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希望的観測ミカン

シンデレラのように魔法で素敵に変身して「毎日をお姫様気分で楽しく過ごしたい!」なんてそこまで夢みてたわけじゃなかったけど、まさか目覚めたら頭部がミカンになってるとは予想外すぎる。

私は洗面所の鏡の前で「ひっ」と変な声をあげた。デカデカとしたミカンがそこには写し出されており、おまけにミカンの下には私のものらしき身体がくっついている。

ええ……なにこれきもい………

右手をグー・パー、グー・パーと開いては閉じて鏡に写る身体と動きを照らし合わせてみるのだが、どうやら正真正銘私の身体らしい。鏡に問題はないようだ。

…じゃあ、このミカンは何………

私の顔があるべき場所を触って、これが現実なのか確認してみるも、大きなミカンがあるだけで私がいない。朝なのであまり頭が回らず、これは寝ぼけているのだ。そうだ、まだ中途半端に夢が続いているのかも。と、そんなことより朝ご飯を食べなければいけなかったので顔を洗った。水滴のついたミカンはフレッシュさを増し、「出荷前かよ」とつっこんでおいた。

テーブルにつき朝ご飯を食べているのに、お父さんもお母さんも別段リアクションは無い。やはりさっき見たのは夢だったのだ。ああ、よかった。娘の頭が突如ミカンになったのならノーリアクションでいられるわけがない。そろそろ魔法もとけるだろう。

自分の部屋に戻り、眉だけ少し描きたしてメイクしようとしても、鏡にはミカンがアップで写されているだけなのでどこに眉があるのかわからない。眉も目も鼻も口も耳も、どこにあるのかがわからない。ああもう、しつこいなと、だんだんイライラしてきていた。試しに適当に眉を描いてみるがキズもののミカンがそこに佇んでいるようにしかならなかった。

…まじ…最悪……

いつもなら後ろ髪をまとめてポニーテールにするのが私のスタイルなのに、髪さえどこにいってしまったのかわからない。ミカンのヘタ部分にお気に入りのリボンを飾ってみると、それはもう素晴らしくアホに見えた。なにをしているのだろう。ミカンに髪が生えていても気持ち悪いが、どこへいったのだ。無駄に抵抗を示すも頭部がミカンなのは変わらず、登校時間が差し迫ってきたので私は家を出た。



「おはよー」

「おはよ。どうしたの今日、ギリギリだったじゃん。珍しいね」

遅刻ギリギリに登校したので朝のホームルーム終了後ミカが話しかけてきた。

「ちょっとね…朝いろいろあって。はは」

ミカがミカンに話しかけているとは笑える……いや、そんなところをつっこんでいる場合ではない。頭がミカンになっていることよりも、遅刻ギリギリになった点を指摘してくるということは、まわりからはいつもどおりの私としか認識されていない………ということ…か?

「今日はポニーテールじゃないんだ。それはそれで可愛いね」

ふふふ、と微笑む彼女はいつみても美しい。可愛いのはお前だよ馬鹿たれ。ミカは私の親友でもあり、目の保養でもある。決して百合展開を望んでいるのではないが、ついみとれてしまいそうになる。女の子が女の子に惹かれてしまうなど気色の悪いものだと思っていたが、自分がそのような立場に置かれると「悪くはないな」と、すぐに意見を翻した。私はチョロいのだ。

「ありがと。しようと思ったんだけど、バタバタしてて」

「いいと思うな。いつもと違った雰囲気で」

両手を後ろにまわし、下唇を隠すように口を閉じて笑う彼女は天使にしか見えなかった。

そうです。いつもと違うんです。頭がミカンなんです。なんて言えるか。あれ…?言ってみたほうがいいのか?どうなんだろ。

そこで私は少し実験をしてみることにした。

「んー、でも落ち着かないんだよなあ。ミカさあ、ちょっとやってくれない?」

「えーいいよー。今日はそのままで」

「そう?」

うへへへ、と気持ち悪く笑いそうになるが寸前のところで正気を取り戻す。

「お願い!ミカにやってもらいたいなー」

手を合わせてお願いをすると、ミカは「しょうがないなあ。そこまで言うのならよかろう」と言って、私のカバンにつけてたシュシュで髪を縛ってくれた。

髪を引っ張られるような感覚はまったくなく、頭頂部にミカが手を触れたことしかわからない。ああ……絶対これヘタの部分じゃん………。ヘタにシュシュついてるだけだ……。

ポニーテール(?)にしてもらうと1限目がもう始まりそうだったので、終わりの休み時間へトイレに行った。

……高級そうなミカンかよ………

学校の鏡で確認するもやっぱりどこからどう見てもミカンであり、その上にちょこんとシュシュが居座っていた。女子高生の身体が付属したミカンという、変態と呼んでもいいのか微妙なラインである。私はだんだん怖くなってきていた。

…どうして…?…私の目にだけミカンが写っている……の?

