第6幕 希望の光
・・・・・ということです。」
あの日からのことを話しきって大きく息をつく。出来るだけ詳細に話したつもりだが、2人には伝わっただろうか。話している間、美形を見ているのは辛いので視線は彷徨いまくった。完璧、挙動不審だ。怪しい印象を与えてしまっただろうかと心配になってレンさんを見る。
(うわー、難しい顔してるよ)
レンさんの眉間にしわが寄っている。フジさんも困ったような顔だ。
(やばい!!悪戯だと思われた!!)
「おい、腑に落ちないことがある」
どうしよう、と悩んでいるとレンさんが静かに尋ねてきた。
「どうして、お前は男の言葉を真に受けたんだ?」
「どうしてって、なんか不吉な気がして・・・。それに、友達の事だから心配になるのは当然じゃないですか」
「だからといって、それだけでここまで本気になるのはおかしいだろ。それに、お前は犯行が起こると確信しているような節がある。」
返す言葉が見つからない。レンさんの言うことはもっともであるがだ上手く説明できないのだ。ぐうっと口をつぐんでいると、レンさんが獲物を見つけたといわんばかりに妖しく笑う。例えるならば蛇に睨まれたカエルの心境だ。
「お前、何か隠しているだろ?」
「か、隠してません!!全部正直に話しましたよ!!」
必死になって反論すると、クックッと楽しそうに笑われた。
「その態度が全てを物語っているがな。まあ、いい。確認するが、先ほどの話で言い忘れた情報や偽っていることはないか?」
付け足す情報もなく嘘もいていないので、迷いなく頷く。それを見たレンさんも満足そうにうなずく。
「では、ここで一つ大きな矛盾を指摘しよう。」
そう言って長い指を一本立てた。
「先ほどの話の中でお前は電車を降りた時も音楽は付けたままだったといった。さてそこで、問題だ。どうしてお前は、電車のアナウンスもろくに聞こえないくらいの音量で音楽を聞いていたというのに男の声が聞こえたんだ?」
頭を鈍器で殴られたような衝撃だ。頭が真っ白で言い訳も出来ない。そんな私を見やってレンさんは続ける。
「周りが何の反応も示さなかったことから、大声で叫んでいたということはないだろう。そこから、導き出される答えはお前が嘘をついていることか」「違います!!」
レンさんのセリフを遮って叫ぶ。
「私は、嘘なんかついていません!!さっきのは作り話じゃないんです!!」
このままでは、依頼を断られて伊織を助けてあげられない。そう思ったら涙があふれてきて慌てて下を向いて誤魔化す。今は泣いている時ではない。
すると、頭をポンポンと撫でられた。また、フジさんだろうかと涙をぬぐって顔を上げると、なんとレンさんだった。
レンさんは先ほどまでの笑みを消して少し罰の悪そうな顔をしていた。
「話は最後まで聞けといっただろう。さっきは『お前が嘘をついていることか、何かを隠して可能性がある』と言いたかったんだ。そして、俺たちはお前が嘘をついているとはおもっていない。だから、依頼もうけてやる」
(えっ・・・。これって夢?信じてもらえたの?)
信じられなくて頬をつねってみる。
(い、痛い・・・)
間違いなく現実だ。依頼を受けてもらえたことが嬉しくて「ありがとうございます」とうわ言のように連呼していたら、レンさんには「うるさい」と睨まれ、フジさんには「よかったね」とほほ笑まれた。