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9おっさん、クソ生意気な貴族をわからせる

「そこまで言うなら、決闘でカタをつけましょう」


「お、俺はただ、無相応な者にしつけを! それにアリス様と決闘なんかしたら、頭を掴んで、ギリギリ捻り切って、頭を床に投げつける位のことをするでしょう?」


そう、言いながら、回れ右をして逃げ出そうとする。


「あら、私の挑発を聞くなり、逃げ出そうとするとは何事ですか? 私はこれでも恥じらう乙女なのですよ。酷い言いようだとは思いませんか? もう一度言ってごらんなさい。普通、言うわよね? 言うわない? 言いなさい! ……言え!」


「い、いや、アリス様に勝負を挑むようなことは。俺はただ、この卑怯で貧相な盗賊風情に何か弱みを握られてられとしか思えなくて、我慢がならなくて! それに俺はアリス様のことがぁ!」


お嬢様は優雅に髪をかき上げると。


「おっさんに勝ったら、あなたと婚約してあげてもいいわ、でも、もし負けたら切腹しなさい」


「え? それはつまり……俺との婚約を承諾? ようやく俺の良さがわかってくれた?」


すると、お嬢様は虫を見るかのように冷たい視線をこの愚かな男に向けると。


「──このおっさんをボコボコにできたら、ね」


「ッ!!」


お嬢様の言葉に何故か男は歓喜している。


これは多分あれだ、そうとう弱いヤツだ。


「さあ、盗賊め! いい加減にしろ!! どうせセコイ手段でアリス様の弱みでも握ったんだろ!! 今、ボコボコにして身の程を叩き込んでやる! いい気になるにも程があるだろうがぁッ!!」


さっきまでと打って変わって、口角を釣り上げて嗜虐心をたたえ、歪んだ顔は見苦しい。


「決闘用の魔術結界の魔道具はセットしたわ、さっさと始めてちょうだい」


お嬢様が涼やかな声でそう言うと、一陣の風がふいた。


ふわりとお嬢様のスカートがめくれて、白とブルーの縞柄のパンツが露わになる。


俺は不覚にも、お嬢様のパンツに心を奪われてしまった。


仕方ねぇだろ!


普通、見るだろ?


逆に目を逸らせるのは賢者だけだろ?


魔力の気配がして、周囲の空間が歪む。


結界ができたみたいだ。


「盗賊風情がなぜアリス様にかかわったのかは知らんが、アリス様にいいよるなどと、本気でやっていること自体が不愉快だ! 貴族である俺がわからせてやる!!」


俺はパンツに気を取られて、よく聞いていなかった。


こんな時に何言ってんだ?


「俺はこの国最強の魔術師だ。魔法の神髄を教えてやろう、俺様の名は煉獄のシュレン、てめえを丸焦げにしてやる!」


「えっ!」


俺は困惑した。お嬢様は、一旦ふわりと浮き上がったスカートが元に戻ってるのに……少しづつ……少しづつ、自らの手でスカートの裾を持ってずり上げ始めた。


……露出が増えていく健康的な太もも。


「求めるは、煉獄。荒れ狂う炎の精霊は、その胸を掻かきむしり、その瞳を赤く染める。膨れあがれ炎よ! 加速する炎よ、燃え尽きた灰は、天より注ぐ!?」


俺はお嬢様から目が離せないけど、なんか魔力を検知したから、なんとなく魔力を消しておいた。


なんか呪文が聞こえたような? 男をチラリと見ると、魔法はプスプスプスと小さな炎がちろちろと燃えただけだった。


「えっ? 魔法が不発だとか、お前、ちょっと勉強がたりねぇんじゃねえか?」


「お前! 何をした! この卑怯者!!」


は? 卑怯? 勝手に魔法を失敗しておいて、何言ってんだコイツ?


「お前、ただものじゃないな? お遊びはこのくらいだ。こうなったら、俺の魔法の神髄、無詠唱魔法を見せてやる!」


「ああ、えッ!」


お嬢様はとうとう見えてはいけない布地を露出し始めた。


ほんのちょっぴりだけ、ちらっとパンツが見える。


チラパン、丸見えよりエロくないか?


「ふっ……ここまでの魔法を見せる気はなかったんだが、もういい。本当は軽い火傷をさせる程度で許してやる予定だったが……お前には惨めに大火傷をおってもらうことにしよう――《煉獄斬-撃-》!」


男は何か言ってる。


だが、俺の周りに炎の魔法が展開した。何の魔法か分からんが、弱そうだ。


「何だこれ? こんなんでどうするつもりだ?」


俺の周りに炎の魔法が現出し始めたけど、あまりにも威力が弱そうだから、手でバタバタとしてかき消そうとした、だが。


!?


お嬢様はとうとうスカートを全部たくし上げてしまった。


当然丸見えで、自身でスカートをたくし上げたのが恥ずかしいのか、顔を真っ赤にしている。


俺は慌てて周りを見た。


幸い、周りの学生は俺と、この男の方を見ていて、お嬢様のパンツには誰も気がついていない。


「てめえはもう終わりだ!」



男が勝ち誇った言葉を叫ぶ。……は? 終わりだって言っても、もう炎の術式が完成しているし、そんなに熱くねえですぜ?


その時、周りに炎が突然出現した。


炎が出現したとたん、炎が黒く変色し、俺の体を勢いよく包み込みやがった。


「丸こげになりやがれ!!!」


「えっと? 突然大声上げやがるからびっくりしたじゃねぇか?」


全く、お嬢様のパンツを堪能しようとしていたのに、なんて邪魔しやがる?


男は信じられないものでも見るようにこちらを凝視していた。


気がつくと周りの学生達もみなもぽかんという顔をしていた。


「えぇ? お前、それって……炎の最上級第一位階魔法なのに?」


は? 嘘つけ。そんなの、この国の最高峰の魔法使いしか使えない上、こんなに威力弱いわけねえだろ?


「は? お前、嘘つくんじゃねぇ、これ、また魔法失敗したヤツだろ?」


「し、失敗って? えぇ? ちゃんと発動しているのにおかしい。いや、そもそもなんでお前は普通に生きているんだ? そんな状態で?」


「別にちょっと熱い位だけど」


「えぇ……?」


男は困惑して、意味が分からないとでも言いたげな顔で俺を見る。


「そういえば、いつまで炎に晒されてんだ俺?」


俺は手をバタバタとかき乱して炎を消した。よし、消えた。


今は夏だぞ。こんな季節に炎の魔法を使うとか、なんてあくどいヤツだ。ちょっと暑くなってきたじゃないか。汗をかいたらどうしてくれる? 盗賊は頭脳派で肉体派じゃないぜ。


「あ……ありえない! 俺の《煉獄斬-撃-》 を手でかき消すのだなんて!! お、お前、伝説の第一位階の炎の魔法すら無効にする魔道具を付けているのか? それ以外に考えられない!?」


俺はめんどくさいから、殴った。


ドゴォォォォォォォン!!

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