生かしておいてあげるの。
滴る血液は服を伝い。そのなくなっていく体温を腕で感じていた。その絶望の先に考えて結論が出た答えは
──悪の無い世界を作る。
夢物語も良いところなのは理解している。
人がいる限り絶えない事も知っている。
他人を殺すような悪を減らして自分のように絶望を味わう人を救う。
だがしかし、問題があった。1人じゃ不可能。仲間が居る。まず、それを行うのも悪でなければならない。理由は悪を増やさない為。失うのが悪ならどちらにせよ目的には近付ける。
思考回路を張り巡らせ、その理想を、その道を歩む為の第一歩として仲間集めが必要だと察した。
取り敢えずこの家にはいられない。
その内役人が来るだろう。シナリオとしてはきっと俺が怪しまれる。…時間のロスは避けたい。
「悪いな桜。俺が守ってやれなくて…でも、やる事ができた。見守っててくれ必ずやり遂げてやる」
その亡骸を床に寝かせれば、服を着替えに自分の部屋へと移動する。勿論、手を洗ってからだ。
流石に血の付いたままでは外には出れない。
自室に戻ると先程の白い少女が居た。
「…お前を殺したいほど憎い。でもやる事ができた。だから死ぬリスクを背負うわけには行かない。お前の目的は俺を殺す事では無いんだろ?その上でここにいるという事は連行か…」
「…察しが良い。だけど…その目的は放棄する。…私は貴方に興味がある…だから、"生かしておいて上げる"の。」
上からか…力の差は歴然。当然と言えば当然だが癪に触る。
「そうかよ。仇の名前くらい聞いても良いか。」
素っ気なく返せばその白い少女の名を聞く
自分が何超えなければならない壁である。
悪を淘汰しようと至った元凶。
「…【閃光の辻】と呼ばれている。本名は、…柊 真冬。……渡辺 龍、貴方の考えている事は…面白い。勧誘、待ってるの。」
「ちょっと待て、さっき思いついた事をさらっと見抜いて勧誘待ち?そこまで話が分かってるなら今勧誘する。今すぐだ」
「…解った。…仕事が欲しい。」
なんかよくわからんが、一応仲間が増えたらしい。妹を殺した張本人が。
目的としては仕事してる間に逝ってくれれば良いか。少なくとも楽な仕事は与えないでおこう。
とは言っても仕事をどうやって手に入れるか…
「なぁ、仕事ってどうやって手に入れたら良い?」
「殺しまくって名前を売れば良い。その内仕事くれる人が出てくる。」
「そんなもんか…じゃあ、【閃光の辻】が居るって看板立てれば良いのか?」
「ん、名前なら貸す」
「そんなもんか…まぁいい。取り敢えず仲間を集めよう。この家にもいられない………」
押入れを開け、その扉を仕切り代わりにして服を着替える。
何時からだろう──この絶望に順応できるようになったのは
何時からだろう──悲しみを殺せるようになったのは
何時からだろう──大切なものを失うことに慣れてしまったのは
アレは、雨の日だったか──
気づいてしまった。自分という人間性は狂っている。
妹が死んだことに、殺されたことに
その時しか悲しめないような愚者になってしまった。
そんな思考を持ちながらもこうしてその元凶と扉一枚挟んだだけの空間に平然といられる自分が"怖い"
服を着替え終わるなり、柊真冬に振り向けば扉を閉めながら
その壊れた感情ではこいつを怒りに任せて殺そうなどとは思わない。
そして、笑顔で行こうか。という辺り
やはり何かが欠落している。
大事な、人として根本的に必要不可欠な何かが足りない──
//////////Black Spell//////////
柊真冬
身長:148cm
体重:38kg
血液型:A
性格:感情が無い。冷静、冷酷、残虐性を備え楽しい事しか出来ないようなまるで子供じみた思考回路を持つ。優しさなんて微塵もない。
能力:開花。一挙手一投足に至るまで全てにたいして能力を発揮する。例えば全力疾走する時、その走る速度が上昇。踏み込む時、その踏み込む距離が伸びる。刀を振る時、その斬撃を空間に固定して第二の刃としてその場に留める。などと言った能力を持つ。しかし彼女の場合、能力だけが全てではない…