巨木の樹海にまつわる野菜 ① フィアキャロット
巨木の樹海にまつわる野菜 ① フィアキャロット
フィアキャロットは、走るニンジンとして知られる「食べられる」の植物魔獣です。
巨木の樹海「魔獣深森」の産で、浅い土地(辺縁)の目立たない場所に生えていて、急に引っ張られたり近くで大きな物音がすると、自力で土から出て、その場から逃げ出してしまいます。
臆病?に逃げて非力ですが、タフな生命力があるらしく。逃げた先でふたたび地面にもぐって住みついたり。外敵に砕かれたからだが土にうもれて、小ぶりなフィアキャロットが生じることがあるそうです。
しかし、魔の樹海の外の土地で人の手で育てようとしても、なぜかうまく行きません。
(関連のモンスターコレクションの記事も参照)
✔料理
走るニンジンは、はじめて見る人に気味悪がられたりしますが、非力で危険はなく毒もありません。
珊瑚〜橙色の根部は滋味豊かで、生でもスティックにして美味しく食べられます。樹海のハンターたちに遠征食として親しまれていて、わずかながら薬効もあり。具たくさんのスープ一皿は、疲労の回復を早め、病気や怪我の治りをよくします。
魔獣肉の関連産業のさかんな土地は、引退したハンターが多く住んでいて。仲間内の集まりの話題づくりや、病気や怪我の療養食のためにわざわざ痛みの早いこのニンジンを採ってきて、『フィアキャロット入り魔獣肉シチュー(あつあつ)』をつくることがあります。
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SS とある樹海遠征の実食風景
※『剣士は初めてニンジンと出会う(作者NOMAR)』のラストシーンから。
女ハンター
「フィアキャロットを細長く切って〜 串を通して【ズ•ぷっ】焼きまーす」
剣士クシュ
「むう……」
女ハンター
「中まで火を通すとォいっそう甘味がでるの。あたしは、こうしてシンプルに焼いて食べるのが好きだなー」
剣士クシュ
「な、なるほど……」
女ハンター
「はい、焼けたよ、クシュさん」
男ハンター
「こっちもできたぞ。フィアキャロットのゴロゴロシチュー」
剣士クシュ
「うむ……、いただこう」
『走るニンジン』は、はじめてみると不気味である。剣士クシュは大陸中央の出で、はじめはやはり違和感をいだいた。
ハンターたち
「まぁ、すぐになれるさ! 」
「食べず嫌いは損だよ!」
だが、気のいいハンターたちはちょっと誤解していた。見なれると、あれ?こいつ可愛い… と。フィアキャロットを見直すものもいるのだ。
剣士クシュ
「……、うまい」
大陸中央で最強と謳われた剣士がいた。
かれは訳あって野に降ると、辺境の土地でさまざまな経験をつんだ。ゴブリン討伐後の、この夕餉はそのひとつ。
ちょこまかと逃げる、どこか可愛い植物魔獣。
クシュはのちに、このときのフィアキャロットの料理はとても美味しく、かなり複雑な気分で食べ終えた、と、回想した。
欄外スピンアウト集
『剣士は初めてニンジンと出会う』
作者;NOMAR
URL https://ncode.syosetu.com/n4627ff
モンスターコレクション
第4時限目『フィアキャロット』
URL
https://ncode.syosetu.com/n3634gg/63/