霧の鬼
「おおお!」(パシャパシャパシャパシャ)
文は、幽々子の弾幕を高速のフラッシュと共に写真に納めていく。
「流石は、幽々子様」
「綺麗です」
「本当にねぇ~」
蝶が舞い踊るなかで口に扇子を寄せている幽々子を見ながら他の三人の観客が声を溢す。
「「「ん?」」」
三人?
「いや~、綺麗だね~」(ゴクゴク)
いつの間にか、文と妖璃の間に角を生やして瓢箪を持った少女が居た。
「「い、伊吹様!?」」
「あれ?萃香ちゃん?」
「久し振り~」
少女が瓢箪を掲げた。
その、少女を見て天狗二人は頭を垂れ、妖璃は頭に疑問符を浮かべる。
「どうしたの?」
「いや~、天狗嫌いな冥界の白玉楼に天狗が二人も入ってくのを見てね?
何かあったのかな~、と思ってきたら滅茶苦茶綺麗な弾幕を見てね。
挨拶する前に、思わず肴に一杯やってたんだよ」
参ったとばかりに頭をポリポリと掻きながら笑う少女。
「まあ、綺麗なのは仕方ないけど挨拶くらいしてよ」
「まあまあ、良いじゃないか」
「ハァ」
少女の態度に溜め息を吐く妖璃。
「んで?天狗が白玉楼に居るなんて何があったのさ」
「何かって言う程に何かあった訳じゃないけど」
「妖璃には聞いてないよ。
言葉巧みに踊らされて流されるからね」
「人聞きが悪いね~。嘘はついてないじゃん」
「否定しきれてないよ」
「する気がないからね」
「なんだと?」
「なんでも?」
少女は、笑いながら戯れるように妖璃と話す。
妖璃も、然程嫌いでは無いようで楽しそうにしている。
そして、それを見ている天狗二人は口を開けて呆けていた。
「あー、楽しかった」
「(キュ~)」
そこに、目を回した妖夢と彼女を肩に乗せている幽々子が戻ってきた。
「あら、鬼がいる」
「おや、幽霊がいる」
「失礼ね。亡霊よ?」
「あ、そうだったね」
「(キュ~)」
「とりあえず、妖夢姉を預かるよ」
「ありがと」
とても、自然な流れで少女が居ることを認可した幽々子から妖璃が妖夢を預かる。
妖璃は、預かった気絶している妖夢の頭を膝にのせ撫で始めた。
その様子から溢れるのは、純粋な家族愛である。
………どちらかと言うと、母性に近いが。
妖璃の膝枕の上で丸くなる妖夢は、とても子供っぽい上に、妖璃は妖夢に似て中性的な顔立ちなので更にそう見える。
「へー、そんな事があったのかい」
「ええ。あの時の妖璃は格好良かったわ~」
その間に、天狗二人との経緯を少女に幽々子が簡単に話す。
「いやー、見たかったね。
白玉楼は、妖璃の感知が隅々まで届いてるから、覗き見とかできないんだよね」
「ふふふ」
「あ、写真あるので見ますか?」
そこで、呆けていた文が復活した。
もう片方は、まだだが。
「お、本当かい?」
「あやや。
鬼に嘘をつくほど死にたがりじゃないですよ」
「そうかい。どれどれ」
「私も見たいわ」
どうぞ~、とばかりに出した妖璃の写真を縁側に並べられる。
それを、幽々子と少女が二人で上から覗き見る。
じっくりと妖璃の写真を見ている二人を見ながら、妖璃は複雑な顔をする。
「恥ずかしいから、やめてほしいんだけど」
「まあまあ、いいじゃない。
あ、これなんか良くないかしら?」
「そうだよ。減るもんじゃないしね。
それより、此方の方が写りがいいよ」
「あややややや。
二人とも中々のセンスですが、記者の私から見て、一番の写真は、これですよ!」
「「た、確かに!」」
「この妖怪達!」
妖璃が、写真を奪おうと動こうとしたとき、膝から妖夢の頭が落ちそうになり、慌てて座り直す。
「むう。妖夢姉がいて動けない。
………仕方ない。
あんまり声だにしたりしないでよ?」
「もちろんよ」
「わかったよ」
「はい」
「全然信用できない」
ハァ~、と笑顔で言う三人に妖璃は先程よりも深い溜め息を吐いた。
「(キュ~)」
「(寝ている妖夢さん可愛い)」
一方で、やっとの事で復活した椛は、膝枕された妖夢を見ながら、後ろの上司達を視界から外して、呑気にもそう考えていた。
伊吹 萃香
種族 鬼
能力 密と疎を操る程度の能力
鬼の四天王の一角
酒呑童子
アル中
小さくも大きいモノ
一人百鬼夜行
霧のようになって幻想郷の彼方此方を覗き見したり、自身の大きさを自由に変えたり、と順応性の高い能力を持っている
また、鬼としての力は言うまでもなく高い
しかし、年がら年中酔っ払っている上に、酔いが醒めると鬱になる面倒な鬼でもある