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エンジニアの世界で彷徨う
エンジニアの世界は魑魅魍魎が跋扈する経済戦争の世界だ。この世界はこれからグローバルに混濁する。
「エンジニアの供給量など心配する必要はない。ぺんぺん草のように踏みつけても踏みつけても市場に出てくるのさ。」
「スクールから、後進国からもどんどんやってくる。心配いらんよ。」
うつ病で退職したエンジニアを、心配していた正樹は、部長兼取締役である不適男からこう諭された。
なんだか物みたいな扱いだが、どこでもこんなものだろう。だいいち、あのやめたエンジニアの名前も知らないのではないか、この人は。
あいつも言ってたよ。
「自分のオフィスを掃除しているおばさんの名前を言えますか?わからないでしょ。君はそれと同じなんだよ。君の名前なんて誰も知らないし、いつ来ていついなくなっても誰も気づかない。」
それがエンジニアなのだ。