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6.職に就く

 異世界での生活が本格的に始まった。


 住む場所はルーカスのおかみさんが2階の物置を空けてくれた。


 ただで済めるので大助かり。

 当然家賃はルーカスのお手伝い。


 おかみさんの名前はアデーレ、旦那さんはザック。


 子供は2人いて、兄の方は領都で料理人見習いをしているそうだ。

 妹の方はカナという名前の17歳で、お店のお手伝い。

 カナ姉ちゃん呼びになった。


 ほかに3人を雇っている。


 自分が手伝いに入って一番喜んだのがカナ姉ちゃん。


 こんなかわいい子供が入ってきたからではなく、朝晩のトイレ掃除が自分の担当になったから。


 この世界のトイレ事情。

 村は肥溜め。

 街では外にまとめて捨てておくと専門の人が集めて処分する。


 貴族などはスライムをトイレに飼っていて、消化させている。

 魔法を使えない最弱の魔物なので可能だ。


 この街は冒険者の街なのでスライムには困らない。

 ルーカスもギルドもスライムトイレだ。


 スライムトイレは深く穴を掘ってスライムが登れないようにしなければならない。

 大人であれば負けることはないが、逃げ出したりすると乳幼児が危ないからだ。


 街の一部では回収して外の川に捨てに行っている。


 臭いだけなら3日で慣れる。

 トイレ事情は課題のままだ。

 うんこ浄化魔法の開発が待たれる。



 日々の生活は規則正しい。


 朝5時の鐘でおきて、仕入れの手伝いをしてご飯を食べる。

 冒険者ギルドに行って、仕事の手伝いをする。


 夕方はご飯を食べてから再びお店の手伝い。

 自分は18時まで仕事。


 風呂はないので、桶にお湯をいれて石鹸で洗う。

 風魔法で体を乾かして就寝。


 早寝早起きだ。


 灯りの少ない世界では夜は早い。

 灯を点けて朝までやっているところも当然ある。


 ルーカスは18時の鐘でラストオーダー。

 19時の鐘で終了。


 2週に1日休みもくれた。


 この世界の人たちは休むということがあまりない。


 ギルドの方は5日働いたら1日休みと言われた。

 ルーカスの休みに合わせてくれたみたい。


 休みが重なるときは1日休みなので外に出て魔法の練習。

 基礎の生活魔法は無料で公開されているので、誰でも習得可能だ。

 未成年は親の許可がいるけど、ギルドの裁量で固定魔法を教えてもらった。


 ギルドだけが休みの時は街を見て回ったり、生活用品をそろえたり。


 魔法陣を覚えてもイメージができなければ魔法は使えない。

 まず魔法陣を出して、魔力を流して魔法を発動させる手法だ。


 使った感じだと魔法陣そのものが、魔法陣を出すという魔法だと思う。

 だから使う魔法陣を出すイメージ、そこから使う魔法のイメージをする。

 この2段階操作の練習が必要となる。


 火は焚火、水は桶、風は扇風機くらいの魔法を練習する。

 攻撃魔法も基礎の魔法は無料だが、こちらは教えてもらえない。



 この世界の魔法は火・水・土・風・聖・特殊の6属性とされている。


 人であれば火・水がオーソドックスなタイプで焚火レベルは使える人が多いそうだ。


 攻撃魔法になってくると、得意属性に偏ってくるらしい。


 魔法を作った身としては6属性に凄い違和感を感じる。

 作ってた時は理解できていたのに、生身になると感覚が分からないのがもどかしい。


 魔力があっても魔法を使えない人もいる。


 魔力が少ないことはあっても、魔法を使えない人というのはいないはずだ。

 この辺りも研究対象の1つになっている。


 今はできることを少しずつ。




 ギルドで身分証を作ってもらえた。


「おおっ、これで俺も冒険者!」


「違うわよ、身分を保証しただけで冒険者にはなっていないわ。

 ちなみにこの街の孤児出身ってことにしたから、何か言われたらそう答えなさい。」


「はーい。」


 街の出入りは楽になった。


 魔法の無詠唱化と、魔法陣なしの魔法を外で練習する。

 森の方面には出させてもらえないので、街道側の畑のないところ。


 魔法の制御が少しずつ出来るようになったので、鑑定魔法も練習する。


 最小限の魔力を使うようにして情報の取得量を抑える。

 魔力の量もそうだけど、使う魔力の感覚が難しい。


 人、魔物、植物など種類によって得たい情報が違うから少しずつ調整をしていく。

 何度も反復練習をして、体に魔法の感覚を染み込ませる。


 魔法陣の作り方がわからないので、今はこのまま。




 魔法陣を考えた人は天才だと思う。

 魔力の使用量を固定にして誰が唱えても同じ効果にしたのだから。


 魔法の汎用化。

 誰にでも習得しやすく、素晴らしい仕組みだ。


 その反面細かい制御ができないことと、魔力の大きさと種類がちょっとでも足りなければ使えない。


 一般人が生活するために最適化されているものが多いと思う。



 併せてジョブスキルも慣れておく。


 実態は魔力を使うことで起こす魔法の一種だが、魔力の種類に関係なく使えるようにしている。