「モモー授業はじまるよー」

トイレの鏡の前で呆然としている私にミカが声をかけてくれた。

「あ、うん。わかった、すぐ行く」

そう、私の名前はモモコなのだ。ミカンに変身するには明らかな人選ミスである。



家で湯船に浸かりながらボケーっと今日一日を振り返った。

授業に集中しては忘れ、トイレに行く度に鏡に写った自分を見ては思い起こされ、何かに弄ばれているようで気持ちが悪い。それなのに誰も私の異変には口をだすことはなかった。

柑橘系入浴剤入りのお風呂には入ったことあるが、まさか自分が柑橘系になってお風呂に入るとは………柑橘系…柑橘系……私は柑橘系ヒロイン…いや、まって、なんだそれ。わけわかんない。今、この姿でかわいいと思えるわけなんかないよ……。

頭がポカポカしてきたので湯船から出た。お風呂鏡の前に立って自分の身体を隅々まで確認する。もしかして頭以外にもおかしなところがあるんじゃないのかと気になってきたからだ。頭がミカンになったことは受け入れなければならない現実でもあるということの意識も芽生えてきているのかもしれない。

ヤバい……まじでヤバい……

他に変なところは見つけられず風呂上がりに自室へ閉じこもり考える。

きのうお風呂はいった時に……あ、いや、ちがう……寝る前にハミガキしたのが最後だ……。その時までは私は私のままだった……。

洗面所でハミガキをしている自分が鏡に写っていたのを思い出す。

それで……目が覚めたらミカンになってて……えーと…うーん……あ!そうだ!

きのうミカンを食べようと、ズブリと親指を差し込んで皮を向こうとした時失敗して、飛び散った汁が目に入っていたのだった。次第に網膜がジンジンしてきてすぐに洗面所に行き目を洗い、その後目薬もさして痛みの違和感が消えるまでしばらくを要した。

そう、そう!そうだった。ミカンの汁が目に入ったんだ、きのう。

でもそれから1時間後ハミガキをした時には普段と変わらない姿でしかなかった………はず…だ。自分の記憶さえも正しかったどうか混乱してきていた。それくらい突拍子もないことが起きて、あっという間に寝る時間になった。



「どうしたのモモ。最近元気ないよね。私でよかったら相談のるよ?」

「そ、そんなことないよー。気にしすぎだって」

「ううん。いつも見てるからわかるもん」

数日が過ぎ、しょぼくれたミカンでありモモコである私に天使は救いの手を差し伸べようとしてくれている。なんてありがたいことか。拝みたい。こんなフルーツ缶みたいな私を心配してくれるなんて。

「ここじゃ話しにくいなら電話でもなんでもいいから、何かあるなら聞くよ」

お昼休みで騒々しい教室の中に女神が降臨なされておる。

「ほんとになんでもないよ。少し視力が落ちちゃったみたいで」

「そうなの?ほんとに?」

「うん、ほんとほんと」

「何も隠してない?」

「うん、隠してないよー。やだなあ、ミカったら」

眼科には実際に行こうと思っていたのだが、なんと説明したらいいのかわからない。自分の顔がミカンに見えるんです、なんて言おうものなら精神科に連れていかれるんじゃないかと思うと行くのをためらってしまう。

いや……これはマジで精神を患っているのか……いや、う、うーん

あれからお風呂に入る度に身体のチェックは欠かさないようにしているが、今のところ変な箇所は見当たらない。もしかしたら徐々にミカンに浸食されていき、最終的に本当にただのミカンになってしまう恐れがあるかもしれないと戦々恐々しているのだ。

ジーッと、それでも私の事を見つめてくるミカ。そりゃ顔がミカンになれば誰でも落ち込むよ。

「私たちに隠し事なんてないよミカ。ごめんね、そんなに私元気なかったかな」

「すっごく」

「ふふ。ありがと。ミカはいつだって私の味方だね」

「そうだよ」

なんなんだよ、この少しふてくされた天使は。かわいすぎだろ。

「モモが元気ないと嫌なの」

「大丈夫……す…あ、いやなんでもない」

「あー!ほらまた隠したぁ!」

かわいすぎるワガママに思わず「好き」と言いそうになった。



ミカンに慣れだした頃(なんだこの表現)、私は告白された。

1つ上の剣道部の先輩なので、よく知らなかったが顔はそこそこイケメンだった。体格もよく慎重も私と20センチ以上差がついており、とても大人に見えた。最近は治療法のことばかり考えていたので思わぬ告白に、そっか……私もそういえば収穫時期だもんね……どうせ食べごろですよ……などと冷めたツッコミを心の中でしていた。無駄にミカンへのツッコミが増えていく。

