3.鑑定魔法
世界を作るのと並行して鑑定魔法に手をつける。
鑑定魔法とは、対象の情報を都合よく知ることができる魔法だ。
石のような無機物から人間のような動物に至るまで、対象によって知りたい情報を得ることが可能なチート魔法。
どうすればいいかを検討していく。
まず、魔力は固有情報なのだから、魔力を見て鑑定結果を返すことは可能だと思う。試しにルナを鑑定してみる。
種族:神さまモドキ
性別:女
うーん、魔力から情報は取れるけど名前とか何の神さまかは取れないな。
「ルナ、戦士のジョブを持ってくれ。」
「承知いたしました。」
もう一度鑑定する。
種族:神さまモドキ
性別:女
ジョブ:戦士
ジョブ自体は魔力から読み取れた。
「主さま、そんなに私のことを見つめて!もっと見てください。」
すっぱーんっ。
ルナが服を脱ぎ捨てた。
この状態で性欲とかないから、全裸になられても何も思うことはない。
全裸がポーズを取りだしたので無視することにした。
「フローラ、毒を体内にもってくれるか?」
「主さまに効く毒なんてないですよ。」
「そうか、なら人にとって食べたら有毒になってくれ。」
「承知いたしました。」
見る側によって状態が変化するのか。同じ魔法でいけるかな?
フローラを鑑定する。
種族:神さまモドキ
性別:女
この状態で見ても変化なしと。
「主さま、そんなに私のことを見つめて!もっと生の私を見てください。」
バリバリッ。
フローラが皮ごと自分を剥いだ。
人体模型みたいになってるな。毒のせいなのか、紫っぽい。
感情が希薄なせいか、ビックリすることはない。
人間からの視点で鑑定をしてみる。バカとか出てくれないかな。
種族:神
性別:女
特性:有毒
特性は神さまモードだと無毒だから出てこないけど、人だと出てくる。
鑑定者によって結果は異なるということだ。
少し思いついたことがあるので、威力を弱めて鑑定してみる。
種族:神
性別:女
特性が見えなくなった。
能力によっても、鑑定できる内容は変わってしまう。
人体模型がポーズを取りだしたので無視することにした。
「アウロラ、目から光線出せるようにしてくれ。」
「こんな感じですか?」
おぉ、目からビームが出た。
「うん。それでいい。」
神さま視点で鑑定。
種族:神さまモドキ
性別:女
ビームを出せる情報はなし。
「主さま、そんなに私のことを見つめて!もっと私の中身まで見てください。」
パカッ。
アウロラが自分の体を観音開きにした。
人体標本みたいだな。
あっ、脳みそがカニみその缶詰になってる。俺が無意識にやってしまったということなのだろうか?
しかも期限切れって書いてあるな。
まあ、いいか。
人体模型と全裸の脳も見せてもらうようお願いをする。
鯖みそと焼き鳥だった。ともに期限切れ。
気を取り直して、アウロラを人間からの視点で鑑定をしてみる。バカとか出たらごめんね。
種族:神
性別:女
人から見てもビームを出す能力は見えない。
標本がポーズを取りだしたので無視することにした。
自分で試してみた結果、魔力の鑑定とは鑑定者と対象の関係においてのみ情報を取得できるということ。
自己に対しての情報しか取得できないので、他の種族への影響は分からない。
また、名前などの固有名称や特技といったものは魔力には持っていない。
つまり魔力の情報に加えて、他者が認識した情報というのが鑑定魔法で欲しいものになる。
名前などの固有情報と図鑑のような一般情報をどこかに持って、それを取ればいいわけだ。
色々検討した結果、すべての情報を持つデータベースを作って、自分の魔力を送って鑑定できるようにした。
データベースはアカシックレコードと名付け、今後明石さんと呼ぶことにする。
鉱石なども鑑定できるようにするため、生き物以外の情報も保有する。
砂の一粒やホコリなど、魔力を持つものであれば全て入ってしまうが調整がむずかしいので仕方なし。
明石さんに魔力の情報を持つことにしたので、どうせならと実体とリンクさせることにした。
魔力は対象の構成要素の情報をすべて持っているので、明石さんを書き換えてしまえば本体も書き換わる。
この機能は管理者権限を持つ者のみ実行可能で、自分と3女神だけが持つ。
自分は、転生後はただの人になるから権限もなくなる予定。
明石さんには情報の収集と整理の機能を付ける。
