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『シキキキキ』  作者: Otama
【第一環・ ナカヤノブ 】
4/7

第一話②『清明』――「昼下/屋上」

屋上に上がった信と修也。二人は『真相』に迫る為、独自調査を開始する――

 始業式であったため昼時までに授業が終わり下校する生徒が多い中、『屋上』にいる二人。

屋上は白いタイルが張り巡らされている。所々古いタイルがあり黄ばんでいる物や黒く腐食した部分があるがただし血の付いたタイルは一枚もなかった。

周りには危険を回避するための緑色のフェンスで多い囲まれている。高さはかなりのもので内からは出ることが出来ないであろう。どう努力しても乗り越えられないフェンス。サイドの接続部は固く、専門業者ではないと外せない。まさに万全の設備。一体、彼女はどうやってここを上ったのか。もしくは犯人はどうやってこの難所を越えたのか。ただ後者なら教室から落とすいう筋もある。

ただ今回の飛び降り自殺、また事件には一切の効力を持たなかった。

その代り大きく広がる景色は学生たちを学校という内の規制された世界ではなく、外の自由な世界へ誘惑する。

信が屋上を推したのには2つ理由がある。

ここならば誰にも会話は聞かれないというのが一つ。もう一つは


「フェンスも直ってるし痕跡も何もねぇな」


この自殺現場もしくは殺人現場とされる、この場所を刑事の息子、修也に見せることにあった。

彼の父には様々な噂がある。

殉職した、という話が有力だが、一方では自殺した・・・・との噂がある。

それも一説によると今回と同じ飛び降り自殺・・・・・・

親友の死に場所にしてトラウマかもしれないデリケートな問題を連想させる現場を、

冷静にみえて実は頭に血が上りやすい修也にあえてぶつけたさせた信。

どのような反応をし、どのような推理をするのか。

彼もまた、平々凡々なただの高校生なのか、一線を介した刑事や探偵の原石なのか。

自分に興味をもたない信は他人の事となると野次馬の用に食いつく癖があった。

しかし、それがプラスに貢献する事が多いため、他人事でも親身に取り繕っているよう表面上は見える、そこが彼の魅力の一つとなっている。


「で、今回の件について整理するか」

「嗚呼、といっても俺たちの知っている情報はかなり少ないけどな」


修也の提案に賛同して今ある情報を手帳から読み上げようとする信。

修也はその手帳を見て眉をひそめた。

真新しい手帳、手帳などを信が使う機会は長年の付き合いでまあなかった。

手帳をつける、と言い出した次の日には、ん?やめた、である。

夏休みの絵日記など更に酷かった。

確かに違和感を持つのはもっともだ。

信はただ淡々とその変化に気づかず事件の概要を話し始めた。


「現場と目撃情報から学校の校舎から飛び降りたことが遺族に明らかとされている。

またその際の屋上の状態や遺体の落下点などつまり現場の情報は明らかにされていない。

これらの情報は死因の根拠ともなっている。

死因は顔面から胸部にかけてへの損傷と出血。後頭部からの出血、等々。

胴に残る多数の打撲からは高所刃物や鈍器による損傷がないという情報は自殺を裏付けている」

「どうもご丁寧に、つまりは自殺と警察は言っているってわけだろ」

「そうだな」


(それじゃ、ダメなんだとなぁ)


修也はそう思い、信の方を見る。

信は依然として動かず、顔もいつもの仏頂面だ。

相変わらずの親友の態度にため息をつきながら肩をすくめる。

信はその様子を見て少し微笑んだ。


「悪いな、こういう性分なんだ」

「なんも言ってねーのに心読むなよ気持ちわりーな」

「ま、いる時間が長ければ相手のフレームワークは予測出来る」

「フレームワーク……なんだよそれ、美味いのか?」

「ざっくり言えば思考回路の事だ」

「相変わらずお固いのね、お前」

「固くなどないさ。絶対的な固さなどは――」

「アー悪い悪い。もういい」


ムスッと顔をしかめる信。

修也はそれを見て少し微笑んだ。


「んで本題に戻ろう。今日のあいつの扱いは?」

「学校側の書類上では『欠席』。

クラスメートは冷たい奴らばかりだから全く気にしていない『朝霞有栖が死んだ』という真実さえ知らないだろうな」

「なるほど」


そういうと痕跡一つ残っていない床を眺め考えはじめた。

ここに来た後者の理由は無意味だったようだ。修也は現場状況の把握に真剣になっている。

正直いえば警察と彼らの隔たりは現場の情報の差にある。

その差さえ超えれば情報という点においては差がない。

修也が気付いた変わった点と言えば、立て付けの悪かったフェンスが修復しているという点であった。

以前のフェンスの接続部はここまで徹底した物ではなかった。少し安っぽいボルトとナットに固定されていた気がした。かといえどここを外すのにはかなりの時間を要するだろうしそれなりの工具がいる。

