表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『秘密のエグゼクティブ・ラブ』 ―千賀真琴と御上千聖の恋―  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『秘密のエグゼクティブ・ラブ ―triplet life編―』
30/36

第5話:3つ子誕生、産声の嵐と涙の名前発表



―春に来た命は、涙と祝福の中でこの世界に生まれた。


出産予定日の朝。

病室の窓からは、桜の花が揺れていた。

「今日かもしれない」と医師に告げられた直後から、

千聖の表情が引き締まる。


「真琴さん……」

「大丈夫。全部そばで見てる。全部受け止める」


分娩室。

モニターの音と医師の指示が交錯する中、

千聖は汗をかきながら、必死に呼吸を整えていた。


「もうひと息です、御上さん――!」


「――っ、ああっ!!」

大きな声とともに、第一声が響いた。


「おぎゃあっ……おぎゃああっ……!」


「……第一子、男の子です」

その声を聞いた瞬間、真琴の目に涙がにじむ。


春夜はるや……」

彼が口にしたその名に、看護師たちも微笑んだ。


続いて、

「おぎゃっ、あ……おぎゃああ……!」


「第二子、男の子!」

「――春翔はるとだ……」


さらに数分後、

「――おぎゃ、あああっ……!」


「第三子、女の子。全員、無事です!」


その瞬間、千聖は酸素マスクの下で泣いていた。

苦しみ、痛み、そして――

この上ない達成感と、歓び。


真琴がその手を握り、額にキスを落とす。


「千聖……ありがとう。……ありがとう。俺たちの宝物だ」


「名前……呼んであげて」

「うん」


真琴は、3人の赤ん坊の小さな手を順に握りながら、ささやいた。


「君が春にくれた命……

長男、春夜はるや

次男、春翔はると

長女、桜羅さくら


――ようこそ。俺たちのところに、生まれてきてくれてありがとう」


生まれたばかりの命たちは、小さく泣きながらも

まるで答えるように、その手をほんの少し動かした。


千聖はベッドに横たわりながら、真琴の顔を見上げて微笑む。


「……ねぇ、私、また母になれたね」

「ああ。そして、俺もまた……“父親になった”んだ」


その言葉を噛みしめるように、

ふたりは病室でもう一度、涙まじりのキスを交わした。


今度のキスには、命と愛と、約束がこもっていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