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婚約者に愛されない悪役令嬢が予言の書を手に入れたら  作者: 山田露子 ☆ヴェール小説4巻発売中!
side-B

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45/98

45.またしても久我奏!


 嵯峨野重利の客室前に着いた桜子は、カードキーを挿し込み、鍵を開けた。


 そのまま扉を押し開こうとしたところで、斜め後ろから伸びて来た手が、桜子の手に重なる。


 やましいことを今まさにしようとしていた瞬間に、死角から手が出て来たのだ――心臓が止まるかと思った。


 重ねられた手の甲から、相手の二の腕、肩、顔と滑るように視線を上げていく。


 ――ああ、もう、またしても久我奏か!


 それにしても、とんでもない至近距離だ。


 今視線の高さが同じなのは、相手もドアノブに手をかけていて、自然と前かがみになっているせいだろう。こちらが高いヒールで底上げしているとはいえ、相手のほうが背はずっと高いのだから。


 奏が瞳を細め、囁くように問う。


「ここで何をしている」


 何を、って……そんなの正直に答えられるわけがない。


 顔を顰め、浅く呼吸を繰り返す桜子を、冷静に見つめる奏。情けをかけて解放する気はないらしい。


「……おい、日本語喋れないのかお前」


「喋れるわよ、失礼ね」


 動揺を隠すため、奏を睨みつけてやる。本当に忌々しく感じているから、目力はかなり強くなっていると思う。


 するとなぜかこちらを見つめる奏の口元に笑みが浮かんだ。


 理解不能……なんなの? 訳が分からないわ。


 この男は女子に軽蔑されるのが好きなのかしら? もしかして変態?


「何を考えてる。どうせ失礼なことだろう」


 野生の勘なのか、こちらの心中を言い当ててきたので、この時ばかりは桜子も素直さを発揮して、心のままに告げてみた。


「あなたって変態? って考えてた」


「……一応確認するが、変態の意味は正しく理解しているよな?」


「ええ。変態って性的倒錯者のことでしょう?」


 どういう訳か奏は盛大にダメージを受けたらしい。


 そっと身を起こし、頭痛をこらえるように額を手で覆っている。


「大丈夫?」


「変態とか言うなよ……ひどくないか? 俺、何もしていないぞ」


「ごめんね。根が正直で」


「この女」チ、と舌打ちする久我奏。「それで……お前が元町悠生の取った部屋に入ろうとしているのはなぜだ」


 ……ん? 思わず眉根を寄せる。


「ここは元町悠生の部屋じゃないでしょう? 嵯峨野重利の名前で予約してある」


「キーは元町悠生が受け取っているだろ? つまりこの部屋は元町悠生が使うってことだよ」


「え?」


「面倒事を押しつけてくるボスの金で、ホテルに女と泊まる――悪知恵の働く小悪党がいかにもやりそうなことだ」


 なるほど……! その発想は桜子にはなかった。


 確かに言われてみると、そのとおりかも。


 元町悠生と嵯峨野重利は誠意で繋がっているわけではない。互いに利用し合うという関係だから、仲違いせずにやっていられるのかもしれない。


「さっすがぁ、女たらし同士だから、考えも分かるんだね」


 素直に褒めたら、嫌な顔をされた。


「あんな三下さんしたと一緒にすんな、俺はそんなケチな真似はしねえ。――で? 元町悠生でも、嵯峨野重利でもいいが、お前はなんでここにいるんだよ」


 ああ、そこに話が戻るの? 面倒だな……うんざりしかけたところで、奏を追い払う言い訳を思いついた。


「あのね、男性の部屋に女性が入ろうとしているのだから、理由は決まっているでしょう? 私がキーを持っている時点で、察してくれない? これ以上邪魔しないでよ」


 奏が鼻で笑う。


「おい、冗談は休み休み言えよ。時間の無駄だ、とっとと吐け」


 え……何この人……すごく嫌な感じ。



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