表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約者に愛されない悪役令嬢が予言の書を手に入れたら  作者: 山田露子 ☆ヴェール小説4巻発売中!
side-A

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/98

18.そのうち嵐が到来するかも?


 仮面舞踏会を明日に控えて、学園全体がソワソワしている。


 ――着ていくドレスは? 合わせる靴は? 髪のセットは? 仮面のコンセプトは?


 こういう遊びは自己プロデュースが上手いか下手かで成否が決まるから、皆、細かい部分にまで本当に気を遣う。


 といっても別に義務感から嫌々頑張るわけではなく、単純に衣装選びが楽しいからこだわってしまう、というのが大きいのだけれど。


「衣装、決まった?」


 女の子たちは顔を合わせれば、挨拶代わりにそんなやり取りをする。


 前日なので、ほとんどの子はすでに決めているはずだ。


 この問いかけの意図は、


「もちろん決まっているけど、あなたはどうなの?」


 と尋ね返してもらうためであり、


「実は新しいドレスを買ったんだよね!」


 結局これを言いたいがための、会話の呼び水なのである。


 綾乃がもし「衣装、決まった?」と尋ねられたなら、「当日の気分で決めますわ」と答える。


 これは本当よ。芸術家気質なので、当日のフィーリングで決めたいのです。


 そういう会話を交わすのは嫌いではないのですが、誰も「衣装、決まった?」と尋ねてくれません。


 ……なぜかしら。


 皆もっとフランクに質問してくれていいのに。いっぱい答えるのに。


 アドバイスとか、ただでしてあげますわよ? そういうの得意です。


 だけど誰も悪役令嬢には質問してくれないの……。




   * * *




 ところで。


 本日、新しい予言の書が届いた――記念すべき二冊目だ。


 届いたというか、前回同様、ロッカーに放り込んであったのだけれど。


 今度のは冊子が薄いので、そのうちすぐに三冊目が届きそう。


 一冊目はかなり詳細な内容だったのに、二冊目をざっと流し読みしたところ、わりと薄めの内容だった。


 薄めなのだけれど、妙に不安を煽ってくるのは、相変わらずというか……。


「危ないから、気をつけて!」という警句が妙に多い。


 ちなみに一ページ目には、こんなことが書いてあった。


 :::⁑:::⁑:::⁑:::⁑:::⁑:::⁑:::⁑:::⁑:::


 リニューアル~!

 お久しぶりね、いかがお過ごしかしら?

 首尾は上々、なんて、もしかして甘いことを考えていたりする?

 全然、まったく、そんなことないからね。

 まだ状況は一ミリたりとも良い方向には進んでいないよ。

 気を引き締めていきましょうね!

 それで早速だけれど、今日の出来事を予言しておきましょう。


 ――あなたはとんでもないトラブルに巻き込まれつつあります。


 でもさ、今現在、あなたの周辺は無風状態でしょ?

 危険の『き』の字もないんだけどー、なんて思ったでしょ?

 違うんだなー。

 あなたが今感じている平穏って、まやかしだからね。むしろ台風の目にいる――そう考えて。

 平和なのは今だけ。もうね、周囲をグルグルに囲まれちゃってるよー。脱出は難しそう。

 そのうち嵐に巻き込まれますから、心にしっかり防寒着を着込んでおいて!

 凍えるような出来事が待っていますからねー。

 じゃあ、頑張って!


 :::⁑:::⁑:::⁑:::⁑:::⁑:::⁑:::⁑:::⁑:::


 難しい顔で予言の書を閉じたところで、こちらに歩いて来る夏樹の姿に気づいた。


 ……嵐に巻き込まれるって、このこと?


 夏樹の顔色をこっそりと窺ってみるが……ポーカーフェイスで気持ちを読み取れない。心臓がドキドキしてきた。


 ……どうしよう? 逃げたくなってきました……。


 さっと周囲に視線を走らせ、現状を確認――結果、自身の迂闊さに絶望することになった。


 ああ、私ってお馬鹿さんかもしれません……!


 中庭という見晴らしの良い場所で、ベンチに腰かけているだなんて。


 この状況で今すぐ立ち去ったら、夏樹を見て逃亡したのが丸分かりだわ。


 せめてこれが人の多い場所だったなら、あとで夏樹に「僕を見て、逃げた?」と責められても、「あら、気づかなかっただけですわ。大体、私が夏樹を見て逃げるわけがありません」と言い逃れられるのに。


 彼――やって来ていきなり、別れ話とか切り出さないですよね?


 それとも、このあいだのことかしら。


 うう……車で寝てしまった件を思い出すと、変な汗が出てきます。


 先日、姉が深草楓に調理実習で作ったマフィンを手渡すことになった、例のイベント――夏樹の家の車に乗る破目になったのは、あれが原因だった。


 綾乃は姉がマフィンを渡すところが見たくて、あの日高等部に見学に行き、それを夏樹に見咎められた。そして放課後、紫野家の車に乗せられたのだが……夏樹から尋問(?)されているうちに、緊張が度を超してしまい、車中で眠ってしまったのだ。


 そのおかげで、あの場はなんとか乗り切ることができたのだが、彼はあの件でまだご立腹かもしれない。どうしましょう……これから怒られたり、とか?


 ……詰んだかもしれません。


 好きになったほうが負けとよく言いますけれど、あれは真理を突いていると思います……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