第6話:4人育児、始まる混沌と微笑みの日々
―混沌の中にあったのは、誰よりも愛しい“今”だった。
産院を退院し、4人の子どもと一緒に自宅へ戻ったその日。
玄関を開けた瞬間、胡春が声をあげた。
「ママー! パパー! あかちゃん、きたの?」
「来たよ、こはる。今日から一緒に住むんだよ」
「みせて、みせて!」
千聖が腕に抱えた春夜を、胡春がのぞき込む。
「……ちいちゃい……でも、ないてる……」
「それが赤ちゃんだからね」
真琴が笑いながら、春翔をおくるみにくるむ。
リビングには3台のバウンサー、哺乳瓶におむつに、
小さな靴下が何組も並んでいる。
まるで**“ミニ保育園”**のような部屋。
「3時間おきに授乳、オムツ替え、寝かしつけを4人分……」
「でも、誰かが泣くたびに、こはるが手を握ってくれるの。お姉ちゃんね」
夜。
千聖が授乳のあと、ソファに座ってぐったりしていた。
「はぁ……髪をとかす時間すらない……」
「なら、俺がとかしてあげる」
真琴が後ろからやってきて、丁寧に髪を梳いてくれる。
「ありがとう……」
「こっちこそ、ありがとう。今日もおつかれさま」
気がつけば、胡春は春翔の隣で毛布をかけて眠っていた。
小さな手で、春翔の手を握って。
「ねぇ……大変だけど、泣けるくらい幸せだね」
「泣いていいよ。俺の胸で、ね」
千聖は振り返り、真琴の首に手を回す。
そして――
ひときわ長く、深く、甘いキス。
そのキスは、言葉よりも確かで、
「まだまだ一緒に育てていこう」という、無言の誓いだった。
その夜、4人の子どもたちが並んで寝息を立てる部屋で、
夫婦はそっと手をつなぎ、眠りについた。
疲れていても、
眠れなくても、
日々がカオスでも――
そこに“愛”があるかぎり、ふたりは進んでいける。




