きゃんでぃ【沙灑】
またまたパソコンにて投稿!
【余談】
今日で高校二年生として学校に来るのは最後だったり。
次は高校三年生で就職に向けての話がメインになったり。
忙しくなる割に新しく部活に入ったわけで、来年度は多忙になる気がする。
知ってる?ホワイトデーの御返しで本当は返事が分かるんだって。定番のキャンディなら“いえす”、マショマロなら“のー”。つまりyesは両想いを指し、noは片想いを指すって事。まぁ、それを知っている人同士じゃなきゃ話にならないんだけど。
あの日俺が貰ったクッキーに、今どのような返答を出すべきなのか検討中。答えは簡単に分かるように、二択にしようとしてるけれど、そもそも答えがなきゃ御返しなんて出来ないから、まずそれを考えなきゃ。
第一に。俺が氷椏から貰ったクッキーは義理ではないのかという点が俺に迷いを生じさせる。義理に対して本命だと返して何の意味があるというのか。
第二に。氷椏には彼氏が居ないのか、そこまでは行かなくても好きな人くらいは居るのではないか?そこが引っ掛かる。俺なんて只の“お友達”でしか無いのだと思えばここまで悩む自分が愚かで可哀想に思えてくるが、真相は闇の中だし確認する術はないからどうしようもない。
第三に、俺は氷椏の事を好きなのか。という点。淡い感情を寄せているという事とその感情は慕いに近いことから疑う事はないと思うが、もし仮に両想いだとして俺は氷椏を幸せに出来るのか?満足させてあげられるのか?もしそうでないなら、他の奴に譲る方が良い。
氷椏が幸せになるならばそれで。
選択肢は二つ。今のままお友達を続けようとするのか、その先を望むのか。そう考えると男は単純なもので、後者を選ぼうとする。でも今ここで大事なのは、どちらが氷椏の幸せになるのかということなのだから、俺の意思は関係ないのだ。
追い込むように、また逃げるようにして進んだ思考は進展を望まず待機を望んだ。しかしそのままではいられずウズウズしているのがよくわかる。ならば、2・5の選択肢をすれば良いのではないか?
でもそんなこと俺には出来ない。
俺は璢夷についていき、どうするべきかを考えることに決めた。璢夷を探すのは簡単だ。いつでも会えるように、GPSをつけているから。勿論、本人に許可はとってある。いざという時の逃げ場として。
そのGPSの情報をもとに、璢夷を探し始める。璢夷は誰かに案内されているかのようにズンズン移動していっていた。かなりのスピードで進むことから霧雨さんではないかと推測できる。一体何処に向かっているのかと思えば、母校の近くにある女子高校で動きが止まった。どうやらここが目的地らしい。璢夷がいることを知った上で情報を元に考えてみると、璢夷がこの学校に在学する女子生徒にお返しをするなどというシチュエーションは簡単に浮かぶ。
ならばそこに行けば璢夷がこの日をどう使っているかがわかるはずだ。しかし問題は知らない人の多いこの女子高校まで行かなければならないところ。流石に女子高校まで行くのは嫌だ。しょうがない。後で合流して話を聞くとしよう。
とりあえず寮にいるわけにもいかないので、部屋を出て璢夷のいる方向へスケボーを使い向かった。街は活気に満ち溢れていた。ホワイトデーというだけで大勢のカップルが目につく。見せつけられているようで少し気分が悪い。
少し行ったところで路地裏へ退避。流石に人が多すぎて眩暈がする。影にでも隠れて休憩しなければ身が持たない。
暫くして、GPSに動きがあった。理由はわからないがこちらへ向かって来ている。これはチャンスだ。物陰からどうにかして璢夷と合流できないだろうか。
GPSが現地点にどんどん近づいてくる。拡大してエリアを細かくしていくと、どうやらこの物陰側を通ってくれそうだ。そのまま物陰で待機を始める。
「璢夷」
