3話 旅立ちの朝
気がついたらいきなり10年経ってた。
「おはようございます、ヴィクト様」
「あぁ、うん、おはよう」
「本日のご予定に関してですが……
心停止事件から10年の月日が流れ、今日で俺は10歳だ、つまり今日は誕生日…ではなく日本で言うところの元旦。この国では、年の始めを迎えた数で歳を数えるので誕生日にさほど重要性はないのだ。そして、10歳になったおれは明日王都にある学園の入学式を受けることになるらしい。その際簡単な能力測定があるとか。
「では、失礼致します」
「うん、ありがとう」
そんな風に聞き流していると、側付きのメイドが部屋から出ていく。
「さて、朝練を始めますか」
俺は足音が聞こえなくなるのを確認してから部屋を覆う様に防音結界と魔力を隠蔽する結界を張った。
「まずは、ステータス!」
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ヴィクト・フォン・ハステル
年齢 10
レベル 11
魔力 74500/75000
魔法 全属性魔法(火 氷 水 雷 土 風 光 闇)回復魔法 神聖魔法 暗黒魔法 龍魔法
スキル 鑑定結果改竄【A】 複合魔法【C】 剣術【D】 属性剣【C】 魔力効率上昇【C】 略式詠唱【B】
能力 創造【D】
称号 転生者 魔王候補 龍魔法使い 龍の友人 魔法剣士 複合魔法の使い手 癒しの手 偽る者
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「色々と増えたな…」
まず、魔力が3倍ぐらいになった。それと、新しいスキルを覚えて、なんと龍魔法まで覚えることができた。あと、文字化けしてた称号とかは表示されないようにした、邪魔だったからね!
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複合魔法【C】
適正のある属性または魔法同士を複合して新たな属性を生み出す。Cランクでは最大4属性まで複合できる。消費魔力は複合する属性の数が増えるのに比例して増えていく。また、組み合わせによっては複合できない物もある。
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これは魔法で遊んでたらいつの間にか取得してた。実はこの部屋に張った結界もこの複合魔法を使っている。防音は風と神聖魔法で、魔力隠蔽結界は光と闇と暗黒魔法だ。
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属性剣【C】
剣や槍などの武器に自身に適正のある属性を纏わせる事ができる。ランクが上がると出力が上がる。Cランクでは相手に攻撃した時に纏わせた属性に応じた追加効果を攻撃した対象に付与する。一部の属性では追加効果を付与できない。
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これは……若気の至りってことで…うん。
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略式詠唱【B】
ランクに応じて詠唱を省略できる。Bランクではほとんどの魔法を詠唱なしで使用することができる。また、無詠唱による出力の低下を押さえることができる。
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これは呪文を唱えるのが面倒になって適当に省略してたら手に入ったスキルだ。俺が後天的に入手したスキルで一番ランクが高いスキルで、俺が一番信頼しているスキルの1つだ。
「さて、今日は何をしよう…とりあえず、属性複合【光・風】『フィールドサーチ』」
俺はフィールドサーチの魔法でとりあえず屋敷全体の生命反応をサーチする。意味は特にない!ちなみに、この魔法はサーチした情報を視界に直接投影するので使用しているのがバレにくい魔法だ。また、一度使うと20分ほど効果が継続されるのでなかなか便利だ。なお、個人の特定は事前にパターンを登録しなければ行うことはできない。
「ん?誰かこっちに来るな…」
俺がフィールドサーチについて復習していると、部屋に近づいてくる反応が1つ。それもかなりの速度で近づいてくる。そして、その反応から魔力を感じ取った次の瞬間…
「ヴィクト!おはよー!!!」
俺の部屋のドアが吹き飛んで一人の少女が入ってくる。うん、もしかしなくても俺の姉のジュリエ・フォン・ハステルである。
「姉さん、部屋のドアを吹き飛ばさないでって何度言えばわかるのさ…」
「別にいいじゃない、ヴィクトなら簡単に直せるのでしょう?」
「そりゃそうだけどさぁ……」
ほんとため息が止まらない。この姉は俺の部屋に来るとき必ずと言っていいほど部屋の扉を破壊する。やめろと言っても直りゃしない。
「はぁ…複合属性【土・回復】『ツールリペア』」
「やっぱり、ヴィクトの魔法は何でも出来ちゃうね!」
「無駄に魔力を消費したくないから次からは普通にノックして扉を開けて部屋に入ってきてね」
「はーい」
複合魔法だってそれなりに魔力を消費するんだぞ!って言い聞かせても伝わらないので、おれはもう諦めている。それにしても、今日は何の用だ?
「で、今日は何の用?」
「んー?今日はヴィクトを起こしに来ただけだよ!」
「へ?」
「よし、じゃあお姉ちゃんと一緒に朝ごはん食べに行こー!」
「ちょっ、まっ……」
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「……で?ヴィクトを引きずりながら屋敷の廊下を走り回ってリマに捕まったと?」
「うぅ…ごめんなさい」
「明日は学園の入学式なのですよ?ヴィクトが怪我をしたらどうするのです」
「まぁまぁ、俺は大丈夫だから」
俺は姉さんに捕まった瞬間に無詠唱でリジェネの魔法を使用して怪我を片っ端から治していったのだ。まぁ、もうこれぐらいは慣れっこだ。
「じゃあ、朝ごはんにしましょうか。」
「「はい!」」
そんなこんなで朝の時間は流れていき…
「じゃあ、行ってきます」
「気を付けるのよ」
「大丈夫だよ、私も一緒だし!」
「ジュリエが一緒だから心配なのよ…」
「お母さん酷い!」
「ヴィクト、ジュリエの事をお願いね」
「わかったよ、母さん」
「もー、ヴィクトまでー!」
馬車に最後の荷物を積み込み終わった俺たちは馬車に乗り込んだ。王都までは順調に行けば半日で着く予定だ。まぁ、さすがにこんな大きな街道でモンスターに襲われたりはしないだろうし、盗賊が出るという話も聞かない。少し寝ますか。
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「……ト!…クト!ヴィクト起きて!!」
「何?姉さん」
「ドラゴンが……ドラゴンが追いかけて来てるの!」
どうやら、俺の平穏な学園生活は入学前から幻想になろうとしているようだ。