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3幕 噂は真で予想外


家に帰っても今か今かとスマホを睨みつけたままで夜の10時50分を回ってしまった。

「来ないじゃん。やっぱり噂は噂でしかなかったのね。」

本当かどうかもわからない事を本気にしそうになっていたなんてバカだったのだ。これからどうしたらいいのだろうかと絶望に打ちのめされていた時に着信音がなった。慌ててスマホの画面を見ると新着メールが入っている。待ちに待ったアドレスからのメールであった。

(うそ!!噂は本当だったんだ)

興奮ではやる気持ちを抑えながらメールを開く。


「遅くなって申し訳ございません。ご依頼の件ですが、あなたとお会いしてからお受けするか判断させていただきます。つきましては、明日の夕方5時に添付してあります地図の場所にお越しくださいますようお願いいたします。なお、お越しいただけなかった場合は依頼を取り消させていただきます。   風姿花伝演劇部」


(どういうこと?)


今回の依頼にあたり、噂のことを調べてみたがこんなケースはなかった。依頼内容を送り、次のメールで承諾かどうかの返事があるというケースしかなかったのだ。しかも、

(「あなたとお会いして」ってことは、風姿花伝演劇部の人と会うかもしれないってことじゃない!)

もちろん、代理人という可能性のほうが高いが、こんな展開は予想していなかった。人見知りな自分にとっては、初対面の相手というだけで緊張するというのに、噂でしかかたられることのない謎の集団の関係者と会うなんて難易度が高すぎる。しかも、依頼を受けてくれるかどうかがかかっているのだ。


(き、気が重すぎる・・・。でも、頑張らなくちゃ。)


まあ、とりあえずではあるが、希望がつながった。これを逃しては、本当に打つ手がなくなってしまう。何が何でも依頼を引き受けてもらわなければならないのだ。そのためには、自分で相手を説得しなければならない。そこまで考えて、はたと気づく。

(っていうか、無理無理無理、だって上手く説得できるわけないし、まず緊張して話せないし)

ネガティブな考えをしていると伊織の笑った顔が頭をよぎる。ブンブンと頭を振って思考を遮断し、無理やりポジティブな思考に切り替えてみる。


(話術には自信がないけど一生懸命お願いすれば、熱意だけは認めてくれるはず!!・・・きっと・・・たぶん)


若干頼りない感じのポジティブになってしまったが元々根暗な自分にはこれが精いっぱいだ。しかし、こんな自分だけれど少しだけやれるような気がしてきた。我ながら単純だなと思いながらも明日に備えて眠りにつくことにした。




(ついに、この時が来た)

集中出来なかった授業も終わり、只今の時間4時55分。決戦時刻の5分前だ。

(ううー、緊張する。帰りたい帰りたい。)

 指定された場所は古びた3階建てのビルの2階であり、ビルの横には階段があるのでそれを使って直接2階へ来てくれということだった。なるほど、確かに階段はあるし、後は階段を上るだけでいい。しかし、寂れた雰囲気が帰りたさに拍車をかけ、これ以上進むことが出来ない。こうしている間にも時間はどんどん過ぎていく。このままでは約束の時間に間に合わず、依頼が取り消されてしまう。

(頑張るってきめたんでしょ。それに、今行動しなかったら絶対後悔するんだから)

大きく深呼吸をするとパンと頬を両手で力いっぱい叩く。よし、これで覚悟は決まった。あとは、自分に出来ることをするだけだ。一度、覚悟を決めてしまったらもう迷いはない。恐る恐るではあるが、一歩一歩確実に階段を上りとうとう2階のドアの前についた。ドアにはガラス窓がついていたが曇りガラスが使用されていて中の様子をうかがい知ることは出来ない。もう一度、深呼吸をして控えめにドアをノックしてみる。


「どうぞ」

涼やかで凛とした男の人の声だ。こんなに短い言葉なのに相手を従わせてしまいそうな魅力を持っている。私は、その声に誘われるようにしてドアを開けた。


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