すぐ横を通り過ぎる瞬間に、俺は璢夷に声を掛けた。璢夷はその声に気付いたようだ。良かった。
「どうした?沙灑?」
「・・・・ついて行ってもいい?」
「良いわよ。おいでなさい。大人数の方が良いし」
推測通り、隣には霧雨さんがいた。意外にも俺がいることを許可してくれた。
俺は璢夷の後ろに隠れるようにしてついて行く。
特に誰に会うこともなく進むその先には星本家があった。目的地はそこらしい。
星本家につくと、霧雨さんがチャイムを鳴らした。数十秒後ゆっくりとドアを開け、満面の笑みをして出てきたのはセイラさんでもカインさんでもなくケインさんだった。
「いらっしゃ・・・」
「こんにちは、ケイン」
「・・・・。」
璢夷は沈黙。俺は特に何もなく璢夷の後ろで待機。そんな中霧雨さんはケインさんにあいさつをし、ケインさんは予想外という目で俺たちを見た。
「――っ・・・。」
一瞬の目の曇り。どうやら霧雨さんと二人きりをご所望だったらしい。
「うん、まぁ上がりなよ。」
「そうさせてもらうわ、さぁ行きましょう璢夷くん♪」
中に入ってからは長くなるので簡略化する。簡単に言うと、“ケインさんが霧雨さんにお返しとしてケーキを贈った”。一部始終はカットする。
俺はリビングにあるソファーの後ろでただただ待機。様子を伺った。すると俺が気まずいことに気付いたのかなんなのかケインさんが猫を連れてきてくれた。それが嬉しくてとりあえず猫と遊んだ。そっから先は猫と遊ぶのに集中しすぎて覚えてない。
気が付くと皆の会話が終わっていて、璢夷や霧雨さんが帰る支度をはじめていた。慌てて猫と遊ぶのをやめ、帰ることを表明する。
ケインさんのいる家を出てからすぐ。霧雨さんと璢夷の会話がよぎる。
「あれだけのものを用意するとは、ケインは相当お前の事が好きなのだな。霧雨も少しは優しくしてやれ」
「そんなこと言っても無理よ。だって私には璢夷くんという想い人がいるんだもの。逆に璢夷くんが私の事を好きになって、ケインに対抗心を抱けばいいのよ」
「それは無理だと思う・・・・」
あまりにもズレた話だったので思わず意見を漏らしてしまったが本当のこと。璢夷は“心ここに非ず”なんだから。
「それより、沙灑。俺に用事があったんじゃないのか?」
ふと璢夷が立ち止り言った。当初の目的はそこにあったのだと思いだし、俺は言葉を口にする。
「相談事があったけど、霧雨さんがいたから・・・・」
「あら、邪魔かしら?私、あなたの事も興味あるのよ。聞かせてくれないかしら」
「・・・・僕を道具として使わないでくれる?」
所詮霧雨さんから見たら俺は邪魔者だ。璢夷との時間を割こうとする敵。そんなこと言ったって俺にはなんら興味はないはずだ。興味があるのは璢夷とかかわっている俺であってただの俺じゃない。
「あら、随分と生意気な口を聞くのね。まぁいいけれど。そう思うのも無理はないわね」
「・・・逆に一つだけ聞けるとしたら何がいい?」
「そうねぇ・・・」
霧雨さんは悩ましげに首をかしげた。
「あなたの恋愛事情かしら?その特異な性格は聞いてもどうにもならなそうだし」
「・・・恋愛事情?難しいことを聞くんだね」
「わからないことを聞かないと聞く意味がないでしょう?」
「それもそうか・・・うん、じゃあいいよ。話を聞いても。今話そうとする内容と近いしね」
俺は朝に思ったことを二人に告げた。
「それは・・・」
璢夷は難しそうな顔をした。逆に霧雨さんはなんだか嬉しそうだ。・・・何だか俺のこと誤解してたみたい?決してそんなことはないのに。
「それならいつか告白するべきよ。氷椏はああ見えてロマンチストだし」
「そうなの・・・?」
そうよ、と言い切る霧雨さんは何だか頼りになりそうだ。璢夷は恋愛経験がほぼないからアドバイスくらいしかできないけど、霧雨さんならもう少し多くのことを教えてくれるかもしれない。
「・・・・なら、どうすればいい?」