 戦士であれば肉体能力を向上させるスキル、魔導士であれば魔力を消費しないで魔法を使えるスキルだ。

 能力強化は時間制限付き。


 ちなみに忍者は口から魔法が出せるという微妙なスキル。

 火遁とかをイメージしている。

 魔力切れの状態では当然使えない。


 同じジョブの人は同じスキルを持つが、自分は個別にオリジナルスキルを作った。


 空蝉。

 紙が身代わりになってくれるスキル。葉っぱなどでも代用可能。


 変わり身。

 自分と対象の位置を入れ替えることができる。


 隠れ身。

 特殊な布で自分の姿を背景と同化させる。

 布は持ってきた伸縮自在の風呂敷の裏を利用できるようにしている。

 表は当然唐草模様。


 口寄せ。

 特殊な動物を召喚できる。これは忍術なのでオリジナルスキルではないけど、召喚される動物を作ったのでそっちが固有。

 人前では呼べない。


 これらスキルを自分専用として追加しているのだ。

 かなりズルをしているといってもいい。


 そして今はこのスキルを有効活用することなく、日々トイレ掃除と皿洗いをしている。


 まあ俺の本当のチートはスキルではなくこの体そのもの。

 運動神経や反射神経、器用さなどそういった目に見えない能力が高いのだ。

 絶対音感なんてものも持っている。これは別にスキルではなく肉体を持った時にそういう風に作っただけ。



 ギルドでの仕事は主に魔物解体の手伝い。

 夜組の魔物を午前、午前組の魔物を午後から解体する感じだ。


 最初は森ウサギとフォレストバード、森の近郊に多く出る魔物の解体から覚える。

 初めての時はそのままの姿に刃を入れることに抵抗があったけれど、30体あたりから何とも思わなくなる。


 慣れてくるとレッサーボアやウルフなど少し大きい魔物の解体も手伝わせてくれるようになった。


 森行きたいなぁ。


 解体だけでなく、毛皮のなめし方も覚える。

 重労働。


 毛皮は防寒具として優れているだけでなく、一部の希少な魔物は輸出品としても人気が高い。

 衣服は植物繊維物が多いが、服に使える魔物もいる。


 骨なども使えるところは装備の素材にしたりなど、なるべく無駄を作らない。


 魔物といえど、食材・素材になるので感謝の心を忘れない。


 なんて綺麗ごとは一切ない。


 向うもこちらを食べようと襲ってくる。

 お互い食べるために殺し合いをしているのだ。


 冒険者曰く、感謝なんてことは微塵も思わないそうだ。


 実際亡くなる冒険者も少なくない。

 安全マージンを十分取っていても、絶対はない。



 苦手なのは虫の解体。

 大きいクモやカマキリのような魔物やその卵など。


 薬や武器の素材になるのだが、虫の目玉を抜いたり、体液が出てきたりすると脳が拒否反応を起こす。

 未だに慣れることができない。


 解体のない日は受付で書類整理のお手伝い。


 日本の義務教育を受けていれば、重宝されるレベル。

 ギルドへの正式な就職を勧められた。


 もちろん丁重にお断りをした。




「このギルド、従業員が少なすぎると思うんだけど。」


 ラウラさんに書類仕事の傍ら聞いてみる。


 ギルドマスターと受付嬢2人、解体担当3人、と自分。

 この体制で宿直ありの24時間。


 超絶ブラックもいいところだ。


 今は、解体担当のヨハンさんが1人臨時でフロントに出て対応している。


「受付が2人いっぺんに辞めたのよ。

 1人が実家の家業を継ぐことになって、もう片方は結婚した兵士の任期が終わって領都に行っちゃったの。」


「本部から新しい人は来ないの?」


「どうしてもという場合は少しの間だけ人を借りられることもあるけど、基本は現地で補充ね。

 今はどこも人手不足だから外から借りてくるのは難しいの。

 もちろん今回の件は領主さまとギルドマスターで話はしているわ。」


「しばらくこのまま?ラウラお姉ちゃん倒れちゃうよ。」


「ふふ、心配してくれるの?ありがと。

 来月から引退した冒険者が1人入ってくれることになっているから大丈夫よ。

 あと孤児院から1人見習いがくるわ。

 将来的にはあと1人は欲しいわね。」


 人員補充とかは現場任せ。


 収支報告は当然あるので、赤字の場合はテコ入れされる。

 基本は紹介業による手数料と、売れるものを買取をするから赤になることはないとのこと。



 孤児院からくる子は11歳。

 この世界の成人は15歳、早ければ13歳くらいで職に就く。


 親がいればともかく、孤児は独立しなければならない。

 そのため10~11歳くらいまでには見習いとして職を探すことになるそうだ。


 ちなみに、テーゼさんもこの街の孤児出身だそうだ。

 娼館の多いこの街は、人も仕事も多いが孤児も多い。

 街は孤児の問題にずっと悩まされている。罰則を設けても改善していないらしい。


「避妊はどうなってるの?」


「子供のくせに何いってるの!」


 ちょっと赤い顔で怒られた。


 そりゃそうだ。


生き方を考える

1週6日月30日、年360日

自分チート

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