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〈Essay〉日常の中に在るさまざまなこと。  作者: 高峰 玲


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マ・クベの呪い


初回、5話公開です。

続きは適宜、適話……お気軽にお立寄りください(#^.^#)







 あなたは彼を覚えているだろうか?


 彼の名はマ・クべ大佐、キシリア・ザビ配下の軍人である。とりあえず、モビルスーツに搭乗して戦闘することは可能ではあったが、ニュータイプではなく、儚く戦場に命を散らした。

「あの壺は──」

 彼が残した言葉である。


 なぜここに彼が登場するのか?


 それは彼の前髪が“耽美(タンビ〜)”だったから。


 私はそこに呪いにも似た遺伝子の悪意を思わずにはいられない。




 唐突だが私には四つ歳上の姉がいる。

 実の姉なので当然、遺伝子は同じ素材を基として形づくられている。つまり、成長の過程として同じプロセスを経ることが予想される存在だ。


 ある日、数年ぶりに会った彼女の髪型を見て、我慢できなくなった私は、つい、言ってしまった。


「姉ちゃん、その前髪、ナ( 注1)?」


 子供の頃、私はバリバリの直毛で、姉は俗にいう天パで、くるんくるんと見事なカールを誇っていた。慣れ親しんだヘアセットは万全で、その日、彼女の7:3分けの前髪は耽美な曲線を描き顔面に垂らされていた。


「マ・クべみたい」


 ごく自然な流れで、口をついて出た。


「頼むから『壺が〜』とか言って、怪しいのを買っちゃダメだよ」


 きょうだい間のほんの軽口、じゃれ合いのようなものであり、姉も

「買わないよ〜」

と、あっさり流した。何気ない日常である。


 だがしかし、四年の経過を待たず、その変化は訪れた。


 二十歳を過ぎたあたりからであろうか、体質の変化か加齢による髪質の“痩せ”からか、直毛だった私の髪が微妙にウェーブするようになった。指先にすくってクルクルと巻き込めば縦ロールすら可( 注2)になった。


 そして──いつしか私の前髪もまた、かの大佐のように耽美に顔に掛かるようになっていたのである。


 これを呪いと言わずして、何と言おう。言葉には“言霊(コトダマ)”というものが宿るのだ。

 あのとき、余計なことを言わなければ……私の前髪は未だ、ストレートなままだったのかもしれない──。







         ↓耽美(タンビ〜)な前髪

挿絵(By みてみん) ※イメージ

       ↑

      赤いスカーフ


注1 富山では「ナニ」は「ナン」と発音されることが多い。「そうなの」は「そうなん」、「違う」は「なーん」である。猫語でもフランス語でもない。方言である。 


注2『クリスタル☆ドラゴン』で幼き日のアリアンロッドにレギオンが「巻毛はこうやって整えるのだ」と言って縦ロールを作ってあげたシーンを連想してくださるとニュアンスが伝わるかと……。

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