聖なるスカラベ
戦前から続くという“老舗”のデパートが富山市内にありまして、一時期、私は毎週のように土曜になるとそこへ通っておりました。
約束した時間にまだ早く着いたので、ふらりと催事場でもよおされていた物産展(海外のバザール展か何かだったかと)に紛れ込み、見るともなく陳列された商品を見ていたら、まあ、当然、売り子のお姉さんに声をかけられるわけですよ。
「いかがです? こちらのお品は〇〇で、△△なんですよ。直接の仕入れですので、この機を逃すとなかなか手に入らないんですよ」
まあ、テンプレ通りですね。
1 “ここでしか手に入らない”珍しい物であること。
2 今回だけの“特価”であること。
あとはそれがその人の好みに合うものなのか、今、買う気があるのか、そこらへんをクリアすれば、お財布に余裕があれば買ってくれるはず。
そしてお姉さんは、とっておきの情報として付け足しました。
「こちらはエジプトでも人気のあるスカラベのデザインで、トルコ石なんですよ。あ、スカラベってわかります?」
お姉さん、知識を会話に織り交ぜて説明するのは戦略的にアリだけど、聞き方がマズかった。
あなたは知らないでしょうけれど、あなたが“古代エジプト風アイテム”を売りつけようとしている物体は、モノゴコロついた頃には『王家の紋章』を読んでいた古代史マニアの神話マニアですぜ?
「知ってますよ、フンコロガシですよね」
戦前からの百貨店で、その単語を口にした人間は……私が初めてではなかろうか……。
「そう、フンコロガシなんですよ」
お姉さんもヤケのように繰り返しました。
そして──私の予想よりも10倍くらいお高かったフンコロガシは、私の宝石箱に収められることになったのでした。
いくら手作りとはいえ、頭の部分の作りが雑……(;_;)
スカラベという名前を覚えたのは『はるかなるレムリアより』を読んだとき。