ミカを校門で待っている時にサラッと告白され、私の返事を待たずにケータイを交換してしまっていた。

「ごめん、部活いかなきゃだから」と彼は学校に戻っていき、夜にまたメールで告白してきた。

「私のどこがいいと思ったんですか」

ちょっとウザいかな……と思って返信したが、毎日ミカンの顔を見続けてれば自分に自信がなくなる。スマホにはミカと一緒に撮ったプリクラが貼ってある。もちろん私はミカンのままだ。

落ち込んでいるとミカにまた怒られそうなので学校では元気に振る舞うようにしているが、内心そんなに強くもない私は半ばやけ気味にOKをした。先輩の返信には、いくつか私の好きな点が挙げられおり、そのなかのひとつに「クールな顔がかわいい」とあったからだ。

そうだよね、私のことを認識してくれている人はたくさんいるんだよね……と、ベッドの上でゴロゴロと、その画面を見続けた。自分だけが自分の顔を認識できないのだ。恋人ができる事で気が紛れるのか、それとも何か変わるのではないかと、それは甘い甘い考えを持って目をつむった。



中学2年の時に2ヶ月だけ付き合ったタイガくん。サッカー部の副キャプテンで、地毛なのに茶色がかったサラサラとした髪、はにかんだ時にできるえくぼ、クセですぐに左耳の後ろを人差し指でさすってしまうところ、当たり前のようにみんなに優しいとこ、私には彼がなんでも格好よくみえてキラキラとした存在だった。憧れていた彼が告白してきた時は、びっくりしておかしな挙動をしてないかといつも通りを装い「いいよ」と返事をしたが、手をつないで帰った夜の私はひとり部屋ではしゃいでいた。まさか3年後にミカンになっているとは思うはずもなく、毎日彼のことばかりで妄想は弾み、いくつかは実現していった。初めてのキスの味は私の白雪を溶かし、彼の足跡がたくさん残った。恋に浮かれていた私は、また雪が降り積もる痛みをしらない。降り続けるくせに、なかなか彼の足跡は消してくれないのだ。私たちはみんなに知られるのが恥ずかしくて隠れて付き合っていた。

別れも唐突に「ごめん」と向こうから言われて終わり、タイガくんが直後に新しい彼女をつれて歩いているところを見かけてしまった。どうやら私と付き合っている時から、そうだったらしい。ミカがそう教えてくれた。彼の中で天秤にかけられて、現在進行形で彼女だったというのに敗れたのだ。失恋を理解できずに苦しむ私をずっと側で支えてくれたのも、ミカだった。彼女の励ましは、傷心の私に優しすぎる。人に裏切られ、人の暖かさを知る。彼女がいただけでも私は充分に幸せものだったのだ。



何を着ていこうかとあれこれ迷った。久しぶりの初デートに、だんだんワクワクしてきながら一人ファッションショーをしていた。ミカン頭のことを忘れるほど集中できることが増えて気分は晴れやかになりそうだったが、姿見鏡の前に移動しては現実に引き戻される。頭がこんなのではトータルバランスがわからない。オレンジが強すぎて服が死んでいるのだ。

でも実際には私以外の人にはいつも通りの私の顔が見えているはずだから、自分の顔をイメージしながらデート服を選ぶというよくわからないチャレンジに四苦八苦した。さわやかな緑のワンピースが一番似合うと思ったときは、さすがに危険信号が明かりを灯した。ミカン畑かよ。

ユウゴ先輩はいくら待っても来なかった。待ち合わせ場所を指定してきたのは先輩なのに、時間を過ぎてもあらわれなかったのだ。告白からデートまでの1週間はあれこれどうでもいいことで夜遅くまで連絡を取り合い、私も乗り気になってきていたというのに出鼻をくじかれたようだ。少ししたら来るのかなと、駅前のコンビニ付近で待つのに1時間待っても連絡もない。こちらから電話をかけても繋がらないので、どうすることもできず帰ろうかと駅とは反対方面へ歩き出そうとしていた。

「モモー!おーい!」

手をふりながらこちらへ歩いてくるのはミカだった。麦わらのハットに、淡いピンクのトップス、花柄のショートパンツから伸びるおみ足。私服もかわいい彼女を拝見し、今度デートする時はは私もそうしようか、と参考にした。