余り状況は変わらなかった。


「で、結論としてはどうなんだ?」

「完全に『修復』されてるな。誰も『何かが起こった』なんて疑問を持つことはねぇだろうよ」


修也の発言は信の思っていたことと同じらしい。

信は残念といわんばかりに比喩でなく手を挙げた。

その顔には隠しきれていない悔しさがにじみ出ていた。

ただ思考を誘導しながら信は話を続ける。


「やはり学校側は『隠蔽』している?」

「葬儀も行われていないところからすれば家族もからんでるかもな」


信にとってそれは少し意外だった。

有栖の家族と接触し、有栖の死に関する情報は得たが、家の事情については眼中になかったからだ。

ただあまり重要ではないと判断するとまた円滑に話をすすめた。


「自殺か事件かどっちなんだ?」

「『事件』だろう。」

「証拠は?」

「物的証拠は皆無だが、利権という視点から見れば……」

「『隠蔽』が怪しいと。刑事というより探偵だなお前?」

「俺は親父が嫌いなもんでね、あともう一つ根拠がある」

「なんだ?」

「刑事の勘だ」

「プッ、根拠にならんし、さっきと言っていることが矛盾している。アンチノミーだ」

「プッ、って抑え気味に死んだ目で吹くなよきもちわりーな、あと横文字禁止」

「それはそれとして、これからも追うのか?」


信はどちらでも良かった。

真実を知ったところでそれは終わったコト、過去の事物にすぎないとも思っていた。

先程まであったはずの興味関心もさっぱりなくなる。熱しやすく冷めやすい。

それも信の長所であり短所であった。


「追々かな。急いだところで犯人はかわらんし、情報が隠ぺいされてっても大差ないだろう」

「なら俺も協力しようか、暇つぶしがてらに。出来ることはないが」

「なぁ~に役立たず発言してんだ?ああ?お前の『力』があればなにか分かるかもしれないじゃねぇか」

「『サブリミナル』を過信してはいけない。自信はないが……それでも」

「それでいいさ」


サブリミナル』とは信の持つ力である。生前の有栖がつけた中二ネ……俗称である。

詳しいことは実際に彼が使用する現場に出くわす方が早い。


「じゃ、少しブレイクするか」

「だな」


二人は自動販売機で購入した紙パックを取り出す。

修也の方が取り出すのが早く先に飲み始めた。

微糖のコーヒーを満足げに飲む。と信がショッキングピンクのパッケージのいちご牛乳を取り出した。


「ぶふっっぅ」

「吐くなよ、汚すなよ、飲めよ」


修也が酷く吹いたのに対して、信は飲料を飲む際の注意事項という良くわからん突っ込みを披露する。


「柄に合わねえもん買ってんじゃねーよ」


激しく感情を昂らせる修也。

ただそのパッケージはいつもよく見ている気がした。

修也が気が付くと同時に信は語りだす


「有栖が……好きだったからな」


表には出さない。思考にも影響を及ぼさない。信の有栖に対する感情はこのような形でひょっこりと顔を出す。

もしかするとただの不器用なの奴なのかもしれない、ふと修也が考えると、信が酷く人間臭い面を持つことがいつものギャップ分感じられた。

こんな信を見たのは初めてではなかったが本当に僅かな機会しか現れず、内容が内容だけに秘匿胸を打った。それと同時に修也は古傷、いや今もまだ開いている傷口にメスを入れられるような痛みを覚えた。


「ツンデレですか」

「男のツンデレに需要はない」

「あったろ、実際」


そんな裏は深いが、表向きは軽い会話の最中誰かが階段で上がってくる音が聞こえる。

雲行きが一気に変転し、太陽を覆う。

黒い黒い雲が屋上を覆う。

それは気のせいか部分的にも見えた。


「やべえっ」


時すでに遅し。二人がドアの方を意識すると同時に、鈍く重い音が屋上を支配する。

ドアが開かれてゆく。

どうする事もできない二人は本能的に身構えた。

入ってきたのは意外にも教師でもなければ生徒でもなかった。

黒いワンピースをきた一人の美少女。

しかし、二人はその顔を良く良く知っていた。ここ最近まで毎日見た顔だ。

ただ圧倒的に違うのは黒い服とは対照的な、病的に白い肌。

彼女が手に持つ彼岸花と同じか、それよりも深い色をした赤い瞳。

生前の彼女・・・・・が自慢していた光沢のある豊かな黒髪はどこか怪しく美しく桜の様に舞、甘美な狂気を感じる。

ただ彼女に表情は赤いリボンをまいた麦藁帽の所為で見えない。

右足から左足、左足から右へとゆらゆら体重を移し、漂っているようにも見える歩き方。

この世界ではない何かにも感じ取れた。

そして彼女は瞳をぐるりとこちらに向けると――ニッタリと微笑んだ。


信と修也は朝霞有栖に春休みぶり、つまり二週間ぶりに再会した。

はい、今回は比較的長めになりました。

のでミスも多いと思います(汗)

クレーム等はいつもの感じで感想、メッセージ等で受け付けております。

作品の向上、作者のスキル向上におつきあいお願いします。

さて、やっとヒロインが出ました。

相変わらず今回の主人公信はつんつんしてます。

代わりに修也が主人公属性をバリバリ発揮していくという展開(笑)

今後も二人はこんな感じです。

シリアスが多いのでぼちぼちギャグ要素も入れたいこの頃(信の謎ツッコミじゃなくてね!)

まぁ書きたい様に書かせて頂いてます。読者様、サイト様に感謝。

オチに向かうにつれ徐々に面白くなっていくスロースタートあと読み直して面白いスルメ的な作品というコンセプトなので、ゆっくる楽しんでもらえればなぁと思うヘボ作者でした!ではまた次話でお会いしましょう!

来週はちゃんと更新できるよう頑張りますね!

ではでは(・ω・)ノシ

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