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閻魔の休日

シリアスルートを改編しました。

同時更新です。

また、キャラ崩壊に注意して、お読みください。

「お久し振りです。

相も変わらず、綺麗な庭ですね」

「いえいえ~。

そちらのお花畑も凄く綺麗で、私は好きよ~」

「ありがとうございます」


白玉楼の縁側。

固い口調の少女が、幽々子に頭を下げる。

彼女の名前は、 四季映姫しきえいき・ヤマザナドゥ。

少し前に話した、地獄の閻魔様である。


「映季様、あのあとの小町さんは、どうですか?」

「ちゃんと働いていますか?」


お茶をもった妖夢と、饅頭を四つの皿に乗せた妖璃が、縁側を歩いて来た。

なお、妖璃の持つ皿の内の一つだけは、他の皿と違い、山のように饅頭が積み重なっている。

どう見ても、幽々子の分だ。


「ありがとうございます。二人とも。

お陰様で小町は、きちんと働いていますよ。

少しだけ、休息をあげるようにしたのが良かったのでしょうかね」

「あら、映季ちゃんも休まなきゃダメよ?

仕事をする事も大切だけど、体を壊さないようにするのも大事なんだから」

「そうですよ。

十年ほど前に一度壊した時は、小町さんがもうすごかったんですからね」

「あの時は、すごかったね。

普段とは似ても似つかないほど慌てて」


三人が、良い思い出を語るように、話す。

それを聞いている映季も、部下が自分を心配してやったことを思い出して、顔を赤くした。


「わかっていますよ、皆さん。

だから、今日はここへ来たんですから」


赤い顔を誤魔化すように、お茶を飲み干した映季のコップに、妖夢がお茶を入れる。


「ありがとうございます」

「いえ。しっかり休んで下さいね」

「そうそう。

せっかくの休日なんだから」

「お饅頭も、美味しいわよ」


赤くなった顔を見て、少しだけ笑顔を濃くした三人に構われる映季。

だが、別段嫌では無さそうで、顔は赤みを増すが、嬉しそうだ。


「そういえば、読みましたよ。

この間の文文。新聞。

妖璃の『風流「怨花ー浅木桜ー」』、綺麗でしたね」

「そう言ってもらえると嬉しいです。

でも、綺麗さで言うなら、幽々子様の『「死蝶浮月」』に、一歩及ばない位ですけどね」

「はい。間近で見ましたが、とても綺麗でしたよ」

「あら、嬉しいわね。

二人とも、私のお饅頭、一ついる?」

「「頂きます」」


妖夢と妖璃は、渡されたお饅頭を行儀良く食べていく。

二人とも、作法はまだよわい五歳の頃に、祖父に叩き込まれたので、文字通り長い間をかけて身に染み渡っている。


「綺麗に食べますね、二人とも。

何処かの誰かにも、見習ってほしいものですが」


スッ、と目線を横にずらして、大きく口を開けて食べる幽々子を見る。

その視線に気が付いても、逆に見せ付けるように一口でお饅頭を頬張る彼女は、間違いなく大物だ。


「まったく、幽々子。貴女って亡霊は、」


それを見て、映季が幽々子に説教をしようとする。

が、それを妖璃が止めた。


「映季様、説教は今は見逃してください」

「しかしですね」

「映季様が、少ない休日に寄ってくださって嬉しいんですよ。

それは、僕だって嬉しいんですけどね。

だから、といって良いかわかりませんけど、少しだけ過ちを起こしてしまったんです。

幽々子様も、お客様の前でそんなことはしないでくださいよ」

「ええー。

でも、映季ちゃんが」

「なんなら、今日の晩御飯を一品抜きますか?」

「はーい」

「なら、よかったです。

それじゃ、お客様みたいなので、僕は席をはずしますね」


二人を納めた辺りで、妖璃はゆっくり立ち上がり、玄関へと歩いていく。

それを見送った三人は、こそこそと集まり、小声で話し始めた。


「幽々子、やっぱりあの件、駄目でしょうか?」

「駄目ね。

妖璃に行かせるには危険すぎるわ」

「私も幽々子様と同感です!

妖璃を月に行かせるなんて!」


月。

それは、過去に幻想郷の賢者たる八雲 紫が、妖怪達を率いて攻め要り、敗北して土下座をした場所だ。

決して紫が弱かったわけではない。

ただ、月の先住民達が強かった。

それだけの事である。


それだけの事ではあるが、それだけで幽々子と妖夢が危険視して心配するには、充分でもある。


小声で怒鳴るという、器用なことをする妖夢の言葉に、幽々子も頷く。


「ですが、早くしないと」

「早くしないと、何ですか?」

「ふひゃ!?」


可愛らしい悲鳴と共に、映季が飛び上がる。

慌てて振り向くと、そこには文が居た。


「文、余り走らないで下さい」

「文様、足も早いんですね!」


その後ろから、新聞を持った妖璃とお土産と書かれた箱を持った椛が、歩いてくる。

内緒話は、此処までのようだ。


「それで、早くしないと何なんですか?」

「えっと、それは」


言い淀む映季に、文が詰め寄る。

だが映季としては、妖璃が居るこの場では、とても言い辛い事なので、黙秘しかできない。

結果、こうして困ってしまった。


そこに、救いの手が伸ばされた。


「そこの天狗記者。

そこまでにしないと、カメラを割るよ」


妖璃が、持っていた新聞を置きつつ、懐からカメラを取り出す。


「え!?

