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『秘密のエグゼクティブ・ラブ』 ―千賀真琴と御上千聖の恋―  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『秘密のエグゼクティブ・ラブ ―triplet life編―』
25/36

第0話:1年目の娘と、ふたりの夜




―家族になって、1年が経った。けれど、愛は今も更新されていく。


その夜、娘はすぐに眠った。

リビングのソファには、いつものふたり。

千賀真琴せんがまこと御上千聖みかみちさと


「……寝かしつけ、うまくなったね」

「毎晩だもん。あなたも、オムツ替え手慣れたよね」

「なあ、そろそろ“パパ歴1年”で表彰してもいいんじゃないか?」


「……じゃあ、今夜のご褒美はキスね」

千聖がいたずらっぽく笑って唇を近づける。


真琴は苦笑いしながら、その唇を受け止めた。

長くも、静かでもない――でも、ふたりの今を確かめる、やさしいキス。


「今日、保育園で“パパに似てますね”って言われた」

「え、マジで? それ褒められてるのかな……」

「うん。『安心して寝てくれそうな顔』って」


ふたりは顔を見合わせ、声を立てずに笑った。

いつの間にか“親”という顔になっていたことが、少しくすぐったい。


***


夜も更けて、バスルーム。


湯気の中で背中を流し合いながら、千聖がふと真琴に聞いた。


「……ねぇ、最近さ。私の身体、変わったと思わない?」

「変わったよ。母になったって意味で」

「見た目じゃなくて……こう、女としての魅力的な意味では?」

「……むしろ、増してると思ってる」


真琴が正面から千聖を抱き寄せ、そっと唇を重ねる。


裸のまま、湯気の中で長く、やさしく。


「ねぇ……覚えてる? 娘が生まれた日」

「もちろん。あれ以上に泣いたことないよ」

「あなたが私の手を握って、何度もキスしてくれたの、忘れない」


バスルームの小窓から風が流れ込む。


「……あのとき、これが“最後の出産”って思った?」

「思わなかった。むしろ、“またあなたの命を抱けたらいいな”って思った」


千聖は驚いたように目を開き、そしてふと微笑んだ。


「……それ、叶うかもしれないよ」

「え?」


「なんとなく……そんな予感がしてるの」

「それって……」

「まだ確信はないけど。――でもね、身体が覚えてるの。前と似てるって」


真琴は目を見開いたあと、ゆっくりと彼女の額にキスをした。


「……だったら、その予感、大切に育てよう」


夜が、またひとつ、ふたりを近づけていく。


***


明け方、娘の寝息の中で、ふたりは手をつないだまま眠っていた。


目を閉じながら、千聖は心の中で思った。


(もし、また命を授かったとしたら――

私は、この人となら、何度でも母になれる)



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