1話 転生
今回も駄文につきご注意下さい
―――うん、いまどんな状況なんだろう、全く動けないし目も開かないけど、音はかろうじて聞こえる。
うん?会話の内容的になんか俺、危険な状況っぽいぞ?ドラマで例えると、『オペ中に担当医がミスって出血が止まらなくなってしまった!』的な感じの緊張感だ。
「ダメです!心臓が動いていません!」
「えぇい、雷魔法で電気ショックだ!」
「産まれたばかりの子供には電気ショックの負荷が大きすぎて危険です!」
「それでもこのまま心臓が動かなかったら遅かれ早かれ死んでしまうだろう!蘇生するなら今しかないのだ!」
「しかし…」
え!?なに?今俺の心臓動いてないの!?
今生の俺、産まれてすぐにまたあの謎空間にゴートゥーバックなの!?
「もうよい、私がやる!」
2度目の人生は自分の名前を知ることもな…かはっ
突然の衝撃で体が思い出したかのように呼吸を再開した。
なんだいまの!?一瞬感電してたよね!?気のせいじゃないよね!?
「心臓が…動き始めました!」
「なんとか成功したか…」
「なんとか成功したかじゃねぇぇぇぇぇぇ!」
あ、やっべ、つい大声でツッコミしちゃった…
目を開けて周りを見てみると白衣姿の老人と貴族服みたいなものを着ている男が目を点にしてこちらを見て固まっていた。
二人とも開いた口が塞がっていない。
「おい、今この赤子私たちにツッコミをいれなかったか?」
「……いれましたね」
どうしよう……ここはひとまず赤ん坊っぽく泣いてみるか
「おぎゃあおぎゃあ」
「なんだ!?このわざとらしい泣き方は!?」
「わざとらしい…ですね」
逆効果だったぁぁぁぁぁ!
どうしようどうしようと慌てていると突然扉が吹き飛んだ
うん、文字通り吹き飛んだ
………は?
なに、ここの世界の人間はさっきまで心臓が止まってたとか止まってなかったとかいう赤ん坊のいる部屋のドア吹き飛ばす風習でもあるの!?
そんな事を考えていると、部屋の中にドレスを来た少女が入ってきた
「お父様!ヴィクトは!ヴィクトは大丈夫なの!?」
「あ、あぁ…なんとか一命をとりとめた」
「……よかった」
おいおい、泣きはじめちゃったぞ
てか、心配してる人のいるドアを吹き飛ばすな!
「お前はもう部屋に戻っていなさい」
「…ぐすっ、はいお父様」
少女は安心しきった顔で部屋から出ていった
「さて、これからのことだがとりあえずこの子が私たちに大声でツッコミをいれたことは内密にしておこう、妻や娘に話したら混乱しそうだ」
「承知いたしました」
姉がいるのかぁ
……ってさっきのドアを吹き飛ばした少女の事じゃないよね!?
「では、妻を呼ぶとするか、リマ!」
「はい、旦那様」
貴族服の男が呼ぶとどこから入ってきたのかいつの間にかメイドさんがいた
「我が妻をここに読んできてくれ」
「かしこまりました」
メイドさんが部屋から出た数分後、誰かが走って来る音が聞こえて来た。
その足音は部屋の前まで来るとピタリと止んだ
「あなた、私です入っても?」
「おお、来たか入ってくれ」
俺の父親であろう貴族服の男がそう言った次の瞬間、俺は抱きかかえられていた…
「あぁ、私たちのかわいいヴィクトちゃん」
へ?
今何が起こった!?認識出来ない速さでここまで来て抱きかかえられた!?
んな馬鹿な!?
「ようやく跡取りたる長男が生まれて嬉しいのはわかるが、少なくともあと1週間は様子を見ねばならん」
「うぅ…わかりました」
「安心せい、俺たちの子だぞ?このような事では死にはせん!」
二人はそんな会話をしているが、寝台に戻された俺はすっかりシエラと呼ばれた女性に怯えていた。
俺の母親本当に人間なのか!?明らかに速度が人間じゃなかったよね!?もう訳がわからないよ…
目が覚めたら死にかけてるし、部屋の扉は吹き飛ぶし、母親は人外じみた身体能力を見せつけてくるしでいったいこの家はどうなってるんだ!?
シエラが優しく俺の頬に手をそえると、とたんに強烈な眠気が俺を襲った。
「きっと、あなたは何かを成し遂げる…そんな気がするのです。だから、今はお休みなさい」
そう言って俺に向ける顔は優しくて、美しく、気がつけば怯えは無くなり俺の心はかつてないほどに安らいでいた。あぁ、この人の期待に応えるためならば、たぶん俺は頑張れる。
よし決めた!今回の人生は何事も諦めず、きっと歴史に名を残せるような事を成し遂げてみせる!
俺はそう心に誓い、意識を手放した。
実際のところシエラ(母親)はそんなにヤバい人ではありません。主人公がビビりまくっているだけです