中編
そんでついに旅立の日。武術、魔法、知識などすべての面で力を付けた俺は満を持して出陣することに。
そこで俺は初めて仲間とご対面。相手はフードつきの服を着た青い髪をショートカットのはかなげな美少女僧侶ヘレナちゃん、全身甲冑の凛々しい見た目の美人な女騎士クレアーヌさん、つまり2人ともこの世界ではあまり美人ではない様子。
そして俺よりましかなレベルの顔をした大学生くらいの年をした賢者ヨハン君である。ちなみにヘレナちゃんは俺とフェリシア様の一つ下、クレアーヌさんは20代後半、賢者君は20代前半である。
なんでも、この3人がこの国一番の使い手らしい。じゃぁ、なんでこいつらで魔王倒さないの?と思ったが、師匠である騎士団長曰く、勇者には仲間3人までに同じくオートで“魔王殺し”の特性を付与する能力があるらしい。そして彼らはこの国の最強らしく、俺という存在が魔王に対抗できると判断したからこそ彼らを出陣させ、ある意味総力戦を挑むことにしたとのこと。ふむ、さすがに緊張するね。
そして皆の声援とフェリシア様の聞いていて赤面するくらいの激烈なラブコールを背に出発。
とりあえずこれから宜しく!頑張ろうぜ!とみんなにフレンドリーに声をかけたら、ヘレナちゃんはうつむいてぼそぼそ。クレアーヌさんはフルフェイスの兜をかぶってこちらを見ずに「ああ」とだけ、賢者君だけは笑顔で「よろしくお願いします!」と元気な返事。初手からチームワークに懸念が・・・。
けど戦闘は優秀ですよ彼ら。さっそく出会った魔物相手に戦闘開始すると、
賢者君は適切な指示を出しつつも巧みに様々な攻撃魔法を使い、ヘレナちゃんは高位の防御と回復魔法を使いこなして俺らほぼ無傷、クレアーヌさんは剣筋がもう見えない。気が付いたら魔物がばっさばっさ切断されていく。一応10体以上いたのに瞬殺ですわ。俺?俺も戦ったよ。ビームで。
しかし、能力が高いのが分かったが愛想が悪いのはどうにかならんかね。と考えていたある日、宿屋でラッキースケベ。部屋を間違い女騎士クレアーヌさんの着替えを覗いてしまいました。「やばっ!」と思い、謝ろうとしたら「すまん!」と逆に謝られた。なんでさ。
その後着替えたクレアーヌさんに招かれ部屋で話をしたら、こんなでかくて不細工の気持ち悪い体見て気分を害しただろ?とのこと。ちなみに、俺感覚だと彼女は女性にしてはちょい高めの身長、全身引き締まっていて、だけど胸も大きい、きれいな栗色の髪をポニーテールにまとめたモデルのようにきれいなクール系美女でございます。
そんなことないよときれいだよと言ったら「ふざけんな!バカにしているのか!」と激怒されたよ。その面倒くささにちょっとイラつき「いいや、本当に美人だし。なんなら俺恋人になってもいいくらいだし!」と言い返したら、「嘘つけ!」「本当!」「は!今なら冗談で済ますぞ」「だから本当!」と売り言葉に買い言葉。
ちなみにヘレナちゃんはこの町の教会でお仕事、賢者君は魔法研究所にそれぞれ出かけ調査と勉強をしており、今夜は帰ってきません。
その内本気だと通じたのか、急に慌て初め「待って!私汗かいて臭いだろ?ほらほら」と脇を見せるグラビアみたいなセクシーポーズをとりましたが、フローラルなすごいいい香りしかしません。次は大きな胸を強調して「こ、こんな固くて醜い駄肉だぞ!気持ち悪くないのか?」と言われましたが、もはやごほうび以外の何物でもありません。「すっごいいいにおいだし、セクシー、クレアーヌさんってすごい美人だよね。惚れちゃうわー」といったら。感極まったのかクレアーヌさんに押し倒され、ぶちゅぅぅと凄い濃厚なキスをされました。
しばらく、熱烈なクレアーヌさんの連続キスも落ち着き、ぼーっとしていたら陰鬱なオーラを纏ったクレアーヌさんが告白し始めました。
何でもクレアーヌさんは名門貴族の出身だが、この顔で昔から馬鹿にされて婚約者もいないというよりすべて断られた。だから騎士として生き、修行して国でも指折りの剣の使い手になったそうな。
でも、男が傍にいてほしい気持ちはある。皮肉にも強くなりすぎたことで、男っ気はさらにゼロ。思い余って男娼に行ったが、相手は自分を見ると立たない上苦しそうな顔で、何とか処女膜破ったもののどちらもイクことなく、半端な結果で終了。相手は吐きそうな死にそうな顔して土下座で謝罪。それ以来男と結ばれることをあきらめた。とのこと。まぁ、重い話ですわ。
最後に私なんかがこんなイケメンの勇者様を穢してごめんな。でもでも私のことをきれいと言ってくれたのが嬉しくて。何でも言うこと聞くから許してくれ、と目に涙を浮かべながら頭を下げるクレアーヌさん。こんな美人にキスされた上に、頭下げられて、何でもしますなんて言われるなんてこんな夢のようなことがあっていいのだろうか。
