第9話:深夜のバスルーム、ふたりの“静かな愛の確認”
―心も身体も、ふたりのままで。育児の合間に確かめる愛のかたち。
夜、ようやく4人の子どもたちが眠りについた。
時計の針は午前1時を指していた。
千聖は湯気の立つバスルームで、静かに髪をほどく。
育児に追われながらも、ふと鏡を見るその姿には、
どこか母としての色気と、かつての“女性”としての美しさが共存していた。
ドアがノックされる。
「……入っていい?」
「……うん、もう湯船も入ったから」
バスローブ姿の真琴が、そっとバスルームに入る。
千聖は湯船の縁に肘をかけ、軽く微笑んだ。
「なに?」
「いや……なんか、最近ちゃんと“千聖の身体”見てないなって」
「……急に何言ってるのよ」
千聖が頬を赤らめ、湯に沈めた肩を少しすぼめる。
「ねぇ、前から気になってたんだけど……千聖って、何カップ?」
「……なに、その質問……」
「ダメ?」
「……Eカップ、だけど……そんなに見たいの?」
真琴は笑いながら、タオルの端に手をかけようとするが――
「……ちょっと、待って」
千聖はその手を軽く押さえた。
「今は……ダメ。
子どもたちも起きちゃうかもしれないし、
私も今日はそんな余裕ないから……」
「じゃあ、今度“時間があるとき”に、見せてね」
「……ふふ。変わらないね、そういうとこ」
ふたりは湯気のなかで目を見合わせ、
そのまま湯船越しに――ゆっくり、深くキスを交わした。
肌に触れるぬくもり、
唇の柔らかさ、
静かな水音とともに重なる心。
キスを終えると、千聖は微笑んで言った。
「ちゃんと“見せるとき”は、特別にするからね」
「……楽しみにしてるよ。俺だけの千聖」
ふたりはバスルームの静けさの中で、
愛を口づけとまなざしで確かめ合いながら、
その夜をやさしく終えた。




