掴めない胃袋
世の男性の胃袋ちゃんをガッツリ掴むお料理は──
地域、年齢などで幾らか順位変動とか入れ替えがあるらしいのだが、確かに、ハンバーグ、カレー、肉じゃが、オムライス、玉子焼き、豚のしょうが焼き、味噌汁etc.色々ある中で、今回は私が生まれて初めて肉じゃがを作った時のハナシをば……。
物心ついた頃から、姉がしていることは自分までするこたぁナイ、という思いがあり、家事で母親を手伝うということがないナマケモノな私であった。なので、台所を使うのは自分が食べたいもの(ラーメンとかチャーハンなどの簡単なものやお菓子)を作るときだけ。姉がとっとと嫁に行ってからは、仕事で帰宅が親よりも遅いこともあって(当時は通勤に時間がかかっていた)“一人息子”状態が長かった。
しかし、親はいつまでもいてくれない。
台所に残された食材を消費するべく、私は肉じゃがを作ることにしたのだが……。
じゃがいも、にんじん、玉ねぎ、肉、はあった。醤油、みりん、砂糖もある。だが、酒が見つからない。
(液体のだしつゆを使えば面倒な味付け調味なんかしなくていい、ということを、この時の私は知らなかった)
──いや、待てよ?
と、私は気づく。親父どのが飲んでる酒があるではないか。にわかに、酒ドロボウが誕生した。
見れば、ブツは“芋焼酎”である。芋=じゃがいも、同じ食材ならば反発することはあるまい!
思い込みとは、恐ろしいものである。
何とか汁が煮詰まり、肉じゃがらしい外観のモノを皿に盛り、私は夕飯の食膳に並べた。
「やればできるじゃないか」くらいの褒め言葉はあるのではないか、と思った。しかし、そんな私に親父どのは言った。
「……これは食べれん、さげてくれ」
一口だけ味見をした時「酒くさいな〜」とは思ったが、親父は酒飲み、問題あるまいと無理やり判断した経緯があった。それがまさかのお残し宣言である。ヤツは戦中戦後を生きてきた人なので、多少不味くても食べ物を無駄にしないポリシーを持っている。
そんな人間が「食べられない」と敗北したのである。
どうやら私は相当のシロモノを作ったらしい。
これを読んでくださっている方々──特に、これから愛しい誰かの胃袋ちゃんをgetしたいと目論んでいるひと──に、心から申し上げる。
肉じゃがを芋焼酎で作るのはダメ、絶対っ!!!!!
昭和のオヤジ一匹だにすらさえのみばかりまでもが、釣れないレベルのゲロマズな物体が生成されてしまうこと、請け合い!
ましてや胃袋を掴もうなんて!
さらさら、できない相談なのである。
(ともかく、口に入れようとする時点で独特の風味を感じ、そこから先に箸が進まなくなる。もったいないオバケ信奉派閥の私もさすがに完食を断念した)
肉じゃが……薄切り肉もいいけど、ゴロゴロ鶏モモにすると、一気にメイン感が増すんだよねo(^q^)o
注1 茹でたホタルイカの目ん玉取りとか、すり鉢の押さえ、とかぐらいはしたかな?
注2 おやつに柿を食べたりしていたので、わりと小さい頃から包丁で果物の皮を剥くことはできていた。
注3 衣食住、ほぼ“ママに丸投げ”できる生活能力のない役立たずのコト。自分でしなくても洗濯された衣類があり、ごはんが用意される恵まれた環境なので、せめて使った食器は洗いましょう。
そして私は、使用する酒というのは“調理用酒”のことで、商品名がついた日本酒ではないということを、後から知ったのである……。