とりあえず安心させるために、俺が異世界人でこの世界と美醜の感覚が違うと告白、本当に後悔してないし、むしろご褒美ですよと伝えたら「嘘だ!もう慰めは十分だ!そんな空想みたいな男いるはずない!」「いや本当!」「騙されんぞ!」「もう!」と、また同じ流れです。
そして
「本当だな!もう離さないからな!お前に裏切られたら!絶望して心中するからな!」
となんかヤンデレなセリフを吐いて、くしゃくしゃの笑顔で抱き着かれました・・・これ、待ってるフェリシア様どうしよう。
それからというもの、クレアーヌさんは自分の言っていることが本心だと理解したのか、戦闘やほかの2人の前でこそ今まで通り無口でクールだが、2人きりになるとお前誰だよ?レベルで甘えてくるようになりました。
とまぁ、ちょっとクレアーヌさんと爛れた関係になってからしばらく経ったある日、泊まった町の片隅でヘレナちゃんが泣いているのを発見。理由を聞くと、なんでも教会に行ったら、詳しくは分からんが何も落度もないのに教会のお偉いさんに不細工を理由にひどい暴言を吐かれたらしい。うん、そいつ後で処刑だな。ヘレナちゃんは引っ込み思案だが、性格がすごくいい。それこそ俺なんかよりもずっといい。無口で発言も聞き取りづらいけど、ちょっとした異常に気が付き、回復魔法をかけたり、こまめな心配りがものすごい。これは惚れますわぁ。
でまぁ、慰めていたら姫騎士さんと同じ流れですよ。とにかく「私不細工ですから」を連呼。なので褒めちぎり、「俺ヘレナちゃんこと可愛いし、性格もよくて結構好きだよ」と言ったら、「嘘!」「本当だから!」「からかわないでください」「いや本当」・・・との流れ。またかよ。
そのうち「じゃぁ?私にキスできます?できませんよね!?」とかいうので勢いでキスをしました。脱童貞の行動力ならではですな。
すると、眼を真ん丸にしてきょとんとしたヘレナちゃん。ぼろぼろ泣き始めました。
やべぇ!やりすぎた!いくらなんでも女性に勢いだけでキスとか犯罪者レベルじゃねーか!とヘタレな自分が蘇り、土下座の準備を始めたところ。
「こんな素敵な男の人にキスされるの夢だったんです!」と泣き笑いの顔でいいました。
どうやら傷ついてはいないご様子なので一安心。
「・・・俺でよければいつでもいいよ」
思い返せばもっといい言い方あったんだろうけどねー。ブサメンで女性に縁が無い人生を生き続けた俺じゃまだこの程度の会話が限界です。
「ほ、本当ですか!?はっ!?もしや私を騙して言いなりにするつもりでは。そして金だけ貢がせてポイ捨てするのでしょうか!?」
「しませんよ」
なんでそうなる?聖職者の割に騎士より想像豊かだなー。
そして、その後ヨハン君に相談・共謀してヘレナちゃん泣かせた聖職者をぎゃふんと言わせて、大恥かかせましたとさ。
と終わりならいいのだがその後のヘレナちゃんがやばい。2人きりの時にことあるごとに当たり前のようにキスを要求。フェリシア様とクレアーヌさんに二股かけた手前、オブラートに断ろうとすると「・・・やっぱり嘘だったんですね。ははは」と病的な眼をするので、仕方なくキスをし続けているうちに、さらにヘレナちゃんの俺を見る目つきが次第におかしくなってきました。それと、なんというか行動がやばいです。
キスも最初はフレンチキスレベルだったのに、今やハグもおねだりして離れなかったり、頻繁に俺の汗を自分のタオルでぬぐおうとし、ふとヘレナちゃんの方を向くと高確率で目をうっとりさせ、頬を赤らめているヘレナちゃんと視線が合う。
このままだと何かやばいと直感し、悩み悩み、嫌われる覚悟でヘレナちゃんにクレアーヌさんと関係持っていること伝えたら。
ほへ?というきょとんとした顔の後に出た感想が
「あのクレアーヌさんを!?そうなんですね!やっぱり本当に私のことも本気なんですね!」と喜んでいました。感想おかしくないですかねー!?
で、詳しく聞いたらこの世界一夫多妻制で、男に魅力があって、妻を平等に万遍なく愛してくれるなら女性に不満ないのが常識なんですって。それで、不細工な自分にも本当に関心があると知って喜んだと・・・姫様から聞かなかったなその話。まぁ、あまりにも常識過ぎたせいか・・・でも随分ご都合すぎやしませんかね!?
とはいえ、せっかく都合がいいので、思い切ってクレアーヌさんにもヘレナちゃんのことを告白。反応は「ああ、やっぱり?でもヘレナちゃんならいい子だし。別にいいよ。可愛がってあげてね。あっ、で、でも私のこと忘れちゃ嫌だよ」だって。隠れてしていたキスのことや俺らの関係はバレバレでした。俺のしばらくの気苦労はなんなの。
これで絆が深まった我らパーティー。完全に俺に心酔した2人とほぼ毎日のように一緒にいちゃいちゃしています。
ちなみに賢者君も仲良しですよ。賢者君とてもいい人で、しかも彼この世界でいう美人さん2人と結婚しているんだってさ。リア充ですな。でも美醜と好みの差は有れど、俺とも趣味と話が合うし、俺らの関係を知っても嫌な顔せずに応援してくれる超が付く好青年ですわ。やだこいつイケメンすぎ。