明石さんオリジナル魔法のようなもので、大気中の魔素を使って生き物の記憶や知識を取得することができる機能と取得した情報を整理整頓する機能。
魔力を持つものは発生した時点で明石さんに位置情報を含め記録される。
例えば胎児の場合は、存在が確定した時点で明石さんには記録されるが、母親を鑑定した場合には付随情報となる。
母親についている寄生虫やホコリなどと変わらない扱い。
胎児を意識して鑑定すれば胎児の情報が取得できる。
生まれて母親と切り離された時点で、明石さんが判断して母親の付随情報から外される。
そうした記録を明石さん側で鑑定者の魔力から判断を行い、渡す情報を整理して返却する。
鑑定者は2枚の板を通して明石さんにアクセスする。
1枚目は自分が見たいものを抽出する板で、2枚目は鑑定される側が見せてもいいものを設定する板、よくある隠蔽機能だ。
どちらも鑑定魔法を使える上で、理解できていないと難しい。
みんなが間違った認識を持っている場合は、明石さん側では判断できないため間違った情報のまま保有する。
例えば知の女神がバカだと世界で俺だけが思っていても、大多数が知性溢れる女神さまだと思えばそのように鑑定されてしまう。
一応俺の認識も記録はされるはずだが、取得するには膨大な魔力がいる。
時間の経過とともに明石さんの情報は綺麗になっていくだろう。
鑑定魔法ができたので、3人に鑑定魔法の仕組みについて話をしながら、世界の再調整を重ねていく。
人がすぐ滅びることのない世界を確認できたので、いよいよ転生をしようと思う。
元の自分の顔をベースに金髪青目にプチ整形をした。
ちょっとだけ。本当にちょっと。
年齢はある理由があって10歳だ。
「「「主さまカワイイ!!!」」」
3バカに抱きしめられて、キスされて、舐められる。
「この状態だと感覚あるからヤメロ。」
3バカを無理やりはがす。
「俺は転生するから後のことはよろしくね。」
「「「はい。人の生は短いですけど、主さまを見守っていますので。」」」
3バカに見守られていると思うとちょっと危ない感じがするな。
気にしてもしょうがないので、いざ異世界へ。
―――入れなかった。
勇者として転移しようとしたら、世界に一人縛りのため拒絶されてしまった。
「「「ちょっと、勇者を殺してきますので、少々お待ちください。」」」
「頼むから待って!別のジョブにするから!!」
ということで違うジョブを選択する。
熟慮の末、忍者にした。魔法忍者だ。
忍者なので黒髪日本人顔にチェンジ。
勇者用装備を真っ黒の忍者装備に変更。
「「「主さまカワイイ!!!」」」
再び3バカに抱きしめられて、キスされて、舐められる。
「ヤメロ。」
「随分かわいらしくなりましたね。」
声をかけられた方を向くとおっさんが立っていた。
そうえいば、世界作っているときいなかったね。
「ずっと仕事してましたからね。」
「トラック以外で良さそうなものありましたか?」
「ダメですね。やっぱりトラックは優秀なようです。」
やっぱり自分は試され損なようだ。
まあ自分もたくさんの生命を弄んでいたから、何も言えないだろう。
「いよいよ準備ができたので転生しようとしてたところなんですよ。」
「ついに旅立つのですね。
転生すると記憶があっても、性格変わることもあるようなので注意してくださいね。」
「そうなんですか?」
「転生者はまず、帰りたがる人と転生自体を喜ぶ人がいます。
現世に未練がない人に多いのですが、そういった方は大抵家族がいなかったり、友達付合いがなかったり。
孤独な方で人と付き合うのが苦手な方が多いんですよ。」
「なのに特別な魂ですか。」
「えぇ。人と話すのが苦手で籠っていたのに、転生した途端になぜかハーレムを形成する人が結構います。」
「どうして性格が変わるんです?」
「よくわかってないんですよ。急に人前でもよく喋れるようになったり。」
まあ内向的になるよりは良い気がする。
「ここでの記憶とかどうなりますかね?」
「覚えていると思いますよ。時間の概念がないので生前の記憶もそのまま残っているはずです。
おそらく姿に引っ張られるので子供の思考になると思いますけど。」
安心して地球産チートができそうだ。
「それでは今度こそ行ってきます。」
「楽しい第2の人生を。」
「ありがとうございます。3人も本当にお願いね。」
「「「お任せください。」」」
不安しかないけど、俺はやっと異世界に旅立った。
鑑定魔法と人と話すのが苦手でも上手くいく理由。