弾幕ごっこ.3
先日と同じ様に白玉楼に二つの影が浮かび上がる。
「さあ、ネタのために!
頑張りますよォォォオオオ!!!」
「その記者魂には、感服します。
でも、私を安く見るのは止めてください!」
只し、先日とは打って変わって影達は殺る気になってるが。
「貴女の上司は、欲望に忠実ねぇ」
「恥ずかしいかぎりです」
「彼女は、自分に正直なだけだと僕は、思うけどね」
そして、縁側から見守る三人は翼を広げる影を話題にしている。
そのそばから、ゆっくりと妖璃の半霊が離れて行く。
そして、上空の文と妖夢の側に半霊がたどり着いた。
「『魂魄「魂身反転』」
一瞬で、半霊と妖璃の位置が逆転し文と妖夢の側に妖璃が現れる。
「それじゃあ、始めるよ?準備は良い?」
「ええ」「はい」
「スペカは、三枚!
被弾したら負け!
開始!」
妖璃がパン!と手を叩くと同時に二人は、動いた。
文は、翼を後ろから前に移動させ一気に背後に移動した。
妖夢は、抜刀術のように一刀で幽霊十匹分の殺傷力を持つ"楼観剣"を横に振り抜いた。
「『魂魄「魂身反転」』」
横に振り抜いた楼観剣が当たる直前で再びスペカを使い妖璃は、縁側に戻った。
「新しいスペカ?」
「はい。効果は見ての通りです」
「緊急回避用のスペカですか」
「それにも使えるけど近接戦闘で使えば凄い便利じゃない?」
縁側で三人が妖璃の新しいスペカについて話しているのを尻目に文と妖夢は、高速で戦闘を行っていた。
「幻想郷の最速に速度で挑む気ですか?」
「そんなわけ、ありませんよ!
『畜趣剣「無為無策の冥罰」』!」
妖夢が一枚目のスペカを使った。
すると、球体の弾幕が妖夢の側から生まれる。
「ハッ!」
そちらに気が逸れた文に妖夢が軌跡を残して斬激を振るうがギリギリで避けられる。
そして、妖夢の背後に文が現れる。
「あややや!?」
しかし、文は攻撃する前に離脱した。
妖夢の斬激の軌跡が赤い弾幕に変わり向かってきたのだ。
「「「お~」」」
観客達から声が上がった。
「やりますね~。
でも、私を捕らえるには遅いですよ!」
大きい弾幕と赤い弾幕の間をぬって文は、攻撃範囲から抜けていく。
しかし、抜けた先には
「楼観剣に斬れぬものなどあんまり無い!」
妖夢が待ち受けていた。
「!?」
文は、危うく切られるのを回避した。
「あ、危ないですね~」
「遅くても逃げ道を限定させればいいんですよ!」
「そうですか。では、次はこちらの番ですね。
『岐符「サルタクロス」』!」
バッと小さめの白い弾幕が高速で放たれる。
しかし、放たれた弾幕は、妖夢の左右に外れていくだけで戻ってきたり曲がるような感じもしない。
「何のつもりか知りませんが、斬ればいいだけですね」
妖夢は、弾幕に疑問を持ちながらも真っ直ぐに文に突っ込んでいく。
その頃、縁側では三人が
「妖夢さんって結構危ない人ですね」
「大抵は、斬れば解決すると思ってたりするかもね?」
「ふふふ」
なんていってたりもする。
そして、文と妖夢は空中で分散して返ってくる白い弾幕の中で戦っていた。
「あややや。
短気は、損気ですよ。
もうちょっと待ってもいいんじゃないんですか?」
「今の時点で損気です!
というか、幽々子様が主の時点で損気です!」
・・・・・・。
妖夢が戦いに夢中になって心の言葉を洩らした。
「へえ?」
「「「!?(ゾワゾワゾワ!)」」」
幽々子から発せられた何かに妖夢以外の三人の背筋が冷える。
同時に文の『岐符「サルタクロス」』が消えた。
しかし、そんな事は気にかけずに、文は一気にその場から離脱した。
「!?
逃げる「よーうーむー?」な?」
ガシリと妖夢の頭を幽々子が掴む。
「ゆ、幽々子様?」
「文ちゃん」
いきなり現れた主に庭師は、困惑した。
そんな、護衛を無視して当主は、記者に話し掛ける。
「勝負の途中で悪いけど、この勝負は無かったことにさせてもらえる?」
「ハ、ハイ!」
「ありがとう。
お礼に綺麗なスペカ、見せてあげるわ。実戦で」
「あ、ありがとうございます」
文と話をしているが幽々子の目は、妖夢から一度も外れていない。
「妖夢姉は、言い過ぎたんだよ」
「妖璃?」
ガッシリと頭を捕まれている妖夢の側にいつの間にか妖璃が居た。
「言い過ぎたって?」
「『幽々子様が主の時点で損気です!』」
「あ、」
徐々に妖夢の顔が白くなる。
妖璃は、そんな姉に顔を寄せて言う。
「とりあえず、頑張ってね」
『魂魄「魂身反転」』と言って妖璃は、消えた。
「さて、妖夢」
「は、はい」
「ちょっと調子に乗ってる貴女に罰を与えます。
丁重に受け取りなさい」
「は、はいい」
「よろしい。じゃあ、受け取りなさい。
『「死蝶浮月」』」
幻想的な弾幕が幽々子を中心に放たれた。
小さな月と大きな蝶が飛び廻り、レーザーが貫いて行く。
それらは、とても綺麗ながらも確実に妖夢の体を呑み込んだ。