2.ぐーたら店主は天才だった
だいぶ遅くなってしまいました
「ここは…?」
周りを見渡すと誰もいなかった。…あれ?クラスメイト達は何処に行ったんだ?
と、思ったら目の前に画面が出てきた。ステータスではなく文が書いてある。
=====
転移される場所は人によって違います
違う世界という訳ではないので運が良ければ会えるでしょう
=====
「…」
え?ということはこの低いステータスで知らない世界で一人で頑張らないといけないの?しかも冒険者になるにはステータスが平均20必要ってさっき調べたら書いてあったんだけどどうすんのこれ。
=====
ガ☆ン☆バ☆レ♪
=====
「…」
文句を言っても疲れるだけなので今はやるべき事を考えよう。
とりあえず50mくらい先に見えている街に行ってみよう。もしかしたら冒険者以外にも仕事があるかもしれん。
……………
街の門は以外にスルーできた。てっきり門番に止められて質問とか身分証明とかあるかと思っていたのに。
街は異世界の定番、中世の感じだった。そういえば言語はどうすればいいんだ?と思ったらまた画面が出てきた。便利だな、これ。
=====
日本語で通じます
=====
へえ…楽でいいな。街を探索していると[冒険者ギルド]と書いてある建物があった。冒険者になれないのはとても残念だがここで何か仕事がないか聞いてみよう。と思い入る。
想像した通りの感じだ。酒を飲むテーブルと受付がある。受付には綺麗な受付嬢が…いた!…けどなんか怖そうな人なので隣の優しそうな方の人に聞く。こっちの人も美人なのでこの世界には美女が多いのかもしれない。
「あの…すいません」
「はい。何でしょうか?」
「仕事を探しているんですが…」
「冒険者の登録ということでしょうか?でしたら…」
「あ、いえそっちはステータスが足りないので…ステータスが低くてもできる仕事をどこかで募集してないかと思いまして」
「それでしたらこちらのリストからどうぞ」
といって本みたいなのを渡された。
開いてみると中には仕事の手伝いを募集している店の紹介が書いてあった。
(住むところも食べるお金も無いから宿屋とかでの住み込みの仕事はないだろうか…)
と考えながら探していると、ちょうど良さそうなのがあった
宿屋 ネスト
仕事 力仕事や宿の掃除などの手伝い全般
給料 宿泊代無料(ご飯つき)
店主 レンダ レトフ
(今の俺にピッタリの仕事じゃないか)
「これにします」
「はい。宿はギルドを出て右に曲がり、突き当たりを左に行くと右側に見えてきます。ではお仕事頑張って下さい」
そう言われたので軽く頭を下げてからその宿に行ってみることにした。
……………
「ここか…?」
看板に[宿屋ネスト]と書いてある。
とりあえず入ってみる。どうやら1階は食堂兼受付のようで、椅子とテーブルが並んでいる。受付の方を見ても誰もいない。出かけているのだろうかと思ったら小さく「…いらっしゃいませ」と聞こえてきた。受付の内側を覗き込むと20代前半くらいの女の人が椅子を並べてだらーっとした感じで寝ている。
「あの…ギルドの募集を見て来たんですけど…」
「んー?」
あ、起きた。
美人…なのだが全体のぼーっとした感じでちょっと残念な感じになっている。
「…そんなの募集してたっけ…」
大丈夫かこの人
「まーいいや。じゃあ裏口に食材が入ってる箱があるからそれを調理場に運んどいてーそれが終わったら掃除ねーじゃあおやすみ…」
そういって本当に寝てしまった。いや、仕事しろよ。
しょうがない裏口に行ってみよう。
……………
「なんだこれ…」
山があった。箱の。
ざっと見ただけでも20はある。あの人こんだけ仕入れてどうやって運ぶつもりだったんだ。
しかも重い。どうしようかと考えて自分のスキルのことを思い出した。画面を出して能力値のATKの説明を見る。
=====
ATK
攻撃力。筋力値でもある。
=====
よし。これはいけそうだ。
俺はスキル{倍加 Lv1}を発動し、ATKを二倍にした。
「お、これならいけそうだ」
筋力値が倍になったので軽いとまではいかないが普通に持てるようになった。
よし!やるぞ。
……………
「疲れたー…」
30分後、全て運び終えた。
「いやーさっきは焦った…」
運んでる途中に{倍加}が切れた時は荷物を落としそうになって大変だった。
ちなみに自分が最初から持っていた固有スキルはMPを消費しないらしい。便利だ。
「次は掃除か…」
なんとなく店主の様子から掃除もしていなさそうだな…
……………
予想通り全く掃除されていなかった。あの人なんで宿屋の店主なんかやってるんだ。
ちなみに掃除はSPDを二倍にしてやった。ダッシュしたら予想より速くて壁にぶつかったそれでも店主は起きなかった。…。
「あのー…レトフさん?掃除終わりましたけど…」
起きない。一瞬ぶんなぐってやろうかとか考えたけど一応女性なのでやめた。
もう暗くなってきたな…今何時だろうか。
「ふわぁぁぁ…」
あ、起きた。
「レトフさん掃除終わりましたよ」
「…あんた誰?掃除って何?」
おいコラ。
「さっきも言いましたがギルドの募集を見て来た者です。レトフさんに食材運びと掃除を指示されたのでやったのですが…」
「…ああそんなこともあったような…」
「あと宿の看板に永久閉店って書いてあったんですがあれは…」
そういうと、レトフさんは目を逸らした。
あ、この宿屋駄目だ。潰れる。
「お金とかどこから…」
「冒険者やってたときのお金があるから…」
「え?冒険者だったんですか?」
「うん」
「何故宿屋を…?」
「冒険者やるよりお店とかやった方が楽そうだったから…」
「お店建てるくらい稼げるなら冒険者の方が楽だったのでは…」
「そうだよね~お客さんとか面倒くさいしまた冒険者やろうかな~」
適当だなーこの人。
「ところでレトフさんはランクは何だったんですか?」
「Aランク」
「え」
冒険者にはランクというものがある。Iから始まってH、G、F、E、D、C、B、A、Sと依頼の達成数、評価などで上がっていく。
I~Cが一般冒険者、Bは熟練の冒険者、Aは天才、Sは人外と言われている。ということはつまり。
このぐーたら店主は天才らしい
「あのレトフさん。お願いがあるんですが」
次回飛びます