表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『秘密のエグゼクティブ・ラブ』 ―千賀真琴と御上千聖の恋―  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『秘密のエグゼクティブ・ラブ』 ―千賀真琴と御上千聖の恋―
8/36

第6話:報告と沈黙



―この結婚を、誰に知らせ、誰に隠すか。


週明けの朝。

千賀真琴せんがまこと御上千聖みかみちさとは、それぞれの上司に「報告」のタイミングを迎えていた。


まずは、副会長の相川涼子ななせりょうこ

応接室にて、真琴が切り出す。


「私たち、結婚しました。社内ではまだ公表しない予定ですが、直属の方にはきちんとお伝えしたくて」


涼子はほんの少し目を見開き――そして静かに笑った。


「そう。あなたたちらしい報告ね。

周りのことを最初に考えて、でもきちんと通す。……賢い選択よ」


続いて、古賀結花常務、そして広瀬誠一専務へ。

ふたりとも驚きはしたが、反対はしなかった。


「まだ若いけど、信頼してる。

このままお互いが高め合える関係でいてくれたら、それが一番いい」

結花がそう言うと、千聖は少しだけ顔を伏せた。


そして、真琴の隣で微笑んだ。


***


報告を終えた日の夕方。

会社を出ると、あいにくの雨だった。


誰もいないビルの裏手。

千聖が鞄から傘を出そうとすると、真琴がそっとそれを止めた。


「……濡れても、いい?」

「え?」

「少しの時間くらい、いいだろ? ふたりだけの時間なら」


そう言って、真琴は彼女の肩を引き寄せ、

雨粒を受けながら、そのままキスを交わした。


冷たい雨の中で、唇だけが温かかった。


「社内ではまだ秘密だ。だから今だけは、思い切り好きだって言わせてくれ」


「……うん」

千聖の頬を雨が伝う。それが涙かどうか、自分でもわからなかった。


けれどそのキスだけは、たしかに“夫婦”としての、誓いの延長だった。


***


その夜。

千聖は左手の指輪をふと見つめて、小さく呟いた。


「誰にも見せられないけど、でも……私は、幸せ」


その想いを、明日もまた抱えて会社へ向かう。

秘密のままで、堂々と愛し合うために。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