だった。彼にとってここは、一刻でも早く立ち去り記憶から消してしまいたい場所でもあったからだ。
自分が初めて大切だと思った人が、消えてしまった場所。
ソレイユの花は、今も綺麗に咲き誇る。太陽と他愛もない話をし、時々雨に癒してもらい、月と楽しく笑いあう。まるでずっと誰かを待つ待ち人のように。
あの時から今もずっと―――。
この物語は、この丘がソレイユで咲き誇る前、一人の男が死の宿命を背負った女性に出会う物語。
彼らが愛したものは、自分が自分であるための場所ではなく、自分達を形作る思い出でもなく。
ただお互いを愛していた。
これは更新する予定が一切ありません(何)
別作品『星の影』の番外編として【いつか】更新する予定です。
こ、今回はさわりだけってことで(汗)