なぜ、人は……
これもバス通勤時代の話です。
たぶん月曜日でした。
私は土曜日に買ったばかりのマーメイドスカートを履いて出勤しました。どうしてそんなどうでもいいことを覚えているのか──それは、新調したばかりの服で初めて私が外を歩いたことが、その後の悲劇(或いは惨劇)の原因だったからなのです。
晴ればれとした、清々しい朝でした。
いつものバス停で降りた私は「よっしゃ、今日もがんばって定時で帰るぜっ!」という気合を込めて、力強く一歩を踏み出しました。
その瞬間!
気がついたら、私の目には快晴の空が映し出されておりました。なんというか、もう、もったいないような青空でした。
「大丈夫ですか?」
私に続いてバスを降りたと思われる人からわりと平板な声で問いかけられた私は反射的に応えました。
「大丈夫ですッ」
ピョコンという効果音が聞こえそうな勢いで立ち上がり、スタスタと歩き出します。ぐずぐずしていてはダメです。ヘタに痛がり、起き上がれないとなると救急車を呼ばれてしまうかもしれません。何より、そのバス停のすぐ先には産婦人科医院があります。
「あっ、そこに医者がありますね、ちょっとそこで手当てしてもらいましょう」などと言葉巧みに連れ込まれては、独身(の貧乏)貴族の沽券に関わるのです(なぜなら現場は私の職場に最寄りのバス停、職場の人に目撃されると噂が……)。私は一歩の歩幅が大股にならないよう気をつけて、猛然と職場へ向かいました。
翌朝、また同じバス停で私とその人が降りましたが
「昨日は大丈夫でしたか?」
「はい、ありがとうございます」などというHQ展開のような応酬はなく、どちらも気まずそうに視線を逸らしておりましたとさ。
教訓:マーメイドラインのスカートはタイトスカートよりも歩幅が開けません。スリットがない分、布地に足を取られて転びやすいです。小股でお淑やかに歩きましょう!
↑狭くなってます!
そして、人はなぜ「大丈夫ですか?」と言われると「大丈夫です!」と応えてしまうのだろう……?
イマドキの人は「大丈ばない」と言うらしい?
ちなみに、その、ひとコケでスカートには穴が空き、バッグに擦り傷、まったくのノーガードでアスファルトの路面に激突した膝も打身と擦過傷に見舞われておりました(;_;)




