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『秘密のエグゼクティブ・ラブ』 ―千賀真琴と御上千聖の恋―  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『秘密のエグゼクティブ・ラブ ―married life編―』
16/36

第3話:社内で噂が、そして――



―隠しているのではなく、“守っている”だけ。


昼下がりのオフィス。

ふと耳に入ってきた声が、御上千聖みかみちさとの指を止めた。


「最近さ、やっぱり千賀取締役と御上取締役って、仲良くない?」

「いやいや、まさか。あのふたりはプロでしょ」

「でもさ、会議中に目を合わせる頻度、多くない?」

「……付き合ってる、ってこと?」


その言葉に、千聖は息を呑んだ。

でも、すぐに背筋を伸ばし、何も聞かなかったかのように書類を閉じた。


(隠してるわけじゃない。ただ、今はまだ……)


その夜、千賀真琴せんがまこともまた、別の部署の社員から

「最近、御上さんと距離近くないですか?」と軽く冗談めかして言われた。


「……そう見えたか?」

「はい。なんか、呼吸が合ってるっていうか、ぴったりだなって」


真琴は笑ってごまかしたが、胸の奥には静かな警鐘が鳴っていた。


(守りきれるだろうか、この関係を)


***


夜。

ふたりが帰宅すると、リビングの空気がどこか重かった。


「……聞いたよ、今日」

千聖がワインを片手に口を開いた。


「“付き合ってるんじゃないか”って、また言われたの」


「……俺も、言われた」


ふたりは一度目を合わせ、ソファに並んで座った。


「ねえ、真琴さん。

私たちって、誰かに隠れてるように見えるのかな」


「違う。俺たちは――守ってるだけだ」

「……うん」


ふたりは、そっと手を重ねる。

そして、真琴が小さく囁いた。


「人に見せるために一緒にいるんじゃない。

お前とだけ、わかり合っていたい。俺にとって、それが“夫婦”だよ」


その瞬間、千聖がそっと頬を寄せてきた。


「……キスして。

ちゃんと、あなたの中にある“私”を、確かめさせて」


真琴は何も言わず、彼女の唇に優しく口づけた。

一度。二度。

やがて深く、息が混じるほど長く――


それは「好き」よりも、「信じてる」という意味を持つキスだった。


***


「たとえ誰に何を言われても、

あなたといることが、私にとっての“正解”だから」


千聖がそう呟くと、真琴はそっと額にキスを落とした。


「……俺も同じ。だから、堂々と隠し通そう」



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