閻魔と半霊と天狗
「はあ、愉しかったですね。
妖璃?」
「は、はひ。
そうれふね」
艶々とした肌の映季に、着衣が乱れ、立つ所か、座ることすらままならずに倒れている妖璃が、舌足らずな相打ちをする。
啼いている途中で、下を少し噛んだのだ。
自業自得といえば、それで終わってしまうような事ではあるが、なんとも哀れなものである。
「そうですか。
なら、また今度やりましょうね」
流し目で見られた妖璃だが、頭をあげずに口だけ動かす。
「え、遠慮ひまふ」
完全に力尽きた。
そんな風貌の妖璃は、受け答えするのもやっとの事のようである。
「あー!」
「あやや、遅かったですか!」
そんな縁側に踏み込んできたのは、服の端やら何やらが切られた非常識陣営の二人。
どうやら、常識陣営は突破されてしまった様だ。
その役目は、しっかりと達成していたが。
「無事ですか!?妖璃さん!」
「妖璃、大丈夫!?」
そこへ、ボロボロな常識陣営の二人が入ってくる。
二人とも、刀を松葉杖にやっと歩いているようだが、声だけは元気だ。
「おや、どうしました?
四人とも、激しい戦闘でもしてきたのですか?」
「んー、んん、あー、うん。
大丈夫、ではないね」
そんな四人へ、遊び遊ばれた二人は返事を返す。
どうやら、舌の痛みは引いたらしく、妖璃の口調は、普通に戻っている。
それでも、まだ立てないようだが。
「あんまりです」
「残念だわ」
そんな事は聞こえてないように落ち込んでいる、非常識陣営の二人を見て、常識陣営はとりあえず被害の拡大は防いだようだと安心した。
そして、安心した結果として、今までの疲労から、妖璃と同じように縁側に倒れ込んだ。
「お疲れ、二人とも。
正直、とっても助かったよ」
何となく、非常識陣営の落ち込みかたを見て、何をしようとしていたのか気がついた妖璃は、それを止めてくれたであろう、常識陣営に感謝する。
そして、倒れた二人に近づき、その頭を撫でた。
相変わらず、男なのに溢れるのは母性のようだ。
「みょ~ん」
「ふにゅう」
「ふふふ」
目を細めて、気持ち良さそうにする二人を可笑しそうに映季が笑う。
「あはは」
さっきと違う優しげな笑みを見て、妖璃も安心したように笑った。
直ぐ近くで落ち込んでいる二人と比べて、明らかに差ができているが、そんな事を気にする者は、四人の中には居なかった。