第7話:夫婦で会議、本音と不安と“ふたりの覚悟”
―黙って我慢するくらいなら、ぶつかって、抱きしめて、キスをする。
日曜日の午後。
リビングにひときわ大きな沈黙があった。
バウンサーで3つ子が揺れ、胡春はブロック遊びに夢中。
その間、千聖は台所で洗い物をしながらため息をついた。
真琴はノートPCに向かい、資料を打つ手が止まっていた。
「……ねぇ」
「うん?」
「たまには私の目、ちゃんと見て話してくれる?」
真琴が顔を上げた。
千聖の目が、少し怒っていた。少し、寂しげだった。
「最近、仕事に逃げてない?」
「……そんなつもりはないよ」
「でも、あなたの目が“父親”ばかりしてる。
……私、“妻”としてはどう映ってる?」
静寂が、部屋に降りる。
PCがスリープに入り、子どもたちの泣き声すら止んでいた。
「……正直、不安だよ。
4人の育児に、会社の責任、家計の重圧。
全部抱えて、君まで寂しがらせてるなら、俺は父失格だ」
千聖が近づいてきて、テーブルを挟んで言った。
「……あなたは父親じゃない。私の“夫”。
私、あなたに“女”として見られていたいの」
真琴が立ち上がり、千聖の肩を抱いた。
「……ごめん。俺、ちゃんと“夫”に戻る」
「……だったら、証明して」
その瞬間、ふたりの唇が激しくぶつかった。
熱く、深く、求めるように。
千聖は背伸びし、真琴の首に腕を回す。
真琴は腰に手を添えて、ぐっと引き寄せる。
「……んっ……はぁ……もっと……」
「俺から逃げるなよ。ちゃんと、夫として確かめる」
キスは数分続き、ソファの背に千聖がもたれたまま、
唇を離すたびに、目を潤ませていた。
「……私ね、あなたのことが怖くなるくらい、好きなの」
「俺も。仕事も育児も、君なしじゃ無理だって痛感してる」
そして、もう一度――優しく、でも長く深いキス。
「この家の中心は、子どもじゃない」
「……そう。**“ふたり”が中心。**だから、何度でも向き合おう」
ふたりは手をつないで、リビングの真ん中に立った。
そこには、カオスな生活と、愛の核があった。




