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cyaanは猛毒然れど美し【真希】

真希、何だかんだで強運だね。

シアンは美しい色だ。だけどシアンには毒がある。それは幟杏ちゃんにも言える事。その毒を制してこそ、美しさに触れられるんだ。皆は分からないだろうね、この魅力なんて。でもいいんだそれで。僕さえ分かっていれば問題ない。彼女には理解者が必要なんだ。たった一人の理解者が。


 ホワイトデー。僕はいつものようにネットでちゃみぃとお話していた。バレンタインの日と違うのは、僕の恋に対してちゃみぃが応援してくれるようになったこと。それと同時に何でか幟杏ちゃんの話を聞かれるようになった。どんな子?とか何で好きなの?とか。ネット内の彼女として、やっぱり気になるものなのかな?


 ホワイトデーと言えど、僕は家を出る気はさらさらない。御返し?それならもうあげたさ昨日に。今日まで待てなかったんだよ。ちゃみぃが今日は1日中話したいって言うから・・・まぁ政ちゃんはカインさんと居るんだろうし、どうせ一人だからってオッケーしたんだ。


 ちゃみぃと話すのはいつも他愛もないこと。今日こんな面白い事があったとか、お互いの趣味の話とか。案外話が合うみたいで楽しい。最近は恋愛の話が主流かな。僕は意外にも自分から行動を起こすタイプ。逆にちゃみぃは誰かがアプローチしてくれるのを待つタイプらしい。


『ねぇ、シアンってぃう人の写真見たぃな』


 僕に対しての返答と同時に返ってきたその話に、僕は戸惑った。だってここはネット世界だ。迂闊に写真を見せたらいけない。


『じゃあ、MLAS(メールアドレス)教えて』


 実際はこのゲーム内の禁止事項だけど仕方ない。暗号に載せればきっと平気。


『ぅん、分かった。ぇっとね、cyaan-げっそぉだよぉ』


『げっそぉ?あぁ、ゲッソーね』


 ちゃみぃの大好きなキャラクター、ゲッソー。つまり烏賊。勿論足だけな訳じゃない。とある有名なゲームに出てくる敵キャラ。


『gesso・・・ぁと、エイだからね?』


『オッケー、じゃあ試しに送るよ?』


『うん』


 迷惑メールが来ても平気なように、パソコンからメールを送る事にした。差出人の欄にcyaan-gessoと入れ、その後に@(アット)、携帯会社はエイと書いてあるのでaeだろう。




 件名にはすぐ分かるように、HN(ハンドルネーム)を入れた。ちゃみぃの事だからすぐに気付くだろう。


 数分後、確認用のメールの返信が来た。件名は「ちゃみぃ」になっている。どうやら成功したらしい。これで個人的な話も出来るというものだ。


 早速話を展開する。


『本名は何ていうの?』


 大胆ではあるが、運良く名前が聞ければ収穫だ。


『そっちゎ?』


『“まき”っていうんだ。』


『ウチゎ、“しあん”』


 しあん・・・・!?もしかして、幟杏ちゃん!?・・・な訳ないか。それにしても凄い偶然だなぁ。


『もしかして真希くん?』


『え?』


 これはもう確実だ。・・・とすると思わぬ収穫!好きな人のメールアドレスが分かるなんて・・・!神様、有り難うっ!


 僕は十字のピアスを押さえ、感謝した。


 バレンタインの時から薄々感じてはいた。態度、思考、言葉のパターンからしてあまりにも似すぎていたから。逆に向こうも分かっていたんじゃないかな。もし仮にそうだとしたら、幟杏ちゃんも僕の事を嫌っていない。ネット彼氏にしてくれるくらいだし。


 もっと上手くいけば、ネットという壁を越えてリアル彼氏彼女(カレカノ)になれるかも知れないチャンスだ。


『ねぇ、幟杏ちゃんは気付いてたの?』


『そぅかなぁとゎ思ってたケド、まさかなぁって。』


『やっぱりそうなるよね』


『でも、何か安心したかも。』


『何が?』


『ほら、バレンタインの時の“しあん”の話』


 そうだあの時、幟杏ちゃんが好きってちゃみぃに話したんだ。うわぁああ今となっては恥ずかしいよぉおお!まさか本人に告白してたなんて。


『ちゃみぃのコト、嫌ぃになったのかなって思っちゃったぢゃん!』


 ここはどう反応すべき?“僕はちゃみぃが・・・幟杏が好きだよ”?それとも、“嫌いな訳ないじゃん”?“そんなのあり得ない”?あぁあどれにしよう!


 予想外の展開に頭はパンク寸前。言葉も脳裏を凄い速さで過ぎ去る。ぎこちなく繋がった言葉では伝えられない。僕は何を・・・。


『ねぇ、今から会えない?』


 突如として指で織り成された言葉。普段の僕からしたら想像出来ない。どうしてこんな大胆な事を?こんなハイリスクな事をして平気なの自分。


『暇だし、会おうょ!』


 こんなに上手くいっちゃっていいのかな。後で酷い結末とか待ってないよね?


 不安が募る中手にした幸せへの切符。僕はそれを片手にあの子の元へ。

【後日談】


「真希、どうしたの?表情が弛んでるよ・・・?」


「あぁうん。凄く嬉しい事があってさぁ~」


「恋してるんだね、真希も」


「うん!・・・って・・“も”?」


「私も、恋してるみたいなの。」


「ま、まさかカインに・・・!?」


「え・・・な、何でそれを・・・///」


「何ぃいいい!!」


(自室にて電話を掛ける)


「はい、もしもし。カインですが」


「カァインンン!政ちゃんはお前なんかに絶っっっ対にあげないからなぁああっ!!(泣)」


(電話ブチ切り)


~一方カイン~


(な、何て凄まじい・・・これが兄弟愛というものなのですか・・・?)


(何とか相手として真希さんに認めていただかなければならないようですね・・・)


~真希、自室にて~


「神様~っ、ちょっと鼻の下伸ばしたくらいでそれはないよぉ~っ!ひっく!う、うわぁあん」



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