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わかりやすさの意味(その5)~矛盾に満ちた『属性』~

本日も拙作をお読みいただきまして、ありがとうございます。


 前回はキャラクターに与えられる『属性』の一つとして、お話の中でキャラクターが正当性と自信をもつ根拠となる、正義と悪、敵と味方の設定について考察を述べてみました。

 ……いささか『属性』からはみでた気もしますが……。

 そこを挽回すべく、今回はその他の『属性』について見ていきたいと思います。


 『属性』には大きく分けて三種類あると筆者は考えています。

 一つは種族的なもの。

 異世界恋愛もの系でよくあるのが、獣人のツガイ設定。

 これは、『真実の愛』と相性がいいらしく、獣人に〔溺愛〕〔ヤンデレ〕などの属性も付加しやすくなるわけです。

 たいてい獣人は人間より身体能力が高い的な設定があるようですが、それに加えて竜人など高位の獣人になればなるほど、知的にも優れ、外見も美しくなり、さらに経年劣化しづらい長寿種族になるなどの設定が盛られるため、『スパダリに生涯溺愛されることが決定済のハッピーエンド』などのテンプレともよく結びつくようです。


 ……個人的にはこの獣人のツガイ設定って、動物の発情期の求愛行動のイメージで作られたのかなと考えています。

 そのせいで、ツッコミが先にきてしまうのですよ。

 発情期ではない時期には塩対応に戻るんじゃないのかとか。

 個体で活動する系の肉食獣な獣人だと、塩対応通り越して殺されかけるんじゃないのかとか。

 そもそも発情期ならパートナーが入れ替わろうがかまわずウェルカムになるんじゃないのかとか。

 昆虫系獣人――矛盾した表現ですけどイメージしてもらえますかね?――だったりすると、逆に女性に食い殺される覚悟ガンギマリでの求愛行動が発生するんじゃないかとか。


 むしろ『真実の愛』とかで掠われてった先で、そういうドタバタに巻き込まれるお話とか読んでみたくなりますね。ハッピーエンドのその後、的な。

 いやそんなニッチ作品、読みたいんなら自分で書けよというやつですが。

 

 話を『属性』に戻します。


 もう一つの種類は、性格的なものです。

 前回上げた〔オレ様〕〔正義漢〕のように、絶対的に自分が正しく、あるいは自身の主張こそが正当性を認められて当然だとするもの。自身を正義の側に立つものとして、自身の正義の基準によって他者を悪とみなす価値基準を含むもの以外にも、性格的な『属性』は〔脳筋〕〔腹黒〕〔わんこ〕などさまざまなものがあります。

 しかも種族的なものと異なり、一人のキャラに重複して与えられることもありますね。

 やりすぎると設定過積載でいろいろ取れないものが出てきたりもします。

 ええ、主にバランスとか、つじつまとか。 


 最後の一つは、人間関係的なものです。

 よくあるのが〔兄/姉〕とか、〔弟/妹〕という『属性』。

 こちらは性格的なものと異なり、重複することは少ないように見えます。

 が、キャラクターの外見に左右される割合が高いので、外見が幼児でも中身がン百才という、いわゆる〔ロリばばあ〕や〔ショタじじい〕系も含めてもいいでしょう。

 これらは年齢設定からくる外面と内面の乖離を埋めるために、エルフなど長寿で不老に近い、などの種族的な『属性』と重ねてぶっこんできたりもしますね。


 この人間関係的な『属性』こそ、筆者が最も興味を持ち、そして疑問を抱く対象であったりします。

 

 例示したように、この人間関係は疑似的な家族を構成します。

 最も多いのが兄弟姉妹。

 たまに母親もありますね。いわゆる『おかん属性』というやつです。

 ただし。そこには複数の欠落があるように筆者には思えるのです。


 わかりやすいものの一つが、人間関係的『属性』としての父親の不在です。

 『おかん属性』という言葉はあっても、『おとん属性』って言葉を筆者は知りません。

 使われている作品をご存じの方は、ぜひとも教えていただきたく(以下略)。


 また、これらの人間関係的『属性』と、キャラクター間に設定された人間関係との乖離についても大きな疑問を感じずにはいられません。

 きわめて逆説的になるのですが、『おかん属性』の持ち主が『おかん(母親)』であることはほとんどなく、また『おかん(母親)』なキャラ(登場人物)が『おかん属性』の持ち主とされることはないのです。


 そう、すでに人間関係――特に主人公層との結びつきが――構築されているキャラクターたちに、その人間関係設定とかぶる『属性』を指摘されることはありません。


 例を挙げましょう。

 『おかん属性』と言われるキャラクターと主人公層との年齢差はどのくらいでしょうか?

 同級生だったりやや年上だったりと、あまり年が離れていないのではないでしょうか。

 同級生の親的な年齢差が設定されたキャラクターに母性的な表現がされていても、『おかん属性』という言葉が使われた例を筆者は見たことがありません。

 そのくらいのキャラクターだと『面倒見がいい』という表現になったり、幼馴染みぐらいの主人公格キャラとの距離が近い相手だと、おかんという表現のかわりに『世話焼き』という表現が当てられることもあります。


 『属性』という言葉の辞書的な意味は、『一般にあるものに共通して備わっているとされる性質や特徴』の事です。

 つまり、『母親』であれば『おかん属性』の持ち主であって当然だから、あえて表現しなくてもそれは自明の理として認識されている、ということになるのでしょう。

 しかし、母親だからといって母性があるわけじゃないというのは、以前にも拙文で述べたとおりなのですが……。


 では、この『属性』――どんなに大人びた口をきいていても、幼女な外見で評価され庇護対象とされるのじゃロリを含むロリばばあ系キャラのように、実際にはあり得ないほど過剰に付加することでキャラクターを特徴づけ、物語の中で設定されている本来の人間関係とはまるで異なる疑似的な家族構成により結びつけあうこともの――を多用することで、物語の構成にはどのような影響があるのでしょう?

まだまだ終わらんぞ(こら)。

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