「なんでもやるから好きなように使ってください」って何?
でまかせをペラペラ言って、少しおかしくないか。
そんなことを言うはずがない。
賢治は、エンジニアとしての腕に自信があった。大抵のものならチョチョイのチョイとプロトタイプを作り上げてしまう。webの掲示板にも技術投稿して、いいねが数百ついたりしていて、少し調子に乗っていたくらいだ。
そんな賢治も、現場に売り込まれる日が来た。その現場は、技術的に困っているとのことだった。賢治は、困ってるなら解決してあげてもいいなと思っていた。
しかし、自分が思っていたのとは全く違うことに賢治は気付いていない。
実際には現場は困っていない。むしろ人が余っている。でも営業が、どうしても働かせてくれ、なんでも言うこと聞くから、と言って現場に勝手に売り込んでいるだけなのだ。
現場に参画した後、「なんだかおかしいな」と思い始めていた。
困ってる割には、能力ある技術者に対しての接し方が雑だし、奴隷のようにこき使っている風でもある。
勢い勇んで参画した賢治が最初にやらされた仕事は、コピー取りである。しかも、上から目線で仕事させてやるという感じで命令を受けた。
一日中1000枚くらいコピーしてひたすらホチキスで留めていた。なにかの会議で配る資料らしい。