「そうね、手作りのはハードルが高いから、まずは気持ちに関係なくお返しを渡すのがいいわね。多分あの子に急に告白したら戸惑うだけだわ。まずはお友達から始めて徐々に・・・ってパターンかしら」
「そっか・・・」
何となくそのシーンが浮かぶ。急に告白したと仮定してシチュエーションを考えてみると、それを聞いた氷椏がオロオロするのが浮かんだ。
「私も頼りになるでしょ?」
「・・・・・うん。」
「何よその間は」
「・・・ごめんなさい」
そうこうしながらそのまま買い物まで付き添ってもらった。人ごみの中を移動するのは苦手だから。霧雨さんの後ろを歩きながら、後ろに璢夷を従えて歩いた。そうしてスーパーでキャンディを購入。女の子がどんなのを好きかなんてわからないから、霧雨さんに選んでもらった。
「これを何気ない顔で渡して意識させなさい」
最後に霧雨さんはそう言った。
璢夷と霧雨さんと別れ向かった先は勿論氷椏の部屋。寮まで向かって渡すことにしたのだ。何処かに呼び出すと人が多く不安なので、寮に決めたのだ。
寮の近くまでくると、緊張で頭が真っ白になった。こんな感情は以前にはなかったはず。いや、以前にも前兆はあったかもしれない。
「ピンポーン・・・」
「はい・・?」
チャイムを鳴らし少し待つと、氷椏が出てきた。私服の氷椏を見たのは初めてかもしれない。
「あ、沙灑さん。こんな時間にどうしました?」
優しく言葉を掛けてくれる氷椏とは裏腹に、掛ける言葉も見つからない俺。混乱の最中理性は吹っ飛んだ。ついでに意識も。それから気が付くまで何が起きたのかは分からない。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
気が付くと、俺は氷椏の部屋に居た。辺りを見回して気付く。来たときから時間がかなり経っていると。今まで一体何を――?
「あれ・・・一体・・・どうして?」
「あ、良かった。普段に戻ったみたいで。」
普段?
「さっきまでまるで人が変わったみたいに私と接してたんですよ。」
「それは一体どういう・・・?」
「ふふ。それは内緒です。あとこれ・・・有難う」
どうやら記憶がないままに行動していた時にさっき買った飴のセットを渡していたらしい。状況が理解できないまま氷椏の顔を見ると、頬が紅潮しているのが分かった。
「・・・・・・。」
「そんなに強張らなくても大丈夫。普段とは違ったけど、ちゃんと沙灑くんだったから」
「?」
「自覚ないんだろうけどあの言葉・・・凄く嬉しかった。」
言っている意味が分からないが多分意識を失っていた時のことだろう。
時間も時間なので俺は帰る支度を始めた。あまり長く居すぎると迷惑になる。
「・・・また遊びに来てね」
「・・・うん。」
最後にそんな言葉を交わし、氷椏の部屋を出る。部屋には暖房はついていなかったようだが体が温かい。何が起きたのかを知っているのが氷椏だけな以上真相は分からないが・・・俺にとってマイナスではないことは間違いないだろう。
何だったんだろう・・・。
不思議な感覚に襲われながら帰る帰り道。何故か先程まで気に食わなかったカップル達が微笑ましく思えた。俺の中の何かが変わったのかもしれない――。
沙灑と氷椏。
璢夷と霧雨に続いてこっちも実らない気がする。まず氷椏がね・・・。
あ、ちなみに◆◆◆で区切ったシーンにて切り取られた一角は想像にお任せします。人によって色んな話ができそうだよね。あ、でもR指定にはならない内容だよ!←
氷椏が言われて嬉しかったセリフも想像にお任せ。
敢えてキーワードを出すなら、“普段とは違う沙灑”と“俺”と“二重人格”かな。この子の人格はまだ定まってなくて、色んな沙灑として登場してる気がする。あるときは全くしゃべらなかったり、あるときは天才発明家だったり。そんな一人一人の沙灑すべてが“沙灑”っていう人物なんだよねきっと。