第4話:雨の午後、抱き合うシャワールーム
―言葉よりも、熱で伝えたい。あなたを、好きでいる理由を。
「……降ってきたな」
午後3時、都内の支社を訪れていた千賀真琴と御上千聖は、予想外の豪雨に見舞われた。
打ち合わせを終え、駅に向かおうとした矢先、空が暗転し、バケツをひっくり返したような雨。
ふたりはタクシーに飛び乗ったが、既にスーツはぐっしょりと濡れていた。
「とりあえず……ホテルで着替えよう」
「うん。冷える前に」
***
急きょ押さえたビジネスホテルのツインルーム。
部屋に入るなり、千聖がポツリと呟いた。
「……寒い」
「すぐシャワー浴びよう」
真琴はスーツジャケットを脱ぎながら、千聖に目を向けた。
「一緒に浴びるか?」
「……そのつもりで言ったんだけど?」
バスルームの中、シャワーの音と共に濡れたシャツが脱がされていく。
湯気の中、互いの肌があらわになっていくたびに、緊張と安堵が混ざっていく。
「……雨、嫌いじゃないかも」
「どうして?」
「こうして、あなたに抱きしめてもらえるから」
真琴はシャワーを止め、彼女の身体をそっと抱き寄せた。
そして、湯気の中で――
そのままキスを落とす。
背中を伝うしずくの上に、唇が触れるたびに千聖の呼吸が揺れる。
「……もっと、あなたの熱で温めてほしい」
「全部、渡すよ。心も、身体も」
水音の中で、ふたりの体温は次第にひとつに溶けていった。
浴室の曇った鏡には、ふたりが寄り添う影が映っている。
それは、どんな言葉よりも深く結びついた“愛のかたち”。
***
「……好き」
「何度でも、言って。俺も返すから」
肌を重ねたあと、バスローブのままソファで寄り添いながら、
もう一度唇を重ねた。
深く、静かに、あたたかく。
雨音がふたりのリズムを包み込むように響いていた。