表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光と闇の輪廻  作者: まふゆん
第1章:始まった時から終わってた。それが現実。
7/16

紅い瞳に映る宵闇

一部グロい表記があります。耐性の無い方にはお勧めしません。

─13年前─

当時7歳。

黒江光希と名乗る少年はその町に居た。

或いはこの頃から【漆黒の孤狼】という名をつけられていた気がする。

3歳でこの町に来て、口にできるものは何でも口にして、生きるためにただ歩く。過酷。だが、慣れや順応の類はすぐに身につく。そして、体を蝕む。

が、彼を支えたのはプライドや自尊心ではなく

その傍を歩く少女だった。

2歳年下、つまり5歳。


少年は盗んだ服をダボッと着こなすとその少女にも盗んだ服を渡す。

4年の間に彼の人格は破局する。

全ては生きるため口調も子供らしさが無くなるほどに。

「大丈夫か、汚い服を着ていると免疫力が低下して病気にかかりやすくなる。サイズが合ってないのはいつも通りだと思うが我慢してくれ」


赤い目の少年はプラチナベージュの髪をもつ少女と生きていくつもりで行動している。

もしこの少女がいなければ

他人の関わる機会もなく

孤独に心を喰われてしまう。


かと言って吐き捨てられたガムを食べさしたりは絶対にしない。その少女により良い物を食べさせ自分はゲテモノでも構わない。


なぜそこまで身を張るか、なぜそこまでその少女に固執するか。


理由はない。ただ、守りたい。守り続けていたら 自分がまだ心を持つ人間だと自分自身に言い聞かせることができる。少なくともその責任感から光希は誇りを取り戻そうとしている。


そうして身を粉にしながら月日が経つ。

大きくなってきた光希は能力を開花させた。

『矛盾の遮断』

触れたものの質量、製造過程、工程を無視して光希がイメージしたものに変化させる能力。


そして、その能力は此方側では都合よくお金に変えることができた。

生きるために使えるものは全て使う。

大抵は建造物を建てる。という目的が多かったが中には武器を作ってくれと頼まれたりもした。


これなら都に住む事もできる。この能力さえあればあの少女とここから逃げることが

しかし、少女は首を横に振る。

「…都に行くのが怖い、此処で2人で暮らしたい、お願い」

多分、初めてのお願いだった。今までわがままなんて言われたことがない。せめて貧民街に、と思ったが"此処で"という言葉にその声は喉の奥で潰された。

それからの生活は裕福だったかもしれない。


15歳。

建てた家に水が出るように貯水と濾過を可能にしたタンクを作り、服もお金で買う。

料理は勉強した。吐き捨てられたガムなんてもう口に入れようとも思わない。


何もかもがうまくいっている。

少女は家から出ることはない。

全て光希が熟し続ける日々。


苦に思ったことは一度もない。

表ではその能力のおかげで顔も広くなった。

15歳で商人としての地位を得た。


お金にも衣食住にも困らない。

こっち側でこれほどいい暮らしをしているのはおそらく数少ない。

その分光希の体は穢れていく。

心も荒んで行く。

だが、生きる為と思えば救われる。

しかし、災禍とは無情にも人を苦しめるものだった──


魔獣。どこから現れるのかわからない。

誰かの能力だとは察しがつく。

光希と同じか、具現化能力の類。

想像した生物を作り出し周囲を襲わせる。


17歳。悲劇は起きた。

魔獣を召喚する人物の見当もつかない。

人々は魔獣をなんとか撃退しながらもバリケードを死守した。

理由は簡単都にそれが伝わると役人が来る。

そうなると悪事を働けないこっち側の人間は飢えていく。最悪自分の身を滅ぼしかねない。

理解しているが故に武器を手に取りそれに抗う。


光希はそれの中心に立たされた。

武器を作り出し、その信頼の厚さと顔の広さから

指揮を取る立場にあった。

勿論、能力を使い続けるということは精神力を消費し続けるということ。

見えない消費だけに光希の心は日々荒んで行く一方だった。


そして光希が最も恐れていた事態が起きた。


自分の家が壊され、中に何匹もの魔獣がいた。

プラチナベージュの髪をもつ少女派文字どおり

弄ばれていた。

「"俺の女"に何してやがる!」

怒りと憎しみ。殺意に殺気を振り乱し

持てる武器全てを使って一掃した。


「光希…私を殺して…」

全てが静まり返った空間で、少女はそう口にした。

「俺に、それができるわけない。」

少女の姿は見るに耐えないほど血に塗れていた。

左腕は肩から無い。右腕はあらぬ方向へ

左足は文字通りの皮一枚で膝を繋いでいる。右足は押し潰されたように四散。


例え光希が殺さずとも、胴体に穴が空いている彼女が死ぬのは明白だ。ならば光希が手を下す必要もなく。光希は彼女が事切れるその1秒まで傍に居たいと強く願う。

故に光希は彼女の最期のお願いを聞くことなどできはしないのだ。


「…俺の女…やっと言ってくれた…だから、魔獣に殺されるなんて末路は嫌!お願い殺してよっ!光希!」

今まで零さないようにとどれだけ耐えていたのだろう。

口から血を垂らしそれを吐き出すかのように声を上げた。その表情は歪みに歪んで光希はその顔を直視することができない。


「もう時間が無いの…ぅ…え。お願いだから…殺して」


光希は自分の非力さを恨んだ。

するとどうだろう、拳銃を持つ右腕が上がる。

殺して。という言葉に光希は

1発の銃声と共に心を砕いた。


「あ…ぁぁ…あああぁぁぁあ!」

咆哮。いや、悲鳴。

膝から崩れる光希の前に

額に風穴を開けた少女は事切れた。


「俺のせい…俺のせいで…」

楽しかった記憶より

辛かった記憶が連鎖する。

こんなつまらない世界だったのか。

見る景色に色はなく、白と黒の彩り無い世界を見た。

先の拳銃を自分の額に当てて引き金を引く事に

光希は何の躊躇いもなく実行した。

──が、世界はそれを許さない。


カチンッ…カチンッ…


「くそっ!」

弾切れ。無情にも最後の1発だった。


カチンッカチンッカチンッカチンッカチンッカチンッ

何度引いても弾は出ない。

そして、その死を受け入れた光希は死ねない事により"切り替わる"

魔獣の親を見つけ出し

この手で殺す。

魔獣に襲われる命を1つでも多く救う。


目標は

魔獣を根絶やしにする。

その日から光希は魔獣を殺すことだけに力を注いだ。未だ見ぬ魔獣を生み出す能力者をこの手で殺す為に──

プラチナベージュの髪を持つ少女

詳細不明──


「未だ…死ねないよ。光希…ふふ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