「やっぱりモモだ。ねえ、どこかいくの」

「っえ。うーんと……」

どうしようか迷った。私はまたも隠れて付き合っているのだ。なぜか堂々と私たちカップルですと宣言するのに恥ずかしさを感じ、いつもコソコソしていた。

ユウゴ先輩は連絡つかないし……うーん……

「映画でも見ようかなーって適当にブラブラしてただけだよ」

本当は彼ととりあえず映画でも行こうかと約束していた。あまり私は映画に興味ないのだが初デートなので彼におまかせして、楽しめればいいかと思っていた。つまり、聞こえは悪いがどこでも良かった。もっと彼の事が知りたかっただけなのだ。

「えー!いっしょに行こ!私も観たいのあったんだあ」

ミカは私の手を引いて舵をとろうとしている。まあ、いいか、無断遅刻するほうが悪い。私はミカといっしょに映画館が併設されているカフェへ向かった。



不覚にも映画で涙してしまった。親子愛のストーリーにはめっぽう弱いのだ。

その後、ミカと映画の感想を話し合いながら、私の流す涙はオレンジジュースなのかな、と思った自分を殺したくなった。果汁何パーセントだよ。

「ねえ、他にも行ってみたかったところがあるの」

恋愛成就にご利益のある神社へ行きたいとミカが言うので、午後の日差しが眩しいなかを私たちはのんびり歩いた。私も帽子をかぶってくればよかった。

そういったところに行きたいということは誰か好きな人でもいるのかな。それか恋ができますように、と漠然とお願いでもするのかなー。どちらにしろミカと付き合える人は幸せそうだなーと考えていたが、彼女がどういった人がタイプなのかそういえば知らないなと思った。

私がコソコソと隠れて恋愛をするタイプだから話さないせいで二人のあいだで話題にのぼることがあまりなく、勝手に彼女もそうなんだろうと決めつけており特に気にしてはいなかった。だから恋愛成就のスポットに行きたいと言い出すなんて意外だった。私なら一人で、誰にも知られずに行ってそうだ。

カップルがいたり女同士で来ていたりと、神社にはけっこうな人がいた。神社というから物静かなイメージしかなかったが恋愛パワースポットともなれば、人は集まるのだなと感心し、やっぱりこんなところ一人で来るべきではないなと、すぐさまさっきの自分を否定した。ぼっちでいることに耐えられそうにない。

「これこれ、これおそろで買お」

「へーなにこれ。かわいい」

「このブレスしてるとね、お願い効果が高まるんだって」

白桃色の小さな石が連なったブレスレットを神社の売店で2つ購入して私たちはお願いをした。

購入したばかりのブレスレットを早速、右手首につけて神に祈る。

……どうか…ミカンの呪いが解けますように………あとついでにユウゴ先輩が事故とかにあってませんように……

「なにお願いしたの」

そんなこと言えるか。

「ふふふ。ミカが教えてくれるならいいよ」

「モモが先でしょー?」

「うっ。卑怯だぞ」

「はやくはやくぅ」

「い、言っちゃったら効果なくなっちゃうかもじゃん」

「そっか。じゃあお互い秘密で。成就したら報告しあうのならいいよね」

「そうだね」

成就しても報告しづらいんだけどなあ……

ミカには悪いけどもしそうなったら適当に嘘をつくしかないか。

19時頃に家に戻ったタイミングでユウゴ先輩から「ごめん。寝てた」とメッセージがきていた。いくらなんでもそれは…………。こんな遅くまで寝てたのだろうか。明日、先輩がちゃんと学校に登校できるよう起きていられるか不安である。初デートをすっぽかしてけっこう呆れつつも、先輩とうまくいきますように、とも願っておけばよかったなと後悔した。あんなところに一人で行く勇気はこれっぽっちもないけれど。



せっかくお揃いでブレスレットを買ったというのに早速忘れて登校していた。ミカがつけているのを見ては思い出し、きのうどこで外したんだっけな、と教室を移動しながら考えていた。整理整頓して保管しているわけではないから、探すのも大変そうだ。案の定、ミカに聞かれたが忘れたものはしょうがない。

なんだか幸先わるいなー。

「よっすー」どこかで顔ぐらいは見かけた覚えのある同級生が、フレンドリーに話しかけてきたのはそんな時だった。彼女は両手を制服のポケットにいれたまま私に近寄ってきた。

「モモコちゃんだっけ?君、呪われてるね」

!!!