いつの間に?!」

「さっき走ったときに、落としてたよ」

「私も見ました」

「どうする?」

「あややや、仕方ありません。

ここまでにしましょう」


そういって、映季から離れた文に、妖璃がカメラを渡す。

その事に、あからさまに安心したような態度で、映季が息を吐いた。


「でも、可愛かったですね。

ふひゃっ、でしたっけ」


しかし、妖璃の一言で、顔が耳まで真っ赤になった。

目の端には、涙が少し浮かぶが、その顔で妖璃を睨む。

上目遣いで、可愛らしいだけだが。


「大人びてる映季様が、ふひゃっ、ですか。

ふふっ、本当に可愛いですね?」


それを受けて、少し調子に乗った妖璃が更に続ける。

どうやら、妖璃が幽々子に先程言ったことは、妖璃自身にも言えることだったようだ。

思いっきり、過ちを起こしてある。

そして、その後ろで映季の怒りを感じとり、ゆっくりと離脱していく他の四人には気が付かない。


「映季様も、見た目通りの悲鳴をあげるんですね。

良いもの聞きました」

「そう………ですか」


気付かずに失言を続ける妖璃の前で、ゆらりと映季が立ち上がる。

そして、ゆっくりにっこり笑顔を浮かべた。


「あ、」


そこで、妖璃は自分が調子に乗っていたことに気が付く。

その笑顔に、妖夢に向けられた幽々子の笑顔を思い出したからだ。

咄嗟に、逃げようとする。

が、


「おや、どこにいくんですか?」


逃げようと後ろを向いた途端に捕まった。

後ろから抱きつかれるように捕まり、そのまま押し倒される。


「くっ」

「させませんよ」

「あっ!」


縁側に押し倒された妖璃が出した『スペカ』を、映季は抜き取る。

『魂魄「魂身反転」』。

そう書かれた『スペカ』を映季が懐にしまう。


「か、返してくれませんか?」

「あとで返します。

それより、遊びましょうよ」

「それには、賛成ですけど、退いてくれませんか?」


片手を抑えられながら、体の中心に座られてしまい、立ち上がれない妖璃がもがく。

しかし、映季は笑みを濃くしただけで、退く気はない。


「さて、妖璃"で"遊びましょうか」

「そこは、"で"じゃなくて"と"が良いみゅん!?」


妖璃の耳に顔を寄せた映季が息を吹き掛けた。

そのせいで、喋っていた妖璃の口から少し艶やかな声が漏れる。


「あは、可愛いですねぇ、妖璃?」


その声に気を良くした映季が、一度放した顔を再びゆっくりと寄せる。

ご丁寧に、妖璃の顔を手で抑え、妖璃に近付いてくる自分を見せている。

なかなかに、サディストな映季様ですね。


「や、やめ」


そんなサディストな映季を見て、妖璃の目に薄く涙が浮かぶ。

だが、先程少し泣かされた映季にとっては辞める処か、よりやる気になる光景だった。


「イ、ヤ、で、す、よ。

ハムハムハム」

「みゅっ、ひゃんんん~~!!」


漏れでる自分の声を恥ずかしく感じた妖璃がなんとか自由な片手で口を塞ぐ。

既にその顔は、首まで真っ赤だ。


「プハッ、我慢すると辛いでしょう?

折角の遊びなんですから、お互いに楽しくやりましょうよ」

「無茶言わないで下さい!」

「それなら、幽々子でも呼びますか?

きっと、嬉々として貴方も楽しめるやり方を教えてくれると思いますけど」

「そ、そんな」


「じゃあ、声、我慢しないでくれますよね?」


言いながら、顔を再び耳に近付けてくる映季に、妖璃は泣きそうな顔のまま、手を口から放していき、


「みゅ、ひ、ひゃああああああああ!!」


艶やかな声が白玉楼に響き渡った。









一方その頃。


妖璃の艶やかな声が響いたときから、二つの陣営の苛烈な攻防が幕を開けた。


「止まってください!文さん!」

「あややや、私は絶対に撮るのですよ!」


「天狗、そこを退きなさい!」

「その煩悩満載の顔な限りは、絶対に通しません!」


妖璃の現状をみたい上司達と妖璃の名誉の為に見させたくない部下達。

それは、常識人と非常識人、二組の陣営による、苛烈な攻防。

そんな事が、同じ白玉楼で起こっていたのは、遊び遊ばれる二人は知らぬ、四人の当事者達だけの秘密である。

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