スペルカード
買い物袋を持った妖夢が何枚かの白い札を見ながら階段を登っていく。
「スペルカードですか」
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「ただいま帰りました」
「お帰り。妖夢」
「お帰りー」
帰ってきた妖夢を迎える二人。
「お昼♪お昼♪」
「妖璃。幽々子様。昼食が終わったら少しいいですか?」
「用事はあったけどいいよー」
「勿論よ!それよりお昼♪」
「はい」
妖夢の言うことすんなりと聞く二人。そんな、二人に嬉しそうにしながら料理をしに屋敷の奥に入っていく。
「妖夢が用事を持ってくるって珍しいわね」
「真面目で周りを気にしすぎちゃうからね。妖夢姉は」
「用事にたいして嫌な感じはする?」
「しない。面白い感じがする」
「あら。じゃあ、恋人が出来たとかじゃないのね」
「さっきもいったけど妖夢姉は、真面目でお堅いから当分先だと思うよ?」
「聞こえてますよー!御飯を少なくしてほしいんですかー!」
「ごめーん!」
「あらあら。まあ、なんにしても昼食の後ね」
暫くして
「それで?用事って何?」
昼食を食べ終わった幽々子が妖夢に尋ねた。
「これについてです」
妖夢が何枚かの白い札を出す。
「んー?不思議な違和感を感じるけどただの札にしか見えない。これがどうしたの?妖夢姉」
妖夢が出した札を持って裏表を見ながら妖璃が聞く。
「人里で先日、紫様が仰っていた新しい博霊の巫女が考案したらしい札でなんでも『スペルカード』と言うものらしいです」
「「『スペルカード』?」」
主従揃って初めて聞く単語に反応する。
「はい。なんでも、新しく吸血鬼が幻想入りした時に様々な理由から妖怪が著しく弱体化していたところを瞬く間に妖怪たちを征服していった事件があったらしいです。あ、これは『吸血鬼異変』って言われてました」
「それで?」
「『吸血鬼異変』は、なんとか解決したらしいですが結構な数の妖怪が倒されてしまってこれ以上いくと幻想郷のバランスが崩れる。というわけでそれを解決するために博霊の巫女が考案したのがこの『スペルカード』と『スペルカードルール』です」
「幻想郷も物騒になったねー」
引きニート予備軍の妖璃が他人事のように言う。
「『スペルカードルール』は、幻想郷内での揉め事や紛争を解決するための手段で、人間と妖怪が対等に戦う場合や、強い妖怪同士が戦う場合に必要以上に力を出さないようにするための決闘ルールで『弾幕ごっこ』と呼ばれることもあるみたいでした」
「それで、ルールは?」
幽々子が食いつくように聞く。
「基本的に、あらかじめ技の名前と命名しておいた名前の意味を体現した技をいくつか考えておいて、それぞれの技名を契約書形式で記した契約書を任意の枚数所持しておくことになるみたいですね。
で、その契約書が『スペルカード』で、名前の通りカードが使われることが多いようです。
それで対決の際には、決闘開始前に決闘内での使用回数を提示して、技を使う際には「カード宣言」をする。
勝敗の決めては、体力が尽きるかすべての技が相手に攻略された場合は負けとなる事。
たとえ余力が残っていても提示した全枚数を攻略されたら、負けを認めなくてはならないみたいです。
技の美しさにもウェイトが置かれていて、美しさを競うという面もあるのでそれようのも作っておいた方がいいですね。
そしてこのルールにより、異変解決者は異変を起こした妖怪に破れても何度でも挑戦でき、妖怪は一度でも敗れれば負けを認め後腐れなく異変解決となるようになっているので異変を起こしやすくなったみたいです」
「紫も大喜びね」
幽々子も紫が喜ぶと嬉しそうにしている。
「幻想郷は、変化するときはとても変化するけどしないときは全然しないからねー」
妖璃が言う。
「それで、このお札がさっきいった『スペルカード』の平常に使われている形なんだそうです」
妖夢がお札を手にとって言う。
「これが、その『スペルカード』になるんだ?でも、どうやってするの?」
妖璃が持っているお札を見ながら言う。
「えっと、弾幕のイメージを頭の中に描きながら名前を言えば、勝手に記録されるらしいです」
「ふーん」
「試しにやってみますね」
妖夢がお札を1枚手に持って目を閉じる。
「『幽鬼剣「妖童餓鬼の断食」』」
キンッ!
真っ白のお札が一瞬だけ光ると札の上側に妖夢が言ったスペルカードの名前と妖夢のフルネームが書かれ真ん中に妖夢のトレードマークなのか、大太刀と小太刀のクロスの絵、バックに桜が描かれた灰色のお札になった。
「「おー」」
パチパチと見ていた二人が拍手する。
「こんな感じですね」
札が無事に『スペルカード』なったのを見ながら安心したようにしながら妖夢が言った。
「ねぇ。私も1枚作るから妖璃も1枚作りなさいな。それで、お試しと言うことで皆で『弾幕ごっこ』しましょう?」
幽々子が1枚、御札を手に取りながら言った。
「んー、久し振りに戦うから避けられるかなー」
妖璃も1枚、御札を手に取りながら言った。
「何言ってるの。妖璃は、能力を使えばそう簡単には当たらなくなるくせに」
妖璃にそう言う妖夢。
「妖夢姉。使うかどうかは、状況次第だよ。それに、能力使ったら当たったときに通常の倍は、痛いんだからね」
妖夢に言い返す妖璃。
「はいはい。それじゃあ、食後の運動としてやりましょうね。さて、どんなのにしましょうか」
「僕もどんなのにしよーかなー」
「私は、先に外で体を動かしてますね。出来たら来てください」
そう言って妖夢は、先に一人で外に向かった。
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こちら、ただ今幽々子さんがスペカを作っています。
「んー、二人一辺に相手するのよね?範囲を大きくした弾幕にしようかしら。でも、それじゃあつまらないわよね?違う弾幕を放って二人にそれぞれ違う避け方をさせようかしね」
どんな、弾幕にするのか決めたのか札を1枚持って幽々子は言った。
「『亡郷「亡我郷 -宿罪-」』」
キンッ!
真っ白なお札が一瞬輝き、開いた1つの扇子と蝶が1羽描かれ、バックに妖夢と同じ様に桜が咲いている薄桃色のお札が出来た。
「完成♪」
完成したらしいですね。
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さて、此方は妖璃さんのスペカ作りです。
「やっぱり当てることを最優先で考えるなら死角から攻撃するべきだよね?となると、後ろからかな。軽いホーミングを掛けてあえて避けさせて後ろから狙う。うん。決定」
なんだか、当たり前だけど凄いこといってますね。
「『風流「霊鳥―瑠璃懸巣―」』」
キンッ!
お札が一瞬輝き、真ん中に傾いた煙管が描かれ、バックに妖夢や幽々子と同じ様に桜が描かれた瑠璃色のお札が出来た。
「よし。行くか」
たちあがって妖璃は、外に向かった。