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【荒れ地】で育った嫌われ者のDランク冒険者は拾遺者《ダイバー》として今日も最下層に潜る  作者: 嵐山 紙切
第二章 魔女の森編

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第39話 おい骸骨、あれ知り合いじゃねえのか?

「おい骸骨、あれ知り合いじゃねえのか?」


「知らないな。そもそも私の友人は男だ」


 

 じゃああれは他の奴隷の一人だろう。



「ぶった切っていくしかないだろうな。それに知りたいこともある」


「知りたいことってなんです?」



 ライラは俺が作った防御魔法の中で尋ねる。



「身体がどれくらいで再生するのか、どれだけ破壊すれば戦闘不能になるのか」



 俺が言うと、骸骨野郎は思い出すように思案して、



「私の体感だと腕だけ切り落とされたくらいなら数分だったが、木っ端微塵になったときは……さすがに解らないな」


「じゃあ今やってみるしかないな」



 俺が駆け出すと向こうも動く。


 その顔に表情と呼べる物がないのは、のっぺりした見た目だからか、それとも感情まで完全に囚われ、支配されてしまっているからなのか定かではない。


 真っ赤に光る目だけがぎょろぎょろと動いて、俺を捉え、剣を構えて突撃してくる。


 彼女の剣速はそれほど速くない。


 いや女性にしては速いほうなのだろうか?

 解らない。


 こういうところで人を見ていないと言われてしまうのだろうなと思う。


 適当に躱すと、彼女の両腕を切り落とす。


 まったく抵抗がない。


 お前の腕、バターでできてんのか?


 黒いバター。

 腐ってんのかな?


 こいつが魔物なら腐ったバターがドロップしたかもなとか思いつつ、続けて、首、胴体、足を斬る。


 元は人間だったと言っても、こう、斬った場所から真っ黒な霧のような物を出して、悲鳴も上げずにいられるとまったくそんな気がしてこない。


 まるで切り口から身体があふれ出すように、木っ端微塵にしなくてもその体は真っ黒な霧へと変わり、その場に球体を作り上げてとどまった。


 ここからどのくらいで元に戻るかだな。


 鎧やら剣やらの類いは地面に山になっていて、球体はそこへ徐々に動いて、もぐり混んだ。


 スライムみてえだな。


 もこもこと動きながら子供が大人の服を着るように出口を探すように鎧が動いている。


 俺は少し離れて見ていたライラたちのところに戻って一緒に観察することにした。



「どのくらい経った?」


「うーん、数分ですかね。西日のままなので時間経過が解りづらいんですよ」



 ライラは天井を見上げて言う。


 

「私も木っ端微塵になったらあんな風になっていたのか」



 骸骨野郎は思いのほかショックを受けているみたいだった。


 それからしばらく観察していたけれど、なかなか元の姿に戻らない。


 一応徐々に身体らしき物を作り出しているけれど、戦闘できる姿にはほど遠い。


 これなら脳筋魔剣術が効かなくてもだいぶ時間は稼げそうだな。


 いまだにもこもこと動く影のそばを通って先に進む。


 骸骨野郎がそのそばを通ったあたりでふと思いついて、俺は尋ねた。



「そういえば、その『聖遺物』で影を斬れば奴隷契約は解消されるんじゃないのか? 呪いを弾くんだろ?」


「いや、そううまくはいかない。私が弾けたのはあくまで契約自体を拒否できたと言うだけに過ぎない。すでに契約している場合はこの『聖遺物』では弱い。もっと強いものなら解らないが」


「ふうん」



 奴隷契約の呪いは結構強い物らしい。



「あ、じゃあ……」



 ライラは言って俺を見ると、



「シオンさん、この防御魔法一時的に外してください」


「何で……ああ……気をつけろよ」


「はい!」



 俺は彼女の周りにドーム型に作っていた防御魔法を外す。


 ライラは恐る恐るではあるが人になりかけている鎧を着たもこもことした黒い物体に近づいて行く。



「ライラたん! 何してるんだ!? 危ないからこっち来なさい!」



 骸骨野郎が叫ぶが、俺は彼の肩を掴んで「しっ」と黙るように指示する。


 戦闘時、俺が最初に腕を切り落としたせいで剣はかなり離れた場所にある。


 もしあの黒い物体が攻撃に転じても、すぐに斬られることはない。


 ライラは影に手が届く場所まで来る。


 真っ赤な光る目が黒い身体の上の方に来て、頭のあたりでぎょろぎょろと動いている。


 ライラはゆっくりと手を伸ばすと、

 その頭に触れ、撫でた。


 瞬間、

 黒いからだがビクッと震えて、頭以外の部分でなめらかだった表面がとげとげしくざらついて、そして、収まる。


 真っ赤に光っていた赤い二つの目が失われる。


 ただの真っ黒な物体に変わってしまったかに思えたが、しばらくしてぱっと二つの光が灯った。


 二つとも、青だった。



「やりました!」



 ライラはぱあっと顔を輝かせて、こちらを振り向くと、影の頭をもう一度、スリスリと撫でて、それから戻ってきた。


 黒い影はライラを追うように青い目を向けたが、その体がまだ完全ではないからだろう、追いかけてくることはなく、また身体を元に戻す作業に戻った。


 ライラは、その手で、いとも簡単に奴隷契約の呪いを打ち砕きやがった。


 影が持っている二つの青い目はもう俺たちを睨んでなんていなかった。




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