刹那、私の瞳孔は開いてしまっただろう。元気がないのを心配されたことは、ミカを含めた友人たちから何度かあったが、呪われてるなんて言われたことはない。

自分の感情を悟られたくなかったので、すぐに冷静さを取り戻して相手をうかがう。

「君はきっと見えていたものが見えなくなった。あるいは、見えなかったものが見えるようになった。そんな類いの症状に悩まされているんじゃないのか」

「ちょっとあなたなんなの」

ミカは私の前に躍り出た。

「おっと失礼。私は3組のアンズだよ。それはないでしょミカっち」

フルーツ要素がまた増える。

「きのう、うちの神社にきてたよね。それから気になってたんだ、特にモモコちゃん、君が」


「うちの?」

「そう。あそこは我が家が代々管轄している神社なのさ」

あの時……アンズは神社にいた?巫女さんの格好をした女性は何人かいたが、特に顔を覚えているわけではないし、そもそもそんな格好を必ずしもしていたわけではないだろう。

「ビビビってきたね。晴天の霹靂。神社の娘の勘ってだけだから確証があるわけじゃないけどね。モモコちゃんのこと気になって注意して見てたんだけど、特におかしな素振りがあるわけでもないし、精神的にきてるようでもない。だから本人が自覚のない呪いなのか、あるいは自覚はあるが生活に支障をきたすレベルのものではない軽度の呪いなんじゃないのかと考えた」

アンズは私たちにかまわず講説を垂れ流しだした。

「簡単なところで言えば、本人に自覚のある場合は、特に危害を加えるわけではないかわいらしい幽霊がまとわりついてるとか。危害を加えるわけじゃないから問題ないが、他の人が見えないものが自分には見えるので煩わしくてうんざりしているという具合。逆に自覚のない場合は、自分の意思決定に反したことが起こりやすくなっている、なぜか悲劇のヒロイン的立場にたたされることが多いといった具合に、「運命」という言葉で片付けられてしまう程度の適度な出来事に翻弄されているなど、ね」

人差し指を立てて自分の推論を語るアンズは愉快そうにみえる。

「所詮、私もたいしたことないのでどれも推測の域はでることはなかったんだけどー………見ちゃったんだなあ。」

チラ、と私に視線を投げ掛ける。

「トイレでね、他にいっしょにきてたらしき子たちは、しゃべりながらも鏡を見ながらリップ塗ったり前髪をきにして整えてたりしてたんだけど、モモコちゃんは特になにをするべくもなく鏡の中を見てた。別にそのくらいのことでどうも思わなかったけど、一瞬歪んだものでも見ているような不快な目をしたんだよね」

トイレまできて人の事そんなに観察するなよ。

「その時ひらめいたのが、もしかしたら鏡に限定された条件つきの呪いなんじゃないかって。鏡を見ているときだけ、その呪いのカタチが形成されている。そんな感じ。たとえば背後霊が見えるようになるとか。だから普段は感じないから大丈夫なんだけど、鏡の前にくると嫌でも思い出してしまう。自分の身体の一部が欠損して見えてしまう、とかだったら刺激が強すぎるかな?でも慣れてしまえばいちいち驚かないしね。モモコちゃんがいつからそうなのかもわからないし」

アンズの考えはだんだん自分の悩みに迫ってくるようで、このまま何も告げずにいてもいつか当てられてしまうのではないかと思われた。いや……でも頭がミカンって……。

「どう?少しは当たってる?」

「その前にビビビってきた根拠はなに?そんな勘だけで行動するようなこと?」

「そうよ。神社の娘だからって霊感が強いとか言い出すんじゃないでしょうね」

「およよ、悲しいよ。私は少しでもモモコちゃんの助けになれればと思ったんだけどね。でも、しょうがないよね。いきなりこんな事いわれて、信用に足る関係性を築いてもない人にアドバイスされてもさ。だから、もっと混乱させてあげる♪」

いちいち芝居がかったようなアンズの動きに私たちは飲み込まれていく。

「あの神社は恋愛成就として有名だけど、そんなもの結果からの後付けなんだよ。その願掛けの成功率が数値化できるわけじゃないし、統計をだして研究しているわけでもないからどのくらいのレベルで望みが叶うのか、力の及ぶ範囲はわからない。いわゆるプラシーボ効果、思い込みの力ってのもあるんじゃないかなって思うし、何でも叶えてしまえたらそれこそとんでもないことになるよね。まさか神社に「世界征服させてくれー」って願う人なんてそうそういないでしょ。

そこまでは行かなくともさ、会社の経営についてだとか、人間関係の問題だとか、そのくらいのお願いならわんさかくるけど、それがもしお願いに到達するまでの誤差はあれど叶うとしたら、どう思う?」

「……なんの話しをしだしてるの?」

「まあまあ、聞いてよ。もしそういう願いが叶ってしまったとしたら、大抵は自分の力だと思っちゃうわけさ。自分で神に祈るようにお願いをしておきながら、いざ願いが叶うと今まで必死にやってきてよかった……これは自分が頑張ったからだって、自分の成果だと思い込んじゃう。神にお願いはするのに、本心では彼らはいつまでもリアリストなのさ。お願いの効果は多少あったとしても、結局は行動するのは自分なのだし、問題が解決すれば自分のおかげだろうと思いたい。宝くじがもし当たったとしたら、あの時あの神社でお願いしただからだ!って絶対な自信をもって信用をよせないでしょ。せいぜい少しくらい効果はあったかなってくらいで」

だんだんわけがわからなくなりつつも適当に「うん……まあ」と返事をする。

「そういう人たちはおおよそ、願掛けから卒業していくんだよ。自分の成功体験を糧に、これからは上手くいくと思ってね。実際に経験が次に繋がっていく事は大いにあるし、そういう人たちをバカにしているわけじゃない。お願いの力も測定できないし、自分の力で人生を切り開いていこうっていうのは素晴らしい事だと思うよ。ただね、うちの神社を離れていく率が高いってことだけ」

アンズはそこで一息ついた。

「じゃあどういう人たちが毎回お願いに来てくれるのっていうところで、恋に夢みている恋愛脳の人たちとなるわけさ。そういうパワースポット的なのが好きな傾向にあるっていうのもあるだろうけど、もし願掛けをして恋が叶ったとしたら全幅の信頼をよせてくる。神様にお祈りをする行動はとるのに、好きな相手からのアクションに対しては受け身な子が多いからね。だから、もし叶ったとしたら、「ああ、あの時お願いしたからだ」って自分の数少なかった積極性を肯定してしまう。ことそういうことに関しては簡単に信者が増えていって人気スポットの出来上がりってことだね。前者は自分で行動する率が高いから離れていき、後者は自分で行動する率が少ないから盲信してぬかるみにはまっていく。おかげでうちは賑わうからいいんだけどさ。持論だから異論は認めるよん」

「はあ……なるほど」

まくしたてて話してくるアンズに圧倒され気圧されそうになる。

「つまり何が言いたいかっていうとね、恋愛だろうがなんだろうが、どの程度の効果が望めるかはわからないけど、うちの神社はそこそこ効果ありますよってこと。じゃないと、人気スポットにもなりえなかったろうしね。そこで私は、私にお願いをかけたんだ。探偵になれますようにってね。さっきはただの神社の娘の勘って言っちゃったけど、それが私の根拠」

「探偵……?え?…あの浮気調査とかの?」

長々と説明してくれた割には、根拠の信用性が何も変わらないままである。

「そう、探偵。浮気調査とかは全然、乗り気じゃないけどね……。いつかバシーっ!と事件解決してやるんだ。事件を嗅ぎ付けて、証拠や怪しい人物を観察することに長けるためにさ、索敵能力を主にお願いしたんだけども、それがまだ勘が働くってレベルぐらいしか働いてないみないでね。なんとも言えないんだよね。でも、モモコちゃん見た時ビビビって久しぶりにレーダーが反応したわけ。まあ、それを勘というんだけど」

「それで?」

「うん、だからさ、思ったんだ。私程度のレーダーに引っかかるってことは、うちの神社に関することなのかもしれないって。自分で自分に何かを課しているならいいけど、誰かのお願いの対象にモモコちゃんが巻き込まれているんじゃないかと思うと動かずにはいられなくて。勘違いですむならともかく、今こうして私の話しを聞いてくれているからそうではないような気がしてきてるよ。同級生だから観察するのも苦労しなかったしね」

ところどころで確信に迫りつつあるようで無視できないようにも思えてくる。

私の悩みを打ち明けるべきなのか………。

「そんなの全部、妄想でしかないじゃない」

「仮説を証明するために動くのが探偵だよ。私は私の行動理念にのっとり動いているだけ」

「いこ、モモ」

「え、あ、うん」

悩んだままでいる私をミカは連れ出してくれた。

他の人に私の悩みを説明したところで理解が追いついてくれるだろうか。私すら追いついてないというのに。

ミカに連れられるまま教室をでて、私の心も置き去りにしているようだった。



最悪なことにブレスレットが壊れてしまった。

洗濯機の中でバラけて白桃色の小石が家族の服からポロポロとでてきたのだ。脱衣所で脱いだときに洗濯物カゴの中にうっかり入れてしまったのか……。このまま私のお願いが叶わないような気がしてきて、憂鬱になる。

ユウゴ先輩は特に何事もなく登校してきてたみたいで無事だったから、お願いがひとつ叶っているといえばそうなのだが、重要なのはもうひとつのお願いのほうだ。アンズの話を信じるなら、ある程度は効果があるらしいが、あれはある程度に含まれる範囲のお願いだろうか。神様も困るに違いない。

ユウゴ先輩とのメールや電話も日に日に減っていった。私も初デートすっぽかし事件が前提にあるので、同じように興味をなくしていく。その程度の付き合いで、私の恋愛はまた急速にしぼんでいったのだ。失恋ダメージがたいしてないだけ前回よりはマシといえるだろう。

「ふむ。それで」

私とアンズは学校帰りにファミレスへきていた。ドリンクバーで注いだジュースを飲みながら私は今までのことを話したのだ。怪しくてもすがるしかない。

「これを見てほしいの」

私はスマホをテーブルにおき、ミカといっしょに写っているプリクラを指差した。

「これが?」

「どう見える?」

「どうも。普通にプリクラ写ってるようにしか見えないよ」

やっぱりそうか……

「モモっちには、ミカンに見えるの?」

「……うん」

「なるほどね。誰かに言ったりした?」

「ううん。誰にも。だってこんなの、信用されるわけないよ」

「だろうねー。私も斜め上すぎてビックリだよ。幽霊ならまだしもミカンて。なんだそりゃ」

ははは、アンズは笑った。こっちは真剣なのだ。

「モモっちの今の話が本当だとすると、この前私が話した鏡限定の条件では無さそうだね。視界自体に何かされているのかも」

「私の目がおかしくなっているだけということ?」

「そう、だから他の人からはわからない」

「でも、私が顔を触ってもミカンなんだよ。そしたら目だけじゃないでしょ」

「うーん……目プラス手の触覚も何かされてるのか…もしくは洗脳されているとか?あ、ちょっと触ってもいい?」

「うん」

対面の席から移動し、アンズは私の隣にきた。念入りに私の顔をペタペタと触る。

人に触れられて初めて、私の目はここに、鼻はここに、髪はここに、と確認することができた。

「どう?触られてるのはわかるよね」

「うん。なんだか久しぶりに自分の顔のパーツの位置を確認できたって気がする」

「そっかー。周りから見たら女子高生の顔を好き放題触る変態なんだけどなあ。喜んでもらえてなによりだよ」

「アンズちゃんも女子高生じゃん。ありがと」

今まで隠してきたことを話せたおかげで、心が楽になっていくのがわかる。私はまだここにいるんだ。私が消えてしまったわけではないんだ。問題は何も解決していないのに、嬉しかった。

アンズが元の席に戻り、また話しだした。

「でも、いくらなんでもおかしすぎない?それ。呪いをかけるにしてもさ、もっと何かあるでしょうにね」

「んー…やっぱり呪いをかけられてるのかな」

「モモっちがミカンになりたいです!ってお願いしたんなら別だろうけど」

「ないない。そんなことないから」

私も笑いそうになった。話せば話すほど楽になっていく。

「そんなことしてきそうな人の心当たりは?」

「それも……ないなー。怖くなってきた……」

「もしそれが目的ならなんなんだろう。モモっちをミカンにして得する人物…?んんん?私も混乱してきたぞ」

「あっ!」

「お、なになに」

「私がこの呪いで困っているんなら、きっとその呪いをかけた人は私を観察したいはずだよね」

「おっと、犯人は私じゃないぞ」

「そうじゃなくて。もしかしてさ、その人にも私がミカンに見えてるんじゃない?」

「あーーーなるほど。モモっちと、その呪いをかけた人物、二人だけにそういう風に見えるってことね」

「そう!」

「でも、そう見えるからって言ってその人物をどう特定するか……自分から名乗ってくれるわけないものねえ。それならとっくに解決してるはずだし。いや、でも、ミカンにしてモモっちを観察したいってよほど変な趣味をお持ちの方なんじゃ……」

「うへえ……気持ち悪い……」

もう怖いのか気持ち悪いのかこんがらがってくる。でもアンズと話していると気が紛れて楽しくもあり、自分の呪いを他人事のように話せるようになってきた。

「もしくは……意図しない方向に呪いの効果があらわれた…か、だね」

「意図しない方向?」

「うん。お願いしたところでさ、そのお願いが叶うかどうかもわからないし、叶ったとしても一部分だけかもしれないじゃん。部分的にならお願い叶えましたよーって神様が意地悪するのさ。宝くじの件で言えば、1億あてたい!ってお願いしても実際には1万しか当たらないみたいな。当たるのは当たったけど、お願いしてた金額と違うっていうね」

「あー、呪いをかけたのは事実だけど、こんな呪いじゃなかったってこと?」

「本人が思い描いた通りのものではなかった、だからそれがこじれてミカンになってしまった。うーん、どうかな」

「すごい迷惑な呪いだね……ただでさえ迷惑なのに、呪いの内容ミスってミカンになるなんて……」

「でも大本の狙いは変わってないのかもしれないよ。モモっちの現状から、「頭部がミカンになる」っていうのにヒントが隠されているんじゃないかな」

「金額は変わったけど、宝くじは当たったように?」

「うん、そう。でないと考えようがないもんね。宝くじ当たるようにってお願いして交通事故にあたったりしてたら、わけわからなすぎて辿りつけないよ」

「んーたしかに。お願いを叶えてくれる神様がちゃんとそういう筋道を残してくれてたらの話だろうけど」

「くれてなかったらそれは神じゃなくて悪魔だね」

残っていたジュースを一息で飲み干し、アンズはおかわりしに行った。



私とアンズは思いついた事があれば連絡を取り合い、呪いについて話し合うようになった。

ミカが泣いているのを見かけたのは、夕暮れでオレンジ色に染まった教室だった。私はまたアンズと話し合いがしたくて帰ろうとしていたのだが、宿題を忘れたので取りに戻ってきたのだ。

野球部の練習の声だけが教室まで届き、そんな中ミカは一人で泣いていた。

「……ミカ…どうしたの」

目のまわりは真っ赤になり、口を真一文字に引き締めてこれ以上泣くのをこらえようとしている。

「何があったの!?どうしたの?何かされたの??ねえ!」

彼女はフルフルと顔を左右にふり、否定した。

「……なんでもないよ」

かすれるように声を絞りだし、ミカはやっと答えた。あまり多くを語ると涙が溢れてくるのだろう。だが、こんなに泣きはらした親友をこのまま放っておくわけにはいかない。

「なんでもないなんてない。こんなに泣いてるじゃん。誰かにひどいことされたの?」

「ううん……そうじゃないの」

「だったら何?なんでこんなに泣いてるの」

私は彼女の肩を掴んで問いつめた。

「…………告白…された」

「……告白?」

そうだ。彼女は私が天使と認めるほどかわいいのだ。告白なんて日常茶飯事でされているだろう。今まで彼氏がいなかったことが嘘のようだ。………私が知らないだけかもしれないが。

「………うん。……ユウゴ先輩に…」

「は?」

え。うそ。えええ。連絡こなくなったと思ったらそういうことか……

「……それで?…どうしたの?何かひどいこと言われた?」

自然消滅しかけていたとはいえ地味にショックを受けたが私は親友の話に耳を傾けようとする。

「ううん……何も」

「………本当に?」

「うん……」

「…じゃあ、どうしたっていうの」

「だって……だって、ひどいよ。モモと付き合ってるのに私に告白するなんて」

えええええ。うそ。まじか。付き合ってたのバレてたのか。

「そんなの許せない!モモのことバカにしてる!」

彼女は叫んで、それまでに溜まった涙以上に盛大に泣き出した。私のことを思って泣いてくれる親友に、私も涙しそうになる。こんなにもこの子は素直で、私のことを思っていてくれる。こんな純粋な子を傷つけるようなやつは誰もが相手だろうが許さない。

「ありがとう。ミカ」

「……わた…私は…モモ…の、ことが…好きな……だけ」

「うん…………知ってる」

私のことを想って泣いているミカが愛おしくて、不謹慎にもそんな彼女にキスをしてしまった。理性なんてふっとんでしまえ。ミカは抵抗することなく、私を受け入れた。まるで最初からそうすればよかったかのように、二人にとって自然な行為ともいえた。

「ミカ……好きだよ」

「………ずるいよ」

「……嫌だった?…」

「……うれしいに……決まってるじゃん」

「…………知ってるよ。ミカのことなら……なんでも知ってるよ」

「もー!モモー!」

彼女が抱きついてきたので私もそっと抱き返した。彼女の優しさが、温もりが、私の深くまで浸透してくるようだ。ひくひくと泣きやまない彼女を抱き、優しく彼女の美しい黒髪をなでた。

彼女が泣き止むまでこうしていようとした時、ふとした違和感が私の中によぎった。この間アンズにファミレスで顔を触られた時には、髪をひっぱったという感覚があったのだ。だが、ミカにポニーテール(?)にしてもらった時は、そんな感覚はなかった。頭にちょこんとシュシュを置かれていただけだ。

もしかして…ミカには私がミカンだということが見えていた……?

呪いをかけたのはミカだった……?

すぐさま私はそんな考えを蹴飛ばした。そんなわけない。だってこんなにも私のことを想い、泣いていてくれるじゃないか。

そんな無粋なことを考えるのはやめて、ただ、ただ彼女が落ち着くまで抱きしめていた。



ミカはモモコを抱きしめて微笑んだ。やっと願いが叶った、と。

モモが私のことで頭がいっぱいになりますように。

右腕にはめたブレスレットが夕日を浴びてオレンジに光っていた。

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