Episode 1
僕は岡崎 光。都内の高校に通っている二年生だ。
僕は今まで普通の高校生だった。
だが、その生活はある日を境に一変する。
その日の朝、僕はいつも通り目を覚まし、登校の準備をし、朝食を済ませて出かけた。
通学中、僕はスーツ姿の男性に声をかけられた。
「岡崎 光くんだね?」
「はい?」
見知らぬ男に、素っ頓狂な顔で疑問符を浮かべる僕。
「私はこういうものなんだが……」
男が名刺を渡してくる。
防衛省侵略対策課、新庄 亘。
「防衛省? 外星人侵略対策課?」
防衛省というのは構わない。だが、外星人侵略対策課というのはどういう冗談だ?
外星人なんて、僕は見たことも聞いたこともない。いるのなら目の前に出てきてほしいものだ。
「地球は今、外星人による侵略の危機に曝されていてね。なんとかしたいと思っているんだ」
「外星人だんなているわけないでしょ。頭沸いてんの?」
男は眉間に青筋を立てる。
「初対面の人にそう言うこと平気で言う君こそ沸いてるでしょ!」
「ぎゃあぎゃあうるさいよ。僕にあなたの妄想に付き合ってる暇はありません」
「妄想じゃないんだよ。本当に狙われてるんだ」
「その話が事実だったとして、どうして高校生に声をかけるんですか? 内々で済ませればいいでしょ? てか、僕の名前どうして知ってるんですか?」
「君、養子なんだろ?」
「え……」
「確か、赤ん坊のころに川の袂に捨てられてるのを拾われたんだったな」
「どうしてそれを? まさか、あんた実の父親——」
「ふはは、君は宇宙船に乗って地球にやってきたんだよ」
「はあ?」
「面白い動画を見せてあげる」
タブレット端末を取り出し、動画を再生する男。
ポッドのようなものが飛来し、川の袂に墜落した。
「我々の調査で君はオリオンの方から来ていることがわかっている」
「ウルトラマンかよ?」
「それは違うが、宇宙観測所に調べてもらったらその方角に生命が存在しそうなもう一つの惑星があった」
「……?」
「我々はその星にウルトラの星と名付けた」
「ウルトラマン言いたいだけじゃねえか!」
「ま、それは冗談だがな。実際は惑星チャンサーという。海外のチャンサーという宇宙考古学者が名付け親だ。そう言うわけだから、君には地球を護る戦士になってほしい」
「第一、僕は高校生ですし、そもそもそんな荒唐無稽な嘘は信用できません。宇宙船の墜落も、どうせ特撮なんでしょう?」
「あれを見ても、か?」
「え?」
「きゃああああ!」
女の子の悲鳴。
振り向くと、女の子が怪人に襲われていた。
「き、着ぐるみだろ……?」
怪人が女の子に火球を吐き出す。
「と、トリックだ! 口の中に火薬を!」
女の子が火球をかわすと、次は怪人が鋭く尖った爪で女の子を襲う。
どうせ最近流行りのドッキリかなんかだろう?
ほら、ドッキリGPとか、それっぽい演出だろう?
そんなこんなで、女の子の首が跳ね飛んでしまう。
「ドッキリでこれはやりすぎだって! これじゃ殺人だ!」
「わかったか? 今、あの怪人たちが地球を乗っ取ろうと、暗躍しているのだ」
「そんな馬鹿な!?」
「どうする。戦士になるか?」
怪人がこちらに気づき、ゆっくりと迫ってくる。
「あの怪人が着ぐるみじゃないことはわかった。どうしたらいい?」
「ほい、来た!」
スーツの男がリモコンを取り出して押す。ポチッとな。
すると、上空から端正な顔立ちをした黒長髪の女の子が急降下でやってきて着地した。
「君のために特注した人形装甲だ。装着してやつと戦え」
「はあ!?」
「大丈夫。これを着てれば死なない」
スーツの男は女の子の背中のハッチを開き、僕の体を押し込んだ。
「善は急げだ」
「ちょ!?」
ハッチが閉じられる。
「待ってください! 僕にはできません!」
ん? 今、女の子の声が出たような……。
「来るぞ!」
怪人が僕に襲い掛かる。
僕は咄嗟に飛び退き、攻撃をかわした。
「うわああああ!」
背中を向けて逃げ出した。
「逃げずに戦うんだ!」
「そんなこと言われたって!」
僕は怪人から必死に逃げる。
「殺されちゃうよおおおお!」
「言っただろ! それを着てれば死なないと! 勇気を出して戦うんだ!」
「でも!」
何かに躓き、僕は転んだ。
「うわ!」
体を捻り、怪人を見る。
怪人はニタニタ笑いながら、鋭い爪を撫でる。
死ぬ。そう覚悟した刹那、腕が勝手に動いて僕に迫る鋭利な爪を受け止めた。
「男のくせに逃げるだなんて、とんだチキンね」
今度は勝手に口が開いて声が出る。
「僕に戦いなんて無理だよ」
「だったら私がやるから見てなさい」
怪人を押し上げ、横へ蹴り飛ばす。
「ぐぎ!」
怪人は塀へと突っ込んで倒れた。
すっくと立ち上がり、空中へ飛び上がる僕の体。
「これでもくらいなさい!」
右手を怪人に向けて突き出し、光線を放つ。
光線は真っ直ぐに怪人へ飛んでいき、クリーンヒットした。
「ぎゃああああ!」
怪人は悲鳴を上げながら爆裂霧散をする。
僕はことりと地面に着地した。
「ええ……」
「やればできるじゃないか!」
と、スーツの男。
「いや、これ僕じゃないんだけど」
「何を言ってるんだ」
「光じゃないよ」
「え?」
「私はオートパイロットよ」
「オートパイロット?」
「搭乗者が戦えない時に自動で戦闘するシステムよ」
「なるほど、そういうことか」
背中のハッチが開き、僕の体が女の子から離脱する。
「それじゃ、私は行くわね」
女の子は空の彼方へ飛び立った。