第2話:妊娠中の決意と、家庭内分業スタート
―あなたが守る朝、私が踏ん張る昼。そして夜は、ふたりのもの。
「今日から、朝5時起き生活、正式に始めます!」
千賀真琴は、キッチンで宣言した。
エプロン姿に寝ぐせ混じりの髪。
それでもその目は、確かに“父”の覚悟に満ちていた。
御上千聖はというと、ソファでゆるく毛布にくるまりながら、
ちいさな娘を膝にのせて「おはよう」と微笑む。
「……そんなに頑張りすぎて大丈夫?」
「頑張るんじゃない。やるって決めた。君と、子どもたちのために」
真琴は朝食を作りながら、娘の保育園の支度と洗濯機のボタンを同時に操作。
「父、進化してます」と自分で呟きながら――
***
午前9時、出社。
部内会議で資料を発表し、午後は常務との戦略面談。
そして夕方前、部下の質問対応を終えて時計を見る。
「……よし、退勤。定時きっかり」
すぐにスマホを取り出し、保育園へ「今から迎えに行きます」と連絡。
***
一方の千聖は、仕事は産休目前。
通院と家庭内の動きが増える中、身体のバランスを保つだけで精一杯。
だが、彼女には**“もう一度産む覚悟”**があった。
「……1人目よりも、心が穏やかになってるかも」
「そう言ってくれて、少し救われる」
夜、娘を寝かしつけたあと。
ふたりはダイニングテーブルで向き合う。
「家事も育児も、今日の分は全部終了」
「真琴さん、本当にありがとう」
「まだまだ、これからだよ。……でも、今日はほめて」
「……うん」
千聖は立ち上がり、背後から真琴にそっと寄り添う。
そして、首筋に小さなキスを落とした。
「よく頑張りました。かっこよかったよ、パパ」
「……その言い方、めちゃくちゃ効く」
ふたりはキッチンに立ったまま、静かに見つめ合う。
そして、自然と――ゆっくりと、深く、長いキスを交わす。
「夜のキスが、いちばん好きだよ」
「……夜は、ふたりの時間だもんね」
家庭と仕事。
どちらも背負っていくふたりの愛は、
“分担”ではなく、“共有”という名の絆だった。




