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『秘密のエグゼクティブ・ラブ』 ―千賀真琴と御上千聖の恋―  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『秘密のエグゼクティブ・ラブ ―married life編―』
13/36

第0話:社長の正体、そして“夫婦の夜”へ


それでは、『秘密のエグゼクティブ・ラブ ―married life編―』より――





―「交際0日婚」だったふたりが、ようやく“本当の夫婦”になる夜。


「……え?」

御上千聖みかみちさとは一瞬、時が止まったように感じた。


取締役昇格の報告会議の中。

人事異動の説明が終わった後、橘悠真たちばなゆうまの名前が「新社長」として読み上げられた。


それだけでも十分に驚きだった。

だが、その後、古賀結花常務が何気なく付け加えた。


「ちなみに、会長の旦那さんでもあるのよ。美咲会長の」


「……え?」


真琴の同期。あの“橘”が――社長?

しかも、七瀬美咲会長の夫?


隣に座っていた千賀真琴せんがまことが、少しだけ苦笑していた。


「……言ってなかったけど、俺、知ってた。

でも、あの人たちも“秘密の夫婦”だったからな。言うタイミングを逃してた」


「真琴さん……あなたも、同じように秘密にしてたじゃない」


「……そうだな。お互い様か」


***


その夜。

ふたりはいつものようにマンションへ帰宅したが、どこかぎこちない沈黙が流れていた。


食事も済ませたあと。

千聖がぽつりとつぶやいた。


「私たち、交際0日婚だったんですよね……」

「うん」


「なのに、まだ……ちゃんと、触れ合ったことないんだなって、ふと思って」


真琴は言葉を選ばず、ゆっくりと彼女の手を取った。


「……今日、そうしよう」


「……今夜?」


「うん。もうずっと一緒にいるのに、“夫婦”になった夜がなかった。

だから、今から始めよう。ちゃんと、お互いに全部見せ合って、確かめよう」


その声は、優しくて真剣だった。


***


バスルームの扉が閉まる。

湿度を帯びた空気の中、静かに衣服を脱いでいくふたり。


最初は照れて、笑って、ごまかして。

でも、真琴が千聖の肩に手を添えた瞬間――

視線が重なり、空気が変わった。


「……綺麗だよ。ずっと、見たかった」

「……私も、見られたかった。触れられたかった」


湯気の中で、ふたりの身体がゆっくり重なっていく。

互いに初めて触れるぬくもり。初めて知る熱。

心も身体も、確かめるように指先がなぞっていく。


唇が合わさり、ほどけて、また重なり――

声も熱も、抑えられないまま零れていく。


「ねえ……痛くしないでね」

「しない。優しくする。愛してるから」


***


その夜、ふたりは“本当の意味で”夫婦になった。


言葉以上に、身体が覚えていく。

互いの温度と、重さと、リズムと、愛し方。


夜が明けるまで、ふたりは何度も唇を重ね、抱きしめ合い、

愛を育てた。


「今夜、ようやく本当に、あなたの妻になれた気がします」


真琴は彼女の額にキスをして、囁いた。


「もう遅いよ。最初からずっと、君は俺のものだ」



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