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〈Essay〉日常の中に在るさまざまなこと。  作者: 高峰 玲


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ドライ……何?







 ふと気づけば、昔ほどにはモノを覚えていられないと思うようになった。いくつか、切らしてしまったモノ、使ってみたい食材などを用意するために店に行くのだが……帰宅して買ってきたモノをしまうときに思い出したりするわけだ。


「あっ! アレを買い忘れたっ」と。


 ……恥を忍んで告白しよう。私は一、二回どころではなく、すでに何回もこれをやらかしている。

 そうして、いい大人な私はごくごく当たり前の対策を講じるのである──すなわち、お買い物メモの作成だ。

 

 書いているときは、いい。何の用途で自分がソレを必要としているのかをちゃんと自覚しているのだから。しかし、作成から数時間後、実際に店舗内を買い物カゴを提げて品物を探し歩くうちに、ふとそれにぶち当たってしまうのだ。


「…………◯◯って、ナニ?」


 そのメモを書いたのは確かに自分。紛うことなく、私の癖字がそれを記している。

 お買い物メモを手に店内を物色中、誰かにそれを見られて(読まれて)失笑されるのが恥ずかしくて、極限まで省略してしまうのは、まあ、お約束で……そして私は……言葉の意味がわからなくなってしまっていたのである。

 メモには、端的に単語が書かれていた。


『ドライ』


 はい?


 読みまちがいようもない、どう見ても“ドライ”と書いてある。

 そして、そこで私はいわゆるひとつの壁にぶち当たったのであった。


「ドライって、何?」


 真剣に、考えましたとも!

 しかし、そのときの私に、明確な答えなど、降ってきてくれはしなかった。




「……ドライ……“バー”?」


挿絵(By みてみん)


 うん、明らかにちがう。

 どちらかというと、このときの私はペンチを使ってキーホルダーの少し開いた丸カンを閉じたいと思っていたくらいで──でも、指で何とか対処していたので特に必要としてはいなかった。




「ドライ“ヤー”?」


挿絵(By みてみん)


 うーん? これも、ちがう。

 確かに私は“くるくるドライヤー”の“くるくる”部分を外して洗髪後の髪を乾かしているので、風力が弱いなぁとは感じていたけれど、季節がら扇風機と併用していたので、然程新しいのが欲しいと思っていなかった。




「スー◯ー“ドライ”?」


挿絵(By みてみん)


 これは100%、ない。

 私は下戸である。炭酸飲料を買うとしてもコーラやウィル◯ンソン系のはず。一度だけ“キールロワイヤル”を試したくて白のスパークリングワインを買ったことがあるがノンアルを選んでいる。


 ではいったい、私は何が欲しくてお買い物メモに“ドライ”と書いたのか?


 ドライ“トマト”? そんなモノを使用するような高度な調理をするテクなど、ない!

 ドライ“イースト”……同上……_| ̄|○ チーン


 うーん、うーん。




 答えはその日の夜、歯磨きをしようと洗面台で身を屈めた瞬間に降ってきた。


「! ドライシャンプーだ!」


 そして私は、ものすごくスッキリした気持ちで眠りに就いたのであった。









どういうわけか、その日の夜、お風呂で洗髪しようと身を屈めたり、歯磨きしようと洗面台で顔を下に向けたりしていると、ふっと“答え”が降ってくるようで……(笑)


それよりも、もっと酷いのは……帰宅すると持って出たはずのお買い物メモが机の上に置き去りになっていた件だろうか……?






